舟編みの人~第12話・気の置けない関係~
朝倉
「気の置けない間柄と言うと…
どんな風な関係だと思うかい?」
伊島
「他人が入り込む隙間もない程の親しい間柄の事ですよね…」
朝倉
「その通りだ。」
「マジで間違うか、
気を遣ってボケるのかを期待したんだけど…」
伊島
「クイズ大会じゃないんですからボケませんよ…」
「まあ…
気の置けないって言葉は…
自分達で言うような言葉ではないですよね…」
「意味合いとしては…
周囲の嫉妬…
やっかみなんかも込めて周りが言うような言葉ですね。」
朝倉
「この…
やっかみと言う言葉…
実は…
東日本由来の方言らしい…」
「どこが起源なのかを調べたいが…
今や全国で普通に遣われているらしいから…
この言葉の起源を辿るのは骨折りだろうな…」
「語源としては…
矢を嚙むから来たらしいから…
平将門の乱の頃の文献に遡るのが一番良さそうなんだけどな…」
伊島
「もしかしたら…
起源が…
もうちょっと早い可能性もありますが…」
「その見当付け…
中々良いとこ突いていると思いますよ…」
朝倉
「少し話を戻すぞ…
気の置けないの対義語として遣われる
気が置けると言うのは…
自然に距離を置いて話してしまう…
遠慮してしまう相手に遣うような言葉だな…」
伊島
「こうしてみると…
日本語って何かに例えたりする事で…
表現をぼかしたりする事って多いですよね…」
朝倉
「確かに縁起が悪い言葉とか…
相手を傷つけかねない言葉とかを忌み言葉と言うのだけど…
そうした表現を避けるのが日本人の国民性なのかもしれない…」
伊島
「政治の世界以外だと…
そうした風習は廃れ始めている感じします。」
朝倉
「政治の世界だと相手を慮ってというよりは…
自分が傷つきたくないからこそ…
そうした表現を避ける傾向にはあるな…」
伊島
「確かに今の国会の質疑応答で…
相手を糾弾する時ほど直接的な表現になってますからね…」
朝倉
「そう言う意味では…
的を射た表現を今野党側がしているって事だな…」
伊島
「上手く言い換えると…
当を得た感じを質問側が実感している訳ですね…」
朝倉
「対して…
与党側は的を得ない回答に終始しているもんなあ…」
伊島
「敢えてボケてますよね…
本当は…
意を得ないとかが適切な表現な気がするので…
まあ…
的を得ないと言いたくなる気持ち分かりますけど…」
「今まで私達が臍を嚙む様な思いをして来たのだから…」
「私腹を肥やしていた無自覚な汚職議員が…
臍を嚙む様な状態にしないと溜飲は下がりませんよ…」
朝倉
「職場だろうが…
付き合いの席だろうが…
打ち解けた仲間内の飲み会だろうが…
こうした政治の話題が気兼ねなく出来なかった…
今までが異常な気がするんだよな…」
伊島
「本当にそうですね…
政治って…
くだらない事から大切な事まで…
普段の会話の様に気兼ねなく話せるのが…
本来あってほしい姿ですよね…」
朝倉
「それこそ…
政治家と一般人が気の置けない関係になるのが…
一番望ましいんだけどなあ…」
伊島
「本当に悪い意味で…
周りが気が置ける状況にしてしまっていますからね…
今の政情は…」