舟編みの人~第2話・そこに愛はあるのか~
朝倉
「最近…
テレビを賑わすニュース知っているか。」
伊島
「気にするなと言う方が無理ですね。」
「私達編集者のあり方・立ち振る舞い方が問われている訳ですものね。」
朝倉
「そうだな。」
「原作者にとって良い通訳者・理解者にちゃんとなれているのかを問われている訳だからな。」
伊島
「私達の世界では、
本歌取りは普通に行われていますが、
それが許されるのも相手を愛していたり、
尊敬しているから成り立つ関係で…」
「そうしたものがない中でやり取りすれば、
この分野の文芸は荒れ野原になってしまいます。」
朝倉
「ちょっと古臭い気もするが…
そこに愛はあるのかいと言いたくなる。」
伊島
「少し前までやってましたよ…
大地真央さんのCMで…」
朝倉
「お前の世代はどうしてもそっちになるな。」
「俺の場合は、
内野聖陽さんが出ていた
臨場とか
陣内孝則の
愛し合ってるかい!とかで…
出た方で覚えているな…」
「それに…
大地真央さんの台詞は…
そこに愛はあるんか…
やけどな…」
伊島
「今日も通常運行ですね。」
朝倉
「…」
「俺は今の世の中の成り行きに…
きな臭いものを感じているんだよ…」
「俺らが今まで馬鹿騒ぎしているうちに…
大切なものを置き去りにしてきた気がしてな…」
「その置き忘れてしまったものを…
今からでも引き返して
取り戻せるものだけでも
取り戻さなきゃいけないんだろうな…」