舟編みの人~第26話・いい歳をして~
佐藤
「いい歳をして…
と言われる様な年齢になる前に始末を付けられたのは良かったな…」
朝倉
「早速…冷やかしにでも来たか…」
佐藤
「まだまだ冷やかすには早いな…寧ろ…焚き付けに来たんだよ…」
朝倉
「からかいにきたという意味では変わらないだろう?」
佐藤
「やっぱりバレるもんなんだな…」
朝倉
「てか…隠そうともしてないだろ…」
佐藤
「その言葉…そっくりそのままお返しするよ…」
朝倉
「こういうのは変に取り繕ったってバレるもんなんだよ…
それに恥じる事でもないのに…
びくびくするのが馬鹿らしい…」
佐藤
「健全交際な上に慎重すぎるくらいだったからな…」
朝倉
「一時とは言え上司と部下の関係だったんだ…
不用意な行動を取る訳にはいかないだろう…
上司側から言えないもんなんだよ普通は…」
佐藤
「よっぽど部下から好き好きアピールとかを受けていないと告白自体が…
今のご時世…
パワハラとか言われかねないからな…」
朝倉
「年を取る毎に…
告白の為のハードルが高くなりがちだよな…
正攻法で行けなくなっている自分自身を笑いたくもなるよ…」
佐藤
「本当に恥ずかしいのは…
年齢のせいじゃなくて…
その行動自体だったりするもんだよな…」
朝倉
「昔に比べると…
いい歳をしてって言葉自体が死語になって来ているのを感じるよ…」
佐藤
「確かに年を取っても魅力的な人は魅力的だもんな…
何というか熟成された深みも悪くないと改めて思うよ…」
朝倉
「久しぶりに…いい歳をしてって言葉をお前にかけたくなったよ…」
佐藤
「あのな…そのセリフ…こっちが言いたいくらいなんだけどな…」
朝倉
「にしても…我ながら心のどこかで焦っていたんだろうな…」
佐藤
「結婚式と二次会は小さいながらも必ずやれよ…」
朝倉
「やったとしても…おまえは呼ばないつもりだ…」
佐藤
「ちいと冷やかしただけで消えそうなもんに水を差すのは…
それこそ無粋だろうが…
そこまで温度感を間違えやしないよ…」
朝倉
「職場でもお手柔らかにお願いしたいもんだな…ホントに…」