お気に入りの屋上で… 第3話
彼女の提案は取り敢えず、
却下する。
野次馬と彼女にとってのメリットはあるのだろうが、
私にとっては…
ちょっとしたデメリットだ。
別に…
仲を悪く見せる必要もないのだが、
同時に仲を良く見せる必要もない。
今ある状況で勝手に想像させとけば良いだけなのだ。
取り敢えず、
今日の話題が仕入れられれば良いだろうから…
尤も、
良いネタが入れば、
会話は盛り上がるのは目に浮かぶ…
考え事しているうちに…
休憩時間も残り僅か…
この時期は食材が傷むのも早い。
食べ残しはせずに早々に平らげてしまおう。
「そろそろ、昼休憩も終わる…
この時期は食材が傷むのが早いから残すなよ…」
そう言って、
腰を上げると…
変な音がした。
年は取りたくないものだ…
〈香織〉
「祐介さん、大丈夫ですか?」
〈祐介〉
「そういう時は…
先輩とか言ってくれねぇんだな。」
〈香織〉
「そんな感じじゃないですもの。」
〈祐介〉
「多分だが、
親戚とかでも、
おじさん、
おばさんとか言わないクチだろ。」
〈香織〉
「確かに言わないですね。
年寄り扱いすると距離が遠くなる気がして嫌ですし…」
〈祐介〉
「もしかしてだけど…
俺みたいな雰囲気の親戚いるだろ?
友人に話しかける様な雰囲気でもないし…
単なる同僚として話しかけてるには馴れ馴れしいしさ…」
〈香織〉
「先輩…
お見通しなんですね。」
〈祐介〉
「俺んとこにも、
そうした親戚がいて、
そういう雰囲気を醸し出してるからさ…
それでなんとなく分かるというか…」
〈香織〉
「祐介さん、
そういう事には敏感なんですね。」
〈祐介〉
「君が分かりやすい行動とってるだけだろ。
最初は無意識だったかもしれないが、
ここ数日は、
もう意識的にやってるだろ。」
〈香織〉
「気付かない振りして…
意地悪なんですね。」
〈祐介〉
「ただ、
指摘するのが面倒くさかっただけだ。
それに決めつけで行動すると、
対人関係のトラブルにもなりかねないからな。
面倒くさい時代になっちまったな。」
〈香織〉
「それって、
社会課題に対して蓋をして目を背けてるだけですよね…」
〈祐介〉
「文句を言いながら…
しれっと、
話す話題を逸らそうとしてるだろ…
…いっけね。
もう昼休憩終わっちまう。
先に戻ってるぞ!」