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舟編みの人~第29話・フレームの外側にはどんな景色が…~

朝倉
「去年といい…
 今年といい…
 なんて…
 年なんだよ…
 全く…」
佐藤
「俺が言おうとしていたセリフを奪うなよ…」
朝倉
「確かにな…
 お前が一番言いたいんだろうけど…
 そうしたら尚更…
 角が立つ…」
佐藤
「とは言え…
 ニュースになってる…
 お歴々の方々はやりすぎだよな…」
朝倉
「自分の所にもお鉢が回ってきたから、
 人身御供で差し出した感じなんだろうが、
 時間稼ぎになってるのかすら怪しい…」
佐藤
「去年と違う点で言うなら…
 事実そのものは認めている所かな…」
朝倉
「加害者側からの贖罪の意識なんだろうね…」
佐藤
「謝ったら終いだなんて…
 被害者にしてみれば…
 手前勝手も良い所だ…
 寧ろ…
 謝ってからが始まりなんだって事を見落としてやがる…」
朝倉
「それでも…
 去年に比べたら…
 まだマシな方なんじゃないか…」
佐藤
「被害者側が泣き寝入りをしなくて良くなったと言う意味ではな…」
朝倉
「古き良き時代と懐かしむ奴が結構増えているが…
 そうじゃなくてさ…
 自分勝手に周りも見ずに楽しんでいただけじゃないか…」
佐藤
「時が過ぎれば過ぎるほど…
 写真のフレームに収まらなかった背景を忘れてしまう…
 自分が写し撮った景色に見惚れてしまって…
 その外側で何が起きていたかなんて思いを至らせもしない…」
朝倉
「佐藤も…
 いつになく…
 真面目だよな…」
佐藤
「人の振り見て我が振り直せみたいな所はあるかもな…
 下手やったやつの後で同じ二の舞を演じてる場合じゃないだろ…」
朝倉
「単なる対岸の火事・他山の石という訳でもないんだな…」
佐藤
「これからの最適解がどんなものかは分からないが…
 やはり相手とやり取りし続けられる様にしないと…
 そうしたもののヒントも見つからないじゃないか…」
朝倉
「今年のコンプライアンス研修は年度を跨ぐ事になるだろうな…」
佐藤
「漱石も難儀な事に手を出したもんだな…」
朝倉
「乗り掛かった舟ってのもあるが…
 かつての泉のような存在を救う手立てを作っておきたかったんだよ…」
佐藤
「俺の勘違いじゃなきゃ…
 あいつがお前に惚れた理由を…
 今まざまざと見せつけられているんだな…」
朝倉
「そうした皮肉屋の部分が減れば、
 少しは…
 この会社での居心地も良くなるんだろうに…」
佐藤
「自分が招いた結果だとは言え…
 お前が羨ましくなってな…」
朝倉
「逃した魚は…
 でかかったとでも言いたそうだな…」
佐藤
「いや…
 お前たちは…
 お似合いの二人だよ…
 それは腐れ縁の俺が保証する。」
朝倉
「褒め言葉として受け取っておくぜ…」
佐藤
「だから素直に褒めてんだっての…
 にしても…
 なんて…
 お前と同性に生まれちまったもんかねえ…」
朝倉
「お前にも良い奴が見つかると思うよ…」
佐藤
「俺は馬鹿やヤンチャがやりたいクチなんだ…
 そんなのに付き合えるのはお前くらいなもんだよ…」
朝倉
「かつての武勇伝なんて…
 もう語るんじゃないぞ…
 あの頃とは共通認識が大分違うんだからな…」
佐藤
「それはそれで…
 なんか思い出話の話題が減って寂しいな…」

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