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舟編みの人~第31話・誰そ彼~
与那嶺
「先輩…
なに黄昏てるんですか…」
伊島
「美土里さん…
ちょっとほっといてもらえるかな…」
与那嶺
「念願叶って良かったじゃありませんか…」
伊島
「まさか川柳先生の掌の上で踊らされていたなんて…」
与那嶺
「実は私も…
ちょっとだけ嚙んでます。」
伊島
「あんた達って…
油断ならないわね…」
与那嶺
「先輩…
正気に戻りましたね。」
伊島
「別に良いわよ…
漱石さんの事…
好きなのは変わらないし…」
与那嶺
「二人とも…
それなりに良い雰囲気なのに…
いつまでたってもアプローチする感じじゃなかったんですもの…」
伊島
「ここまでの種明かしを聞いていると…
あんた達…
推しカプもの好きでしょ…」
与那嶺
「バレました?」
伊島
「そうでもなけりゃ…
先生との接点が思い付かないのよ。」
与那嶺
「なんてったって、
人生3周目ですから…」
伊島
「冗談に聞こえないの…
質悪いわね。」
与那嶺
「それはともかく、
人生楽しんだもの勝ちですよ。」
伊島
「私達を弄んで楽しむんじゃありません…」
与那嶺
「そんなつもりはなかったんだけどなあ…」
伊島
「年下相手にからかわれるの…
なんか癪だわ。」
与那嶺
「放っておいても良かったんですけど…」
伊島
「まだ何か隠してる事あるの?」
与那嶺
「その…
先生から相談があって…」
伊島
「聞かなくても…
もう何となく…
想像出来るからいいわ…
言わなくても…
それに…
これ以上からかわれるの嫌だし…」
与那嶺
「多分…
それとは別に…
話しておかないといけないことがあって…」
佐藤
「済まない…
与那嶺には荷が重い話だと思う…
鬱陶しいかもしれないが…
俺から説明させてくれ…」
伊島
「どうやら本格的に黄昏ていられる状況ではありませんね…
漱石さんと結婚させた理由と関係あるのでしょう?
どうして先日まとめて説明してくれなかったのです?」
佐藤
「良くも悪くも…
こうも展開が早いなんて思いもしなかったんだよ。」
伊島
「川柳文芸誌メンバーに関する事でしょう?」
佐藤
「火中の栗を拾う様な事を…
お願いしなきゃいけないのを心苦しく思っている。」
伊島
「そして…
美土里さんも巻き込もうとしてますよね…」
与那嶺
「それは私から志願したんです。」
伊島
「そうなる様に仕向けてますよね?」
佐藤
「済まないが…
漱石と二人だけでは太刀打ちできそうにない問題なんだよ。」
伊島
「そうであれば…
尚更…
漱石さんを連れてきて話す事ではありませんか?」
佐藤
「一筋縄ではいかない連中が相手なんだ…
漱石には漱石の役回りで舞ってもらわないと困る。」
伊島
「そういうからには…
それなりの筋書きと言うか…
作戦があるのですね?」
与那嶺
「ちょっと不謹慎ですが…
楽しくなってきました…」
伊島
「美土里さんに…
先生…
あなたたちこそ…
お似合いの二人ですよ…」