舟編みの人~第22話・避けがたい話題~
佐藤川柳
「伊島君、久しぶりだな…」
伊島
「川柳先生、ご無沙汰いたしております。」
佐藤
「最近、朝倉と随分、良い感じになってるらしいな…」
伊島
「尊敬はしておりますが、それだけの事ですよ。」
佐藤
「俺が口を出す事でも無いとは思うが、
別にお互いに生理的に合わないとか嫌いとかじゃなければ、
社内恋愛とか寧ろ…
芸の肥やしだとかで社長が…
けしかけているところもあるから…
積極的にアピールすれば良いんだよ。」
伊島
「いったいぜんたい…どこから話が伝わっているんでしょうね。」
佐藤
「俺も朝倉との付き合いも長いし、
伊島もある程度ウチの部署に居たろ…
あとは…
少ないながらも社内の噂話もあるから…
想像・推論もしやすいもんだよ。
それにお前ら二人、
俺に対して結構わかりやすい態度取る上に、
この頃は仕草や仕事の打ち込み方まで似てきていると来てる。
これで何もないと思う方が不自然なんだよ。」
伊島
「そんなに分かりやすい態度とってますかね私…」
佐藤
「見る奴が見れば、
お前らほど分かりやすい奴もいないぞ。」
伊島
「付き合いが長いから分かる事だと思っておきます。」
佐藤
「周回遅れで訪れた青春でも謳歌するこった。」
伊島
「言っておきますけど…川柳のネタにはしないでくださいね。」
佐藤
「こういうのを誰か分からないようにして読み込むのが…
醍醐味なんじゃないか…
つまらん事を言うなよ。」
伊島
「それでも、良い気はしませんけどね。」
佐藤
「しょうがねぇなぁ…
詠んだとしても、
お前らの顛末を見届けるまでは公開しないよ。」
伊島
「出来れば墓場まで持って行って秘密にしてほしいんですけどね。」
佐藤
「決めた…
お前らの結婚披露宴の後の二次会のネタとして…
笑い話にしてやる。」
伊島
「ばれたくない奴に早々にばれちゃってる…」
佐藤
「お前をからかうのはこれくらいにして…
朝倉の方を冷やかしに行ってくるわ。」
伊島
「それはそれで納得いかないんですけど…」