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舟編みの人~第19話・識見と見識~

朝倉
「識見と見識…
 この言葉は実像と鏡像みたいな言葉だな…」
伊島
「誤用でもなんでもなくて、
 意味も好対照みたいな感じですよね。」
朝倉
「因みに…
 デジタル大辞泉での識見には…
 こう書いてある…」

しき‐けん【識見】
読み方:しきけん(しっけん)
物事を正しく見分ける力。また、それに基づいた優れた意見の事を指すこともある。「—のある人」

デジタル大辞泉

けんーしき【見識】
物事について鋭い判断をもち、
それに基づいて立てた、
すぐれた考え・意見。
「―がある」「―が高い」(気ぐらいが高い意にも)。
また単に、物の見方。
 「―が狭い」

Oxford Languages

朝倉
「見識にも似たような意味合いはあるのだが、
 意味についてはOxford Languagesから引用させてもらった。
 どうにも、
 デジタル大辞泉での説明が気に入らなかったからな。」
伊島
「朝倉先輩…
 見識が高いですね。」
朝倉
「泉…
 褒めてるのか貶しているのか…
 それとも…
 今知った事を早速実践してるのか…」
伊島
「先輩…
 それは言わぬが花です。」
朝倉
「泉…
 いや…
 やめておこう…
 売り言葉に買い言葉になるところだった…」
伊島
「煽って乗ってくるかと思ったのに…
 釣れないですね…
 全部先回りして言われちゃったら、
 別の事するしかないじゃないですか…」
朝倉
「申し訳ないな…
 俺が大人げなかった…
 でも…
 うまい返しをとっさに考え付くものだな…」
伊島
「先輩ともう…
 どれだけ一緒に仕事をしていると思ってるんですか。
 ある程度は先輩の性格や読み筋は判ってきてますよ。
 でも時折…
 ドキッとする事がいまだにありますけどね。」
朝倉
「こうもあっさりとカウンターを食らうようでは、
 俺もまだまだ識見が足りないのかもしれないな…」
伊島
「先輩の識見は大したものだと思いますよ。
 でも私たち後進のものも…
 ちゃんと成長しているんです…
 その勢いを馬鹿にしてはいけません。」
朝倉
「そうだな…
 何も研鑽し続けているのは私だけじゃないよな…
 相手が若くても馬鹿にせずに真摯に向き合わねばな…」
伊島
「まじめな先輩も好きですけど…
 カラオケとかで…
 はしゃいでる先輩も捨てがたいですね…」
朝倉
「伊島君…
 今日は弥に俺をからかいに来ていないか?」
伊島
「それこそ気付くの遅すぎです。」
朝倉
「気付いていても…
 なかなか言い出せるような雰囲気じゃないよ…
 ここは…」
伊島
「だから…
 いつまでも独身なんですよ…」
朝倉
「恋愛に関して言うなら俺は無見識のままで良いや…」
伊島
「これからは…
 そうした分野の事も見識を深めなきゃだめですよ…
 辞書作りでも…
 そして…
 あなたのこれからの人生のためにも…」
(良い加減…気付きなさいよ…)

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