80年前存在した町探しツアー
義母の一言から始まった
私の義母は86歳、山口県で一人暮らし中。
私の両親は60代、70代で他界。老年期には病いも重なり、連れて行きたい場所へも連れて行けず看取った無念さがあった。
以前言っていた「死ぬまでに一度、育った町に行ってみたい」という義母の言葉を私は忘れられなかった。
あまり出かける事を望まない義母に軽く行ってみる?と聞いたら快諾。
そして今回、車で小学校、中学校をめぐり、幼少期を過ごした町ならぬ「村」を探すことに。
人間の記憶の鮮度
小学校はすぐ発見、何と創設150年越え!沿革には天明5年とありました。
中学校はなぜか小学校に変わっていました。
義母曰く、SB通りをまっすぐ行くと実家は左手にあるらしく、SB通りからツアーへ出発!
意気込んでスタートするも、前に見えるは草木生い茂る怪しい細道。
映画「千と千尋」にでてくるような、「違う世界」へ誘うほそーい道…
引き返す?進む?
とりあえず進もう!
年老いた母への親孝行と、自分の幼少期の記憶が蘇るうれしさも相まって興奮していた夫だったが、雲行きがあやしくなり言葉も自然に少なくなってきた。
そもそも迷信深いわけではない私も不安が、それを察してくれたのか、一旦戻ろう!と夫。
おう!よく決断してくれた、ありがとう!!
出発点へ出戻り
SB通りに戻り再出発。
しばらくすると、義母の口からちらほら情報が出てくる。
「その先に貯水池があって、もっと進むと採石場があった」
すごい場所に住んでたんだな。
人間とは不思議なものだ。状況が揃うと閉ざされていた記憶が、納豆の糸のように粒つながりよみがえる。
しかし採石場は見当たらない。ここで夫の友達Siriに採石場を探してもらうことに。
夫:ヘイ!Siri!採石場探して!
Siri:直進です
賢い友達だ。
やはり、先程の怪しい細道に差しかかる。
嫌な予感
この日、線状降水帯が昼過ぎに近づくという予報だった。今の時刻11時。
あまり時間がない。
このまま3人で災害に巻き込まれても困る。変なニュースを想像してしまう。
「年老いた母親の育った町を探していたところ、豪雨のため土砂崩れに巻き込まれ…」
洒落にならない話しだ。
決断の時
また通りに戻る!と夫。3度目ですが…
何やら記憶が蘇ったのは夫もだったらしい。
子供のころ幾度か行った爺ちゃんの家の記憶が確信になったのか、再々出発することに。
これで最後にしよう。三人とも心の中で思っていた。
今度はまっすぐではなく、SB通りを少し右にそれた細道へ進む。
こちらはそれでも「人間様」が住んでいる、住んいでた形跡がある道だった。東京生まれ、東京育ちの私は生きた心地がした。
✘✘寺があるよ、
そうじゃ、そうじゃ、✘✘寺じゃ!義母の80年前の記憶が呼び戻された瞬間だった。
果たして本当に探すことができるのか。。。(続く)