北海道を好きになったわけ⑧
個性的な先輩は他にもいた。
副部長は有名進学校出身のマサールさん。真面目だし背が高くてテニスも上手。ただ、なんと言うか、他の人達と何かズレてるというか。あ、他の先輩達も社会一般的には悪い意味でズレてるけど、それとは違うズレを感じるタイプだった。あまり飲み会にも来ないし、話す時に目を合わさないで「オタクさ〜」と甲高い声で急に話しかけてくる。テニスも正統派には強いんだけど変化を付けられると弱かったりする。
あと、中東系と日本のハーフ、豚バラ大好きバラルさん。こんなカッコイイ人初めて見た。完全にモデル。実際、北海道に来る前は何回もスカウトされたり雑誌に載ったりしていたらしい。そんなにカッコいいのに、キティちゃんが大好きだったりする、ちょっとズレた人だった。しかもテニス部に籍はあるもののコートで見たことはほとんどない。
他にも、族系で話が重過ぎて紹介できない水内さんをはじめ一癖も二癖もある人達が多かった。
先輩達が個性的過ぎて後になってしまったけど、同期の新入部員も面白いのが揃った。
1年ではほとんど唯一の硬式テニス経験者で皆んなから“師匠”と呼ばれた谷中ちゃん。彼は本当に真面目でいいヤツで体力も技術もあったので、先輩達の相手をする事が多かった。
「谷中〜、次俺とやって〜」
「あ、したらタケの後、俺な」
「じゃあ、俺そん次でいいや」
毎日、そんな感じ。ただ谷中ちゃんは下宿に住んでいたので晩飯やお風呂の時間が決まっており
「先輩、スミマセン。すぐ戻りますんで飯とシャワー浴びて来ていいすか?」
「おお、いいけど皆んな待ってるから早くしてな」
てな具合で、毎日、シャワー浴びた後に3人の先輩の相手をして汗だくになって帰るのが日課となった。
それからサモア1号に勝るとも劣らない筋肉ムキムキサウスポーのチクリン。コイツも真面目でいいヤツ。なんだけど、ハートが弱くてなんでも筋肉に頼る癖がある。昔の車には付いていた、タバコに火を点けるためのシガーソケットが抜けづらくて、ブチブチッと力任せに引っこ抜いたためヒューズが飛びまくり、車が動かなくなったこともある。それと余りにも女性に免疫が無く、それが原因で今後いくつかの事件を起こすことになる。ちょっと大袈裟かな😆
後から跡見さんや岩田ちゃんも入部してきた。2人とも全くの初心者だったけど、跡見さんは見る見るうちに上達した。一方の岩田ちゃんは、もともと運動に向いてるとは言えない体型で、素振りばかりで楽しいのかな?と思うほど空振りばかりしていた。ま、楽しそうだからいいか。
他にはクネクネした感じの軟式経験者のカケ、バンド小僧の音尾ちゃん、中学浪人だった川路、見た目はヤンキーの心優しい木本、準部員に沢村が主要メンバーだった。
そして、もう1人。俺達1年のズレてる人、小浜。
軟式テニスで国体に出たことがあり、事あるごとに“強化指定選手だった”と自慢するようなズレ方のヤツだった。ただ、自慢するだけあって身体能力はズバ抜けていて、あっという間に硬式テニスを自分のものにした。
「小浜がいいヤツだったらなぁ」が俺達の口癖になった。
ちなみに僕のテニスの腕前だが、高校の時に一応、硬式テニス部員ではあったんだけど軽音学部と掛け持ちしてたのでどっちも中途半端になってしまった。で、察してください。
なんと、高校からちゃんと硬式テニスを経験して来たのは3人しかいないこのテニス部、実は体育会だったので、こんな「頑張れベアーズ」みたいなメンバーで1年間、北海道の大学リーグ(
5部)を転戦することになった。