北海道が好きになったわけ35
大学のリーグ戦や駒大・専修大・拓大の3校で争う3大定期戦の他、市民大会にも参戦する事もあった。
一般参加の大人達に混ざって試合することで、試合経験を積んだり試合度胸をつけたりするために大事な大会だった。
そして、僕達、貧乏学生にとってその大会に参戦する大きな大きな理由がひとつある。
それは、試合に出る日には、必ず唐揚げ弁当が支給されること。
我々お貧しい学生達にとって「唐揚げ弁当」は憧れの弁当だった。それが試合に出るだけで一食分頂けるので、普段試合に出ないヤツらもとりあえず参加した。
深川市の大会には意外なことに全道各地から強者達が参加していた。
中でも2人の30代から40代くらいの選手は各地で好成績を残しており、通り名がついていた。
「留萌の狼」と「増毛の虎」(笑)
この2人が優勝候補だった。
僕は運が悪いことに1回戦で「留萌の狼」と当たってしまった。
練習時間で打った感触だけで相当強いのが分かった。サーブ、フォア、バック、全てのショットがめちゃめちゃ重い。さすがに優勝候補の筆頭だけある。
あっという間に1セット取られてしまった。
なす術が無い、とは正にこの事。
2セット目も何もさせてもらえないまま5ゲーム取られ、あと1ゲームで敗戦が決まる。
その時、何気なく苦し紛れにスライスをかけたショットで返球したら「留萌の狼」がネットに引っ掛けた。
苦虫を噛み潰したような狼の顔を見ていて、ふと頭に浮かんだ事があった。
「そういえば、さっきもスライス打ったらミスって無かったっけ?」
試しにフォアもバックもスライスで返してみたら、面白いようにネットに引っ掛ける。
「コレだ!」と思い、それからはサーブも含めて全球嫌がらせのようにスライスしか打たなかった。
みるみるうちに点差が縮まり、狼の顔は苦虫を噛み潰したような顔から泣きそうな顔に変わってきた。
けど、知らん。
そのままスライスしか打たずに逆転勝ちした!
あれだけ上手な人がなんでこんなにスライスに弱いのか知らないけど、色んな人がこの試合を見ていたし、この先、スライスを克服しないと優勝は出来なくなるだろうな。
僕はこの後、2回戦で全く知らないオジサンにアッサリ負けた。優勝は「増毛の虎」を完膚なきまで叩きのめした村岡さんだった。
なんだったんだろう、狼とか虎とか(笑)。
まあ、いつも通り唐揚げ弁当が美味しかったのでオッケーです。