「虎に翼」の結婚描写に思い出されること
「虎に翼」で、寅子と航一は今でいうところの事実婚を選んだ。劇中で「裁判官が判決文や令状に旧姓を使うことが認められるのは、平成29年のことです」とナレーションが流れ、裁判官における旧姓使用が一般社会よりも遅い導入であったことに驚いた。私が結婚したのはそれよりもかなり前だが旧姓使用は普及していた。
このドラマを観ていると、うっすらと自分の頭に浮かびながらも消えていった考えが思い出される。
例えば事実婚。やってみたかったけれど「なぜ凡庸なあなたがそこまでする?」と自己否定で完結して選択しなかった。
どちらの姓を選ぶかについては、どっちでもいいという前提で夫とさらっと話し合い、結果夫の姓にすることにした。これについては、夫の母が「こちらの姓でいいの?」ときちんと聞いてくれたことが、私の納得感に大きく影響している。夫の父はその質問自体に素朴に驚いていたので、そうなんだよ男性は気にもとめないところなんだよ、と当時思ったのだった。
旧姓使用については、申請方法を職場で質問したら担当の男性が「ぺーぺーのあなたの名前が今後も必要なの?」というニュアンスのことを言ってきて簡単に心が折れた。また、2つの姓の使い分けも煩雑ではあったので、旧姓使用の申請はしなかった。
世帯主を誰にするかも、私でもいいけど夫にしておこう、という手続き。
結局、「慣例に従って無難な手続きをした。さまざまな選択肢はあったけれど自分の意思で選んだ。」と思って今に至る。
でも、身の回りの知人友人の既婚女性がほぼ100%夫の姓を名乗っていることに、ふとモヤモヤすることはある。(旧姓使用の人は割と多い。)
選んでいるようで選べていないというか、私の選択もまた他の人の選択を妨げてしまっているんじゃないかとか。あと、旧姓でのフルネームもけっこう良かったんだよなとか。
「虎に翼」は消えそうな埋もれそうな気持ちを、本当によく描いてくれるなあと思いながら観ている。のどかのぶちまけシーンも良かった。