#始まらずに終わった恋 | 推しだった先生
中学生の頃、好きな先生がいた。ただ「ガチ恋」という訳ではない。その先生は結婚されていたし。今で言う「推し」という表現がぴったりハマる。ここではT先生と書こうと思う。
先生は「歴史・公民」の授業を担当されていた。T先生のユーモアを交えた解説が面白くて、毎週の授業が楽しみだった。テスト勉強の際も「T先生に褒められるぞ!」というモチベが加わり、他の科目よりも断然気合が入った。
休み時間。「同担」とも言える友人と共に、職員室近くの"とある部屋"の引き戸をそっと開けて覗き込む。煙草の香りがふわりと漂う部屋の奥で、T先生がこちらに視線を向ける。そして「また君たちですか」と言いたげな穏やかな微笑みを見ては、友人とキャッキャしていた。
強く記憶に残っているのが、『敵地敵作』のエピソード。これはテストで私が書いた誤回答で、正答は「適地適作」。たしか放課後だったと思う、友人たちと共にT先生にちょっかいを出しに行った時の話。「間違えちゃいました〜」と『敵地敵作』にチェックがついた答案用紙を見せると、T先生が「わざわざ敵の地に行って、敵を作るんですからね。」なんて、ジェスチャーを交えて面白く話してくれたことが、嬉しかった。
T先生と話せるのだとしたら、話題はなんでも良かった。
卒業式の日、T先生に『ずっとファンでした』と伝えようとした気がする。でも、言えなかった。タイミングが合わなかったのか、恥ずかしくなったのか、理由は忘れてしまったけれど。
できることなら、もう一度T先生にお会いしてみたいと時折考える。連絡手段もない。目立つ生徒でもなかった真染のことも、忘れているかもしれない。ただ「今」でもnoteで書いてしまうくらいにT先生のことが「推し」だった。
山根あきらさんからいただいた、こちらの題材とT先生との思い出が重なりました。このエッセイも、きっかけをいただかなければ書かなかったと思います。
実はこちらのエッセイにも、T先生がちらと登場してました。😊
闇に包まれていた中学時代を救ってくれた友人たち、そしてT先生に、感謝を込めて。
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