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現場録音雑考「梱包、空輸、あるいはカルネ」

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 さて、海外に行かないまでも国内で空輸で機材を運ぶパターンはままあります。なので、空輸する際に気をつけなければいけないことからまとめていこうと思います。まず国内と国外で留意すべきことが変わってくるので、共通する点に言及していきます。
 ちなみに私が行ったことある所は、香港、マレーシア、台湾、ニュージーランドです。ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ大陸はいったことありません。悪しからず。

飛行機に機材を積載するにあたっての方法

これは3種類ありまして、
「持ち込み預け荷物」として私物のキャリーケースと同じように搭乗機に積載し持っていく方法。もう一つは、「機内持ち込み」で搭乗座席まで持って行く方法。最後に「カーゴ便」といって貨物専用の便に積んで搭乗機とは別便で運ぶ方法です。

「持ち込み預け荷物」

 まずは預け荷物ですが、一個あたり各航空会社の規定のサイズ、重量がありますので問い合わせたり、航空会社のHPを参照してください。
当然機材なので、オーバーサイズ、オーバーウェイトするものが出てきますが、基本的に事前に航空会社に話を通しておけばスムーズにお金で解決します。
 しかし、あまりにもオーバーするものが多く、課金がかさんでしまうのは喜ばれませんので、話し合いの際には制作サイド或いは航空会社に、梱包機材のおおよその3辺の長さ、重量、おおまかな内容物を記載した機材リスト提出し、進めると良いと思います。このあたりの話は流石に制作部をやられている方のほうが詳しいかもしれません。

 なお、預け荷物の中に大容量バッテリーは入れることができません。PCなどのバッテリー内蔵型で、取り外し不可の物品に限り規定容量以下は預ける事が可能です。録音部だと充電式ポータブルスピーカーとかそういうやつが該当します。
 Vマウントバッテリーやモバイルバッテリーなど外部バッテリーは、手荷物として機内に持ち込む必要があります。なお160whを超えるものは機内持ち込みでもダメです。お手持ちのブツを確認しましょう。
 どの航空会社でも100wh以上160wh以下のリチウムイオンバッテリーは持ち込み一人2個までです。制作部や他の部署の方の協力を仰いで必要個数を確保しましょう。税関を通れば回収して一纏めにしてしまって問題ありません。国内だと100whを下回れば個数制限はないですが、持ち込み手荷物の重さの制限があるので無限にはなりません。

ニュージーランドロケ時に機内に持ち込んだバッテリー

 以前渡航したニュージーランドの海外遠征では、入国は大丈夫でしたが、帰りの税関で充電池を数十本没収されました。内容量出力に関わらず一人が持ち込めるバッテリーの個数を超えたのが原因でした。行きは大丈夫でも帰りがダメというパターンは山ほどあるので、都度航空会社に確認するとよいです。
 預け荷物におけるパッキングの仕方ですが、基本的にぶん投げられる想定をした方が良いです。私物キャリーが傷だらけで返ってきたことがある方ならご理解いただけるかと思います。相応の防御を。申請してfragile扱いをしてもらえますが、決して信用してはいけません。そもそもfragile扱いした方がよい機材は手荷物で機内へ持ち込むのが吉です。
 預け荷物ですが、海外の空港は巨大で、ターミナル内をかなりの距離運搬する可能性が高いです。前述した大きさ、重量、サイズ、強度を気にしつつも、タイヤ付きで運びやすく、中身を出した後は重ねられるので下記のボックスがおすすめです。

 こんな感じで、箱から出せばそのまま使えるように、もともとの運用状態をあまり崩さないようにしました。こうしておけば入国してすぐ使えますし、帰国する時もスムーズなパッキングが可能です。そこそこ隙間をプチプチで埋めて、箱の中で跳ねたりしないようにしてください。今のところ運搬で壊れたことは経験しておりません。
 大規模映画撮影となると録音部だけで二、三人で渡航する場合があります。一人だと一人で運用できる機材量になり把握しやすいですが、規模が大きくなると必然的に機材量も増えます。下のようなパッキング写真に加え、内容物全てを展開し全体が視認できる写真を撮って可視化しておくと手分けして作業ができますし、トラブルが起きた時も周りの人に手伝ってもらいやすくなります。カルネ申請機材の紛失物があるとカルネに影響しますので、確実に写真付き機材リストを作っておきましょう。

箱の中のツールバッグのURLはこちら

 下記の写真ですが、これは海外渡航時のカーゴ便に載せる際の写真です。見ていただくとわかりますが、一番下が黒い台になっています。これはパレットと呼ばれ直接フォークリフトで運搬する用の台です。これに乗る大きさの物量(高さと重さにも制限あり)で空輸しました。
 録音ベース等のカートは畳めないものはそもそも持って行けませんが、inovativ cartはスーツケースサイズに畳めるので、この時は梱包しパレットにのせました。脚立と折りたたみカートも持っていきたかったので、可能な限り小さくし緩衝材を巻きつけ、その上でラップでぐるぐる巻きにしました。写真右の白いのがその状態です。

最終的に全体が荷崩れしないようにラップでグルグルに巻きます

 あくまで私が経験した範囲のお話ですが、以前沖縄に機材を持って行く際のカーゴ便は前述したものと違って、1.5tトラック程の大きさの鉄製コンテナを一台借りてそれに積む、といった方式でした。こちらだとコンパクトにする必要がなかったので、非常に楽でした。

 預け荷物と違いカーゴ便の利点は、自分達でコンテナの所まで持って行くので、投げ飛ばされたり、コンベアで削られたり、バラけて一個だけ間違えたところに行く、といった空輸あるあるが起きにくい点にあります。細かい料金の話は把握していないので、どっちが幾らかというのは分かりませんが、カーゴはとても高いそうです。作品の規模感で使える予算も変化するので、制作サイドとの連携を丁寧にしてください。

 ニュージーランド渡航時は、写真の大型のボックス、INOVATIVカート、脚立はカーゴ便で、中型のボックス、ブームケース、スタンドケースは機内預けで、メインレコーダーは持ち込み手荷物で渡航しました。
 
 なお、写真でもわかるようにボックスにはナンバリングシールを貼ってあります。カルネで税関を通過する際に、リストと機材の照合が行われる事があり「リストのこの機材を見せてください。シリアルナンバーを照合します」と言われます。Boxをナンバリングして内容物を把握しておくとスムーズに取り出せますのでオススメです。ナンバリングは紛失は意識して、一目で自分達の貨物だとわかるようにしておく意味合いもあります。
 
 あと気をつけた方が良い細かい点ですが、梱包のボックスのバックルはうっかり開いてしまわないように税関通過後はガムテープを貼っておきます。心配ならラップで巻いてください。

もっとも気になる、カルネについて

「そもそもカルネとは何か」ですが、まずはホームページのURLを載せておきます。

めちゃくちゃわかりやすく書いてあるので解説の余地は少ないですが、簡単に私なりの要約すると

「国を跨いで物品を動かすと、出る時も入る時も税金がかかるけど、撮影で一時入国するだけやし、小売じゃなくて持ち込んだ物品を全く同じ状態で持って帰るので税金は勘弁して!」

という制度です。別に撮影に関わらず、展示物やコンサートのツアー等も該当します。
 殆どはATAカルネという名称ですが、台湾とだけ特別な条約が結ばれているのでSCCカルネという名称になります。

では、カルネにはどんなことを記載していくのか書いていきます。

 添付資料がATAカルネに必要な書類になります。以前私が渡航した際は、パスポート情報を事前に制作サイドのカルネ担当の方に提出し、このカラフルな資料は、担当者が代表してまとめて記載していただきましたので、実際に私が書いたことあるのは直筆が必要な名前の欄だけです。量が少なければ全体のカルネ担当の名前を書くだけ終わらせる事もありますが、基本的に各部署でカルネは分かれるので、各部署の代表の名前を書きます。税関通過時もその都度代表者は呼ばれてチェックに立ち合います。
更にこれに加えて物品リストの提出があります。

 オンラインでの提出ができますが、私自身はやったことがないのでここでは触れません。公式HPにエクセルデータがありますのでダウンロードしていただき、指示に従って入力していきます。*注意:全て英語入力になります。

  1. 機材の種類(camera、recorder、microphone等の種類の名称)

  2. メーカーと機材の名称(SENNHEISER MKH416 など)

  3. シリアルコード(同機材でも識別する為に刻まれた個体ナンバー)

  4. 個数(何個持って行くか)

  5. 単位(わかりにくいので資料参照。多少間違えてても問題になった事ない)

  6. 重量(個体の重さ)

  7. 単価(定価)

  8. 原産国(作られた国。ローマ字2文字表記のコード。資料参照)

こんな感じ

こちらはカルネリストではなくカルネっぽい機材表

 割と面倒なのが、型番のわからない機材、値段が調べても出てきにくい機材、原産国が出てこない機材です。
 シリアルは無い機材の方が多いので大体S/N nonという表記を使います。定価ですが、出てこなければ買った時の値段を表記しておきましょう。原産国ですが保証書でも取っていない限りわからない事が多いです。例えば同じMKH416で作られた国が違う可能性があり、外見では判別不可能です。メーカーが在籍している国のコードを書いておくのが適当です。

そうです。お気付きの通りすこぶる面倒です

 なので、高額の機材以外はカルネ申請しないのも一つの手ですが、カルネ機材とそうでない機材を同じボックスに入れるのはやめといた方が良いので、やはり複雑化します。あと消耗品や形状が変化してしまうものは申請できません。要は持って帰る時に質量が変わるものは約束と違うということになります。
 写真のリストはカルネ申請機材をボックスごとに仕分けたものです。実際の提出するカルネは区切りはなく、連続した表になります。
 ボックスナンバーのくだりで前述した通り、実際に梱包する箱ごとのリストを作っておかないと、税関で手間取ることになりますし、帰国時の梱包に非常に時間がかかります。

おすすめグッズ紹介

完全にハードケースにすると取り回しが悪いので、セミハードにして中に梱包材をいれました。5mのブームに対応してます。

マイクスタンド2本、Cスタンド一本とパラソルを持っていきましたのでこれくらいのサイズがちょうど良かったです。

梱包といえばこれです。長ものをまとめるのもそうですが、脚立や折りたたみカート、inovativ cartを保護するのに使いました。

現地に着いてからの運用も考えて、全てそのまま使えるようなイメージでケースやバッグは準備していくとよいです。

以上が空輸、海外渡航で必要な事、私が気を付けた事です。お気に召したら恒例のお小遣いをいただければと思います。よろしくお願いします。

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