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第二章に突入したキャディで、フィールドセールスをやるということ【事業編】

 キャディでフィールドセールスを1年半やった後、セールスの採用を担当することになりました。セールスとしてど真ん中でやってきた経験と、採用担当として他社セールス職と相対化してきた経験を掛け合わせて、キャディのセールスとしての魅力を整理したいと思います。

【事業編】【仕事編】の2本立てです。
こちらは【事業編】です。


キャディがやろうとしていること

 そもそも何かモノを作る場合、図面だけがあってもきちんとモノは作れません

 製造業に馴染みがないと「?」となると思いますが、例えば、みなさんの手元にあるケータイを作ることを考えてみます。分解すると背面の板や液晶画面、ネジなど1,000個くらいのパーツになります。それらを集めてきて組立てて作るわけですが、全てのパーツをケータイ会社が自社で制作できるわけではありません。ネジはネジ屋さんから買ってきたり、背面の板はそれを加工している会社に依頼して作ってもらいます。ケータイは毎年新しい機種が出ますが、例えば去年までは背面がステンレスだったのに今年は強化ガラスになるなんてことはよくありますよね。そうなるともう大変です。なぜなら、今までお願いしていた加工会社はステンレスの加工機械は持っているけど、強化ガラスの機械は持っていないからです。しかし世界中に数多ある加工会社の中でどこがその機械を持っているのかそう簡単にはわかりません。(ネットで検索しても、どこも「できます!」としか書いてない。)また仮に分かったとしても、その加工会社に他から多数の依頼が集中していれば納期が想定の1か月後になるかも知れませんし、ステンレスの時の倍の値段になるかも知れません。

また、パーツが揃っていざ作ろうと思っても、ステンレスの時と同じ手順で組み立てると強化ガラスに傷がついてしまうなんてことにもなりかねません。図面は単に、正面・上面・側面から見た図が描かれているだけですが、実は図面には書かれていない加工上の注意点などが多数あったりする訳です。

 これらを最適化しようにも、「加工会社の選定方法」や「加工上の注意点」などは構造化されたデータとしては存在しません。ともするとベテラン社員の過去の知見として頭の中にしか残っておらず、各現場で “よしなに対応している” のが製造業の実態です。

 しかし、こうした非構造化データがもし構造化され、自由に引き出せたらどうでしょう。例えば元々の図面では「背面の強化ガラスの厚みは3mm」と書かれていたとして、3mmを加工できる加工会社は少ないけど、2mmだったらその数が格段に増えるということがあるわけです。そうなると、納期が縮まり、値段も抑えることができるかも知れません。つまり設計段階で情報を得ることで、その後工程(=サプライチェーンそのもの)が最適化されることになります。こうした情報の流通を生み出す基盤こそが、製造業AIデータプラットフォームだと考えます。

 このAIデータプラットフォームによる効果は、単に現場における業務効率化や生産性向上といったことに留まりません。もっと様々なパラメーターを考慮した経営判断に用いることも可能になります。
 例えば、上記のように「安く買う」ことはもちろん重要ですが、昨今のパンデミックや、ロシア・中国など地政学の問題で、「安く買う」だけでなく「安定的に調達する」ことの難易度が格段に上昇しています。安いからという理由で特定の加工会社からモノを買い続けていると、突然それが途絶え、結果、自社製品が作れなくなるリスクを常にはらんでいるからです。加えて、輸送費なども含めてCO2排出量をどう抑えるかというカーボンニュートラルへの対応(=Environment)や、途上国などで不当な待遇で労働者を働かせてはならないといった人権問題への対応(=Social)、品質不正への取り組み(=Government)といった「ESGの観点」も加味しなければなりません。
 AIデータプラットフォームがあることによって、「国内の加工会社からモノを調達するとコストは下がるがCO2排出量は上がってしまうので、多少コストはかかるがインドの加工会社に依頼しよう」という経営判断ができるようになるわけです。

 こうしたグローバルで形成されるサプライチェーンをいかに最適化するかが私たちの事業のスコープになります。当然ながら、日本のみならずグローバルが対象ですし、実際にUSやASEANでも多数の事例が生まれてきています。(以下動画は、USのHilltop社による導入事例)

また製造業は、国内180兆円の規模があります。そして過去約100年にわたって大きなイノベーションが起きてこなかったレガシーな業界です。ここが変わることでの社会全体へのインパクトは計り知れません。加えて、かつて “Japan as NO1” と言われた日本は、この製造業で強みを有しています。言うなれば、非構造化データの宝庫なわけです。これらの情報を構造化してプラットフォーム化できれば、日本の強みを持ってグローバルで勝負ができるはずです。


Verticalに掘るからこその勝ち筋

 採用をやっていると、「世界で勝負したい、広く社会に影響力をもたらしたい」という理由から Horizontal SaaS を選択される方に多く出会います。もちろんそれも一つの選択だと思いますが、違った見方もあると考えます。

 というのも、昨今、生成AIが非常に速いスピードで進化しています。こうなると、もはや技術的にプロダクトを差別化することは難しくなっていくでしょう。例えば、手書きの文字認識の精度が高いプロダクトがあったとして、その優位性を保ち続けるのは難しいはずです。
 ではプロダクトの賢さでは勝負が決まらないとなった場合、何で勝負するか。代表 加藤もnoteで書いていますが、勝負の分かれ目はいかに産業適応できるかどうかだと思います。仮に手書き文字を正しく認識できたとして、それによって「穴位置は曲げから10mm」という正確なデータを得ることはできます。が、それだけです。サプライチェーンを最適化するには、「穴位置をもうあと2mmずらせればリスク低減に繋がる」という示唆が加わってはじめて意味のあるデータになるわけです。ところが先に書いた通り、製造業のデータは得てして構造化されておらず、多くは門外不出で各社に留まっています。書庫があって膨大な図面が紙で保管されれているなんてこともざらです。つまり上記のような示唆を得るには、表に出てきていない膨大な非構造化データを掛け合わせなくてはなりません。
 雑な表現ですが、生成AIがインターネット上にあるあらゆるデータを解析して正解に近しい情報を探してくるものだとすれば、そもそもインターネット上にない情報は取得しようがありません。たとえGoogleやMicrosoftであってもです。ここにVerticalに掘ることの意味があります。しかもキャディは単にソフトウェアとしてではなく、創業以来リアルなモノづくりをやってきました。そして様々なことを経験してきました。Horizontal的なアプローチでは到達し得ない深みがそもまま競争優位に繋がっています

Most Innovative Companies 2024に選出


サプライチェーンの課題を最前線で解決する

 上記の視座において、セールスの役割はサプライチェーンの課題を顧客に対峙する最前線で解決するということだと考えます。例えば、「見積もりに時間がかかる」「部門間で情報流通ができていない」などといった各社の課題に対して、表層的に「見積もり効率化ツール」や「情報連携プロダクト」などで解決することはできるかも知れません。しかし私たちが目指すのは「製造業のポテンシャル解放」です。上記の課題をもっと本質的に「サプライチェーン全体の課題」として解決しようとしています。しかもエンタープライズ企業から町工場に至るまですべての会社で、です。故に、プロダクトを売るのではなく、課題解決の最前線に立ち、ディレクションすることが求められます。ここがキャディにおけるセールスの面白さであり、醍醐味ではないでしょうか。

キャディのMission


【事業編】はここまで。【仕事編】に続きます。



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