雑草の国

好きなものはおばあちゃんとザリガニ。
(どちらも今となっては触れないよ)

僕は生き物が大好きだった。手のひらいっぱいに集めたダンゴムシ、田んぼに大量発生するオタマジャクシ、春長公園の近くにヤモリ、高砂の川を浮かんでいるカメ。でもどんな生き物も、「ギガザリガニ」には勝てなかった。

ある日、おばあちゃんちの目の前のドブで30センチはあろうザリガニを捕まえたのだ!
そこはよくザリガニの取れるスポットで、スルメイカで釣るなんてまどろっこしい事はせずに、素手で鷲掴みにするのが僕のスタイルだった。

いつも通り獲物を物色していたら、明らかにデカい。デカすぎる!
ザリガニのボス。ドブの帝王。甲殻類チャンピオン。こいつは俺の宝物になる。
すぐさま保管しようと試みるが、どれもこれもこいつを収めるには小さすぎて、相応しい容器がない。一旦自宅へ戻り、とりわけ大きな虫かごを抱いてとんぼ返りする。虫だけに。

しかし、ギガザリガニを一時待機させた場所を見てみると、そこにはもう彼の姿はなかった。


その時から僕の生き物に対する熱は冷めていったように思う。どちらにせよそのドブは水が枯れて雑草の国となりかけていたし、無闇に生き物を捕まえるべきではないという倫理観も育ち始めた。
なんか生き物ってきもいしね。

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