カミュ「シーシュポスの神話」
DEEP9fridayの初回放送でご紹介したのが
アルベール・カミュ「シーシュポスの神話」
放送では、極端に難しい内容はやめ、
「ゴールまで行けないけど、一生懸命やるその不条理」と
解説をした。
最近、この本が新刊で買えないことがさみしい。
自身が学生時代に読み、卒業論文にも書き加えた
ディラン史上記念碑的な本である。
フランスの哲学者アルベール・カミュが、
自書「異邦人」の注釈的論文として書いたものである。
神から罰せられた男「シーシュポス」が終わることのない労働をさせられ
皆から笑われるという話を書いている。
シーシュポスに課せられた罰は、石を山頂まで押し上げるというもので
何度繰り返しても、山頂付近に来ると、石自体の重みで下に落ちてしまう。
それでも、シーシュポスは山を下って、終わりのない山頂へ石を押しあげる。
絶対に成功しないとわかっていても、なぜ彼はやめようとしないのか。
カミュはここで、人間としての「誇り」が、不条理に向かわせると解説している。
現実を見れば、戦争は幾度となく繰り返され、人が死んでいく。
飢餓があると思えば、大量廃棄が問題になることもある。
そんな不条理を人間に突き付けてくる神であれば、
神はいないほうがいい。
それよりも、たとえそんなものは無いとわかっていても、
互いに愛し合い続けよう、
お互いの人間性を高める努力を続けよう。
カミュがたどり着いたのは、不条理の中でも、人間性を失わずに
生き続ける大いなる肯定だった。
この本に出合ってから20年以上たつが、まだまだ不条理は
理解できそうにない。