
C.クラーク・エプスタイン 『戦略的質問78』
僕にとっての本書:
リーダーがすべき質問であり、リーダーにすべき質問。78個、すべての質問の意図と説明がある。「質問」に焦点をしぼった本。読者はまず自分がこの質問にこたえ、そして良いものから自分のそばに置いておく質問リストをつくる。
2005年出版。
原著は2002年、 78 important Questions EVERY LEADER Should Ask and Answer.
経営者やマネージャーは、効果的に質問することが必要とされる。効果的な質問は、前向きな組織をつくる。
著者のエプスタイン氏は、コンサルタントや講演を生業としている方。コーチ・エィのコーチング選書というシリーズの1つだった本です。
本書にある78の質問は、どれもコーチングに使えそうなものばかりです。5w1hの問いがほとんどで、コーチエィアカデミアで学習するような質問や学習内容とオーバーラップしています。
今の僕の状況からすると、2通りの読み方ができるかな、と思いました。
ひとつは、コーチング学習の一環として。
もうひとつは、いつか創業する場合のことを考えて。
○コーチング学習と本書
本書はいい感じの質問のパッケージです。
ひとつの質問がひとつの章を構成していて、読んでいけば自分の質問のストックができていきます。以下、ほんの数例ですが、抜粋してみたいと思います。
・あなたが私の立場なら、我が社で一つ変えたい点は何ですか?(顧客への質問)
・私たちリーダーはどんな点であなたの仕事を妨げていますか?(部下へのむずかしい質問)
・あなたは、どんな人として記憶されたいでしょうか?(リーダーへの質問)
こうした質問がたくさんあり、それぞれの使い方が記されています。実際、著者は本書をメモをとりながら自問自答しながら読んでほしいと言っています。
メモをとりながら…とまではできませんでしたが、読んだことで自分のコーチとしての質問に変化が起こることを願っています。
○創業、起業と本書
創業者や起業家はリーダーシップをとることが多いと思います。そうした人たちには本書が挙げる質問は、かなりインスピレーションをくれると思います。
会いにいって教えてくれる人がいれば、恥をかこうが叱られようが、とにかく行くべきだということは、今まで読んだ本から何となくわかりました。わりと起業家のみなさんは、同じことを言う感じがします。とにかく人に会いに行く、志がある人が集まるところに出向く。
しかしその人がいない場合は、ひとまず自問自答する、自分自身をコーチングして、自分のビジョンを明確にしていくことだと思います。
本書はそうした自問自答を助けてくれる本でもあるなあと思いました。
おもしろかったのは以下のところでしょうか。
子供の場合と違って、大人が「なぜ?」を繰り返すと、あまり好意的には受け取られない。矢継ぎ早に「なぜ?」と聞かれると、自分の権威を疑われたとか、評判を否定されたとか、あるいは専門技術に疑問を持たれたように感じるのだ。これは会話を始めるのにいい状態とは言えない。しかし「なぜ?」と尋ねれば物事の深層を探ることができる。問題が解決し、基本的な論点がはっきりして、あやふやな状態がよくわかるようになる。では、リーダーは何をすればいいのだろうか?
リーダーが「なぜ?」を効果的に使うため、ここに二つ提案をしよう。あなたの状況に合う方法を見つけて実行してほしい。
著者が提案する二つの方法は、何でしょうか?
1 口調に気をつけること
2 「5回のなぜ」というテクニックを使うこと
そういえば、コーチングの教科書的なこちらの本では、「なぜ」が圧迫感を与えることから、便利だが注意が必要、というようなことも書かれていたように思います。相手を防御的にさせる。
僕ら大人や、特に教師たちは、幼いこどものように好奇心を持ち続けることの大切さを説きがちです。生徒によく言います。なぜ、を忘れるなと。
しかしそれが取り扱い注意のしろものだということには、あまり自覚的でない場合が多いのかもしれません。
は、そうだよ、この人がそれで失敗したんじゃあなかったのか。
ありがとう、ソクラテス。あなたは西洋史上、最初の偉大なコーチだったのかもしれない。どんな人にも「なぜ」を使った。
本書は、著者の意図とはちがうかもしれませんが、最終的にソクラテスのところまで僕を連れて行ってくれました。