香りの記憶
まだ独身だった頃、初めてスペインへ1人旅をした。空港の免税店で買った香水を、旅行中にずっとつけていたが、帰国後はあまり使うことはなかった。
そのためか月日が何年過ぎても、その香りは私をスペインの街に連れ戻してくれる。
日差しの強さと、木陰の心地よさ。
ぱさぱさした空気感。
マタドール(闘牛士)の引き締まったかっこいいおしり。
香りとは
これほどまでに記憶に結びついているのか
と、ただ、ただ驚く
香りの話しでもう一つ、こんなこともあった。
まだ私が幼稚園児だった頃、
園庭に落ちている白い小さな花を拾って
首飾りを作って遊んでいた。
その時感じた
ほのかに甘いくせのある香り。
大人になってから、ある木の下でふと気がついた。首飾りと同じにおい。
その、スズランに似た白くて小さな花は、
柿の木の花だった。
この香りは
私を幼い時の幼稚園の敷地に連れもどす。
そういえば秋が深まると、
落下した柿でべちゃべちゃになって
発酵したような匂いが充満していたことも
すっかり忘れていた。