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天使のいる空

全てのタイミングを見計らったように。
静かに
本当に静かに心臓を止めた。

午前4時07分。



葬儀場の車がお迎えにきた。
私はずっと一緒にいさせてもらっていたから
せめて残りの日々はパパと一緒に。

先に家路に向かう夫と次女を見送って、
長女は一人で、私は長男と二人で
各々の車で家に向かうことになった。

三人で病院の救急出入口を出た。
しーんとした駐車場に立つ。

空が
これから明るくなることをほんのわずかに
知らせるくらいの
深いあおと白。
でもそこには、確実に今日が始まっている
ことが分かる。

「あぁ……おかしいなぁ。
…こんな風に帰る予定じゃなかったんだけどなぁ」

先ほど、次女の一生を確かに見届けて、
納得したはずだった。

それなのに、
夢なんじゃないか?
なんか違うんじゃないか?と。

私を間に挟んで、両脇から二人が
言葉なく、私を擦る。

あぁ。やっぱり本当なんだ。と
現実を飲み込む。



ぽつり、ぽつり、と振り返った。
長男と二人の車内で。

この言葉が合っているのか分からない。
けど、本当に見事だった。

あの生き様を見せられたら

これからの自分を精一杯
生ききらないといけない。
胸に強い意志がひろがった。


空が少しずつ白けていく。
まだ通りの少ない広い道路。
陸橋のてっぺんが視界を広げてくれた。

あ…。
また、あの感覚だ。
次女が感じさせてくれるあの感じ。

見渡す限りのその空は、
うっすらと湿度を感じさせる柔らかな
ベールを広げていて
控えめに優しいオレンジ色を帯びている。
とても優しいのに、凛としている。

まだ汚れていない早朝の空気が全てを
鮮やかにさせる。

きれいな空だね。次女の空だね。

二車線の道路、長女の車と並ぶ。
長女が空を指さし、
きれいね。と口を動かす。

三人で、流れる涙を拭うことなく
その全てを感じた。


包まれたまま走る私たちを
あの大きな橋が迎えてくれた。

空はまだ少しベールを纏いつつ
前方左に強いオレンジを輝かせた。

目が離せない。

橋に差し掛かり、更に視界が広がると
もう、それは次女でしかなかった。

顔を出し始めた朝日がその強い光を
空に広げていく。
うっすらとしたベールの向こうは
輝きに満ちていて、
空全体が優しい金色になった。

そこから一気に空間に光が増した。

金色に輝く広い広い空から感じたことのない強いエネルギーが溢れている。

胸が締め付けられる。

その時、

「何もこわくないよ」

そう聞こえた。私の脳に直に響いた。

こんなに大きくて、こんなに優しくて、
こんなにも力強い朝を見たことがなかった。

たしかに、そこに、次女がいたんだよ。
みんなにも見えるかな?

誇らしげな顔で。
空の全部を使って。



私は応える

ありがとう!これからもずっと一緒だね。
ありがとう!愛してるよ

言いきれないよ…
ありがとう。




次女は、
空を使う。

見上げればすぐそこにいる。


火葬場に向かったあの日も
次女はそうしてくれた。


…また、お話し、聞いてください。




※皆様からのスキや、コメントが、
今の私にどれだけ力を下さったか。
感謝の気持ちで胸がいっぱいです。

以前の記事にコメントも返せていなくて
ごめんなさい。
またゆっくりと読み返したいのです。

スキを下さった方々、新たにフォローして下さった方々、なかなかお伺いできず申し訳ありません。ゆっくりとお邪魔しに伺えたらと思っています。

ご紹介して下さったり、記事に取り上げて頂いたり、歌でメッセージを伝えて下さったり、コメントを通して光を広げて頂いたり。私の周りはこんなにも愛で溢れています。

皆様、心より感謝しております。
本当にありがとうございました🙇


※野菜とたんぱく質を意識して、
ちゃんと食べています。
今までよりもよく眠っています。
次女にがっかりさせたくないし、
これから共に生きていく私たちなので。






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