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PSMで若手躍動 プレー振り返り(ハーツ戦)
はじめに
われらがハリーケインがまたも目の前まで来たタイトルに手が届かなかったEURO。ロメロ、ロチェルソの活躍でW杯に続きアルゼンチンの戴冠で幕を閉じたコパアメリカ。大陸王者を決める2つの戦いにサッカーファンは湧きに湧いていたが、日に日に私のSNSのタイムラインに増えてきた声がある。「スパーズの試合がないとつまらない…」。
5月22日以来、およそ2か月ぶりの“推し”の試合(13日にも練習試合があったが非公開)。鬱積したサポーターの思いを晴らすかのように、大量5得点で快勝したわれらがスパーズ。結果ももちろん嬉しいが、なによりサポーターの心を躍らせたのは「期待の若手」たちの躍動が見られたことだった。
今回は、そんな若手選手たちの活躍を含む、ハーツ戦の各選手のプレーについて、私の所感を記録しておきたい。
GK
▼オースティン…前半45分の出場。ゴール前でフリーの相手にヘディングを許し、大ピンチを迎えるも、超ファインセーブを見せてチームを救う。その後の先制点につなげた。プレスのかかった局面で、まさかのパスミスはいただけない。
DF
▼スキップ……昨季終盤、SBやったかと思ったらきょうはCB。ビルドアップでノープレッシャーなのにパスがズレるのはなぜなのか。守備強度・フィジカル能力的にも、CBを任せられるタイプではなかった。がんばれスキップ。
▼グレイ……加入後初出場は本職ではないはずのCB。それでもよっぽどスキップよりもいいプレーを見せてくれた。縦につけるパスの鋭さもあり、相手のプレスにも落ち着いてはがす対応で、能力の高さの一端を垣間見せた。中盤でのプレーを見てみたい。
▼ポロ……もっとできるだろうが、PSM初戦ではこんなものか。ゴール前の大チャンスを盛大に枠外に外したのは残念だった。
▼ドンリー……なぜかSB起用。中のレーンでMFとしてふるまう役回りでらしさは出せたか。ソロモンとの距離感が遠く、孤立させてしまっていたが、ソロモンのドリブルを考えてのポジショニングか。
▼フィリップス……こぼれ球を押し込んでゴール。守備面での対応は危なげなくこなし、一定のレベルにあることを証明。ビルドアップ面でプレッシャーが強まったときにどこまで貢献できるか。前に後ろに走れるし、もっと見てみたかった選手。
▼ロイヤル……失点に絡んでしまう。まあ彼らしいと言えばらしいか。彼も本職ではないCB起用だった。
▼スペンス……MOM級。放出候補と目されていた彼のプレーはサポーターにとって一番のサプライズ。ハーフレーンでの推進力、アンジェボールを理解したボックス内での動き、SBとしての前後への走力と、ポジティブな面が目立ち、1ゴール1アシストと結果も残した。ポロの違うタイプのSBとして活躍するのに申し分ない能力はある。
▼ロブソン……ほかの若手の影に隠れがちだったが、特殊な役回りをさせられるポステコサッカーのSBとして懸命にこなしていた。目立つ場面はなかったが、見劣りしないプレーを見せてくれた。
MF
▼ビスマ……昨季終盤以降のようなプレー。後ろでボールを動かすだけで終わらず、相手のプレスを1枚はがして、パスやドリブルでボールを前進させて、チーム全体を前に押し上げる働き。マディソンとのバランスも取りながらポジショニングしていて、シーズンに期待が持てた。
▼マディソン……やはり彼がいると攻撃のアイデア、幅がぐっと広がる。スパーズの攻撃の中核になるのはまちがいない。クルゼフスキとの連携もよく、ワンツーから先制点を演出した。IH兼ボランチのような役回りで、ビスマと並んでビルドアップに参加しつつ、前線でのチャンスメイクも行った。
▼クルゼフスキ……中盤の一角として出場。右サイドでは低い位置の外のレーンにおりてビルドアップの出口になり、左サイドにボールがあるときは、中央で起点になった。ソンが抜けたり降りたりしたあとのスペースは彼がうまく使って、ボールを引き出していた。やはりこの位置がベストか?
▼ホール……ユースとは思えないボールキャリー力。ポジショニングも悪くなく、各選手のパスの逃げ道を常につくってくれていた。チームにスイッチを入れるパスが増えればもっと化けそう。プレミアの強度でどこまでやれるか、近いレベルで育成してほしい。
▼ベルグヴァル……最初こそ固かったものの、すぐに適応。散らすパスからシュートにつながるスルーパスまで、長短織り交ぜながら、抜群のタイミングと状況判断でチャンスをつくり出した。ムーアの得点もアシスト。すぐにトップチームでやれるクオリティだった。
▼ディヴァイン……精力的にプレー。
FW・WG
▼ソロモン……何がしたかったのか、よくわからなかった。一番の特徴は、運べて切り込めるドリブルだと思うのだがなりを潜め、無難なパスに終始、といいたいところだが、その無難なパスもすべて相手にひっかかっていた。ジョンソンのクロスに入ってくる場面も見られず、もっとも中途半端な出来だった。
▼ジョンソン……非公開の練習試合でハットトリックしたらしくその勢いのまま、この試合でも1ゴール。アンジェボールの得点の形をもっとも理解し体現している。大外レーンでボールを持ったときの仕掛けにはもう少し脅威がほしい。
▼ヴェルナー……ドリブルでもって運び、PAで効果的なクロスをあげる、という役割において、非常に効果的なプレー。クロスからしっかりアシストも記録。1つの1つのプレーの雑味が消えればより脅威的だと思うが改善するだろうか。
▼ムーア……「期待の若手」のなかでももっとも期待される大器。その大器らしいクオリティを見せた。ハーフスペースでするすると走り込んで前向きにトラップし、クリティカルなパスで攻撃面で貢献。その得意な形から、鮮やかなゴールも奪ってみせ、スパサポは歓喜。
▼ソン……ニコニコのんびりプレー。決定機外してニコニコしてるのはPSMといえどどうなのかね。雰囲気良さそうで何より。どうせシーズン始まったら鬼神のごとき活躍するので心配していません。
▼ランクシャー……20分ほどの出番の中で再三相手ゴールを脅かした上、ストライカーらしい完璧な抜け出しからゴールも奪う大活躍。そのプレーぶりにケインの面影を感じたサポーターもいるはず。今の時点でも、背負って納めてさばいてシュートも打てるので、順調に成長してエースとなってほしいところ。
▼ベリス……チャンスはあったが打ち切れず…。プレー時間が短かった。
▼スカーレット……打点と威力の高いヘディングでゴールに迫ったが、ファインプレーに阻まれる。ランクシャーの活躍もあり、なんとしてもゴールがほしかった彼は心底悔しそうだった。GKをかわしたあとのシュートは、もっと冷静に打てば入ったのでは。
おわりに
前半はレギュラー陣中心の構成で、昨季からの積み上げに加え、ブロックを敷く相手に対して、外を迂回するようなボールの動かし方ではなく、なるべくバックパスを控えて中盤を経由し、そこから縦・ポケットへと、崩し方に多少の変化が見られた。パスやポジショニングのズレが気になる部分はあった。今後のPSMでさらに洗練されていくことを期待したい。
後半は、リザーブ組というか若手中心、ほぼU-21みたいなメンバー構成。それぞれが自分の特徴を出したプレーを存分に発揮し、合計4ゴールと改心の試合だった。「今季の補強、いらないのでは…?」と思わせるほどの充実ぶりで、いやが上にも期待が高まった。
あー、来日が楽しみだー!!!