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猫のような君を

「んーーーーーーーん…」
太陽が高く昇り、東向きの窓の陽射しが落ち着く頃、君はようやく目を覚ます。

頭までスッポリ布団を被って、出した腕だけで伸びをする。
今日も世の中は動き出している時間なのに、君はなかなか動き出さない。
それどころか、やっと布団から出し掛けた上半身を丸め、黒猫の抱き枕を抱き締めている。
この所の寒さで、今朝の君はご機嫌ななめのようだ。

君は、昔から朝が弱かった。

毎朝目覚まし時計が鳴っても、なかなか起き上がれない君に、君のママが雷を落として、君は完全に朝が苦手になった。
当然、毎日遅刻。
気持ちを上手く言葉に出来ない君は、人付き合いも上手くなくて、だんだん学校も親も嫌いになったよね。
理由も話さず、膝を抱えて泣くことが増えた君。
そんな君の傍に、いつも僕はいて、君の本当の気持ちをよくわかっていたんだ。

大人になると君は、沢山、恋をしたよね。
満たされない気持ちを埋めるように、好きな相手に尽くして、君の大事なモノを渡して行った。
けれども、いつも上手くいかなくて、そのたびに君は膝を抱えて泣いていた。

君の心の中から、僕という存在が飛び出すことが出来たのなら…
いつでも君を抱き締めてあげられるのに。

「今日は、いい天気だよ。
お布団を干したら、今夜は気持ちよく眠れそう。
もう少し頑張れたら、お散歩でもしてみようか?
とりあえず起きて、フレンチトースト作ってみる?」

君の心の中、僕の甘い囁きに、君がムクッと頭を上げる。
そうして今日も君は、猫から人への生活をスタートさせる。


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