優しいカゼの季節
風が冷たくなり、空気は澄んで、夜空の星の瞬く姿がハッキリと見える。
いつもは少数派の私も、こんな時ばかりは大多数から漏れることはない。
昨日から喉が痛い…風邪だ。
今年もこの季節がやって来たのだ。
子供の頃は、風邪を引いて熱でウンウンと苦しくても、氷枕のゴロゴロとした感触を楽しんでいる間にいつの間にか眠りに就いていた。
ふと気が付くと、額に母の手が置かれていて。
その手がヒンヤリとして心地よく、安心した。
翌朝、枕の中の氷が溶けて水になった頃には、熱も下がり殆ど回復していたものだ。
今も残る、優しい優しい思い出。
大人になった今は、一人でもそれなりに対処出来る。
幸い熱は出ていない。
ほんのりと温かい白湯で薬を飲み、パジャマに着替えて、布団に潜り込む。
もしかしたら、強制的に休めと言われているのかも知れない。
そんなことを考えていたら、ウトウトして来た。
薬が効いて来たようだ。
夢の世界に誘(いざな)われる一歩手前で、山積みの仕事も、煩わしい人間関係も、一つまた一つと頭の中から締め出す。
氷枕も額に置かれる手もないけれど、明日の朝まで優しい眠りに身を任せよう。
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