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梅と愛しの商店街

こんにちは。栗山ゆかりです。

6月は梅の季節のようですね。
スーパーに入ったらすぐ目の前に、自家製梅酒用のコーナーが設置されていました。
がっしりした蓋の果実酒用ガラス瓶と、その隣に角砂糖の1キロ袋が売っていました。
「梅はこれから入荷予定」とPOPが貼ってありました。
入荷予定と聞くと、なんかちょっとワクワクしますね。

実は私も、昨年初めて自家製の梅ジュースにチャレンジしました。
梅酒でもよかったけど、日頃の飲むペースを考えた結果、ノンアルのほうがとっつきやすいと思って。

まさに、先ほどスーパーで見たのと同じ、ガラス瓶と角砂糖を買って。

で、主役の梅はというと、当時住んでいた家のそばの商店街の八百屋さんで買いました。

そこは知る人ぞ知る、神奈川県にある歴史の長い商店街。
でもシャッター開いてるのは、全体の3割くらいでした。


私は、
この商店街が大好きだったんです。

地元というわけではないです。
たまたま引っ越した家のすぐそばに、この商店街があった。
むしろ、引っ越して半年くらいは、ほとんど存在も知らなかった。

知ってからは、もうもう、お世話になりまくり。週末は毎週欠かさず顔を出してました。

3割の、シャッター開けてるお店が、どこもかしこもお店の人がいい人で。

耳の遠いおじいちゃん店長の食器屋さんから、チャキチャキした夫婦でやってる八百屋まで。

八百屋のおばちゃんが、私がくるたび、その日売ってる野菜のおいしい食べ方をレクチャーしてくれたことを今でも覚えてます。

梅ジュースのときもそう。

八「お姉さんさ、梅酒作らない?」
栗「えー、作ったことないです~」
八「簡単だからやってみたら?これ、今日すっっごくいい梅入ってるから!これで作ったら美味しいよ~」
栗「あー、家じゃあんまり飲まないから余らすかなあ」
八「お酒じゃなくてもいいんだよ。梅ジュースも作れるよ」
栗「梅ジュース?」
八「そうそう。すっごい美味しいよ。うちもほら、ああして毎年作ってる。一年かけて、ちびちび飲むんだよ」

お店の奥に、ご夫婦が作ったであろう梅酒の瓶が見えた。

栗「あー、瓶に入れて作るやつですね」
八「うちに(瓶)ある?」
栗「ないです」
八「今の時期、スーパーに出てるから。お店入ったらすぐあったと思うよ。あそこのオー〇ー。そこで瓶と、あと角砂糖ね。並んで売ってるから」
栗「はい」
八「梅をね、布で拭いて。ここの、芽の部分だけは取ってね。で、瓶に入れたら、コップ1杯のお酢かけてね。それで、上から角砂糖入れて」

こうしていつも、クック〇ッド顔負けの超簡単レシピを伝授してくれるんですよ。しかも、アイテムの獲得方法から。スマホにメモしなくてもわかるくらい、簡単な手順で。
アスパラとか、サツマイモとか、トウモロコシとか、筍とか、お豆とか
今まで何回教えてくれたっけ。

で、言われた通りに作ったら、本当にどれも美味しい。

嬉しくて、次の週末に報告に行く。

「美味しかったです!!」って。

そしたら向こうも喜んでくれて、またその日の美味しい野菜や果物を教えてくれる。

そんなやりとりが好きで、しかも魚屋さんとお茶屋さんと食器屋さんも、おんなじ風にいつも接してくれるもんだから、休みの日は毎週、その辺りのお店を一周していました。

野菜と魚を見ては、季節の移り変わりを感じてました。

どれが夏?秋?とか改めて聞かれるとわからないけど。
えっと、菜の花は春かな。

商店街としては、もしかしたら厳しい状態だったかも知れません。

商業施設のように、「なかなか前に進まないよねー」て言うほど混んでる光景なんて、見たことなかった。
中央の通りを通過するとき、パーソナルスペース2メートルくらい確保できた。

お客さんのほとんどが、地域に長く住んでいそうな常連さん。
子供たちは、道の脇に座って誰かの帰りを待ちながら遊んでた。


だから、店と客というよりみんな家族や友達みたいだった。


「うちは、通りいっぺんの店とは違うからね」

と言って、本当にいいと思ったものを勧めてくれていたおばちゃんの、かっこいいこと。

ご主人も、私を見かけるたび店の奥から「りんご、甘いよ!」とか、端的かつ的確なアドバイスを飛ばしてくれました。

引っ越すのを伝えたときも、若いから色々やれるね、頑張ってねと言ってくれました。

わかんないことあったら電話しておいで、とも。

親か。

てくらいあったかかったなぁ。

時間が進まずに春夏秋冬だけを繰り返してくれるなら、サザエさんループの世界線で生きていけるなら、ずっとこの商店街のそばにいたいって、本気で思った。

でもきっと、10年後はそうじゃない。

休みの日の心の拠り所がそこにしかない私のままではいられない。

私自身が、拠り所を生み出せる人になりたい。

そう思って、大好きだった場所を卒業してきたのです。

でもたまには、顔出したいな。
おばちゃんたち皆、元気かな。今日も楽しくお客さんとお喋りしてるといいな。

去年作った梅ジュースはまだ少し残ってて、冷蔵庫の上に鎮座してます。

今日帰ったら、またちびちび飲もう。











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