【ネタバレあり】無職転生-異世界行ったら本気だす- 考察-12「ナナホシについて」
無職転生ファンの皆さんこんにちは。
当ページでは無職転生の作中及びその後の考察をしていきたいと思います。
まだ無職転生をお読みでない方は、ブラウザバックし、まず作品をお読みいただくことを強く推奨します。ネタバレなしで物語の展開をお楽しみください。非常に面白い物語展開で、また人生観について一考する作品です。
よろしくお願いします。
ナナホシについて
今回は七星静香ことナナホシについて考察していきます。詳しくは、「七星静香は異分子か」、「前世の男の力を借りず、リリアの過去改変の力により召喚された七星静香は篠原秋人を救うことができるのか」「本編での七星静香の役割の考察」を本題にします。
七星静香は、元の世界で篠原秋人、黒木誠司と共にいたところ、リリアの願いにより天才魔法騎士(アイシャ)が組み立てた召喚魔法陣で篠原秋人が召喚された際、巻き込まれ転移させられます。しかし七星静香は魔法陣に現れず六面世界の時空の狭間に閉じ込められます。
篠原秋人は、リリアを軟禁している国の救世主として召喚されましたが、甲龍暦500年の戦争であっけなく戦死してしまいます。
それまでのリリアは、オルステッドのループに巻き込まれ、如何な行動を取ろうとも死を迎え、その恐怖を記憶し続けながら悠久のループを死に続け絶望していましたが、これまで存在しなかった篠原を希望とし篠原と共に生きたいと願い、本来の力を全て発揮します。リリアは無意識に、次のループで篠原秋人を助ける存在として七星静香を400年に召喚しようとします。しかし、リリアの力は世界の抵抗力と拮抗し、七星静香が降り立つことはありませんでした。
しかし407年、時空の狭間にたまたま同時に閉じ込められていた前世の男の魂が迷い出て、世界を無意識に改変していきます。417年、3人の六面世界の人物に影響を与え歴史が変わった結果、世界の抵抗力が弱まり、リリアの過去改変の力が上回って発現します。七星は六面世界に降り立ち、邂逅した龍神オルステッドの庇護下に入ります。
オルステッドに同行して各大陸をめぐり、魔法大学で元の世界に戻るため召喚魔法の研究を進めます。途中、魔力がゼロであることが原因で病にかかります。その病はドライン病といわれ太古の昔に根絶された病でした。
ルーデウスにより寛解(完治ではないが症状や異常がみられない状態)し、再度研究をすすめ元の世界へと戻る転移装置を完成させます。転移は、現時点では元の世界に戻ることはかなわず、ペルギウスの力を借りて、長期間の休眠状態についています。
物語で語られているおおよその概要は以上のとおりです。
七星静香は偶然喚ばれたのか
七星静香自体が六面世界にいることについて、作中では、王国が勇者を召喚するため天才魔法騎士(アイシャ)が魔法陣を描き、リリアが力を注入することで篠原秋人が召喚された。字面通りでとらえると、魔法陣は王国の勇者を召喚するものであったことから本来は篠原秋人だけを喚び出すつもりであったといえる。そして召喚の瞬間、六面世界の召喚の法則である「触れ合っている者同士は同時に転移される」こと、篠原秋人と共に魔法陣に召喚されなかったことから、七星静香の存在は偶然といえるのではないか。また前世の男の魂も、同時に転移したことから魂だけはトラックとの衝突による衝撃から至近距離にいたということになろうか、こちらも同様に偶然であろうと思われる。
七星静香が意図的に喚ばれたかどうかであるが、可能性としては低いのではないかと考える。王国の勇者として喚ばれた篠原秋人が召喚されたとき、共に召喚されていたのならともかく、七星静香は時空の狭間に閉じ込められた。これは召喚の法則により召喚に巻き込まれはしたが、魔法陣の召喚条件にはかからず王国に共に召喚されなかったことから、魔法陣の設定は王国の勇者とした篠原一人を喚び出すものであったと考える。また召喚者側である王国も、語り部の内容から勇者ただ一人の召喚であったと思われる。
また余談だが、篠原秋人が誰とも触れ合っていないときに一人喚ばれた場合、死の間際に抜け殻になるほど力を使ったリリアの願いは、どのような結果をもたらしたのであろうか。正史では七星静香が時空の狭間から降り立つことになったが、そのまま雲散霧消してしまったのか、それとも力の出力先が無く魔力を保持したまま不発に終わり再度絶望に飲み込まれたのであろうか。
ルーデウスがいない場合、七星静香は篠原秋人を救える存在か
エピローグプロローグ・ゼロにて、七星静香が篠原秋人を救う存在となり、リリアの力によって六面世界に降り立たせている。そしてその立役者であるルーデウスは、リリアの力にも認識されていない完全な招かれざる客であった。では七星静香はルーデウスがいないとき篠原秋人を救う存在となれたかどうか、物語を順に追って整理する。また「リリア干渉ルート1」など「六面世界の物語年表・リリアについて」で勝手ながら定義したものを用いている。
①リリアの力が七星静香を六面世界に降り立たせたとき
七星静香は、リリア干渉ルート1でのリリアの力により、リリア干渉ルート2(いわゆるルーデウスの存在する無職転生編の時間軸)で甲龍暦500年に篠原秋人を救う者として時空の狭間から400年に降り立つ予定であった。しかし、リリアの力は世界の抵抗力に阻まれた。この時点ですでにリリアの力は発現せず、ルーデウスがいない場合、無常にも無限ループに再度突入し、リリアの願いは悉く打ち砕かれていたはずであった。しかし、本来死産していたと思われるルーデウスが、誕生直前に前世の男の魂が入ったことにより誕生、3人の人物に影響を与え、わずかに歴史を変えたことで世界の抵抗力が弱まりリリアの力が発現した。
②七星静香がドライン病にかかったとき
仮にルーデウスが存在していなかった場合で、こちらも仮に偶然七星静香が六面世界に降り立った場合、七星静香が病にかかった際にドライン病の治癒方法がなく、一番の理解者であるオルステッドがその場に居合わせたとしても、悠久のループで治療不可能と判断したスペルド族滅亡のときと同様、治療を諦めたと思われる。ルーデウスだけが古代の病の対処方法を手探りで探し当て、寛解させることができた。ルーデウスがいない場合、ルーデウスを介して紡いだ人間関係(少なくともザノバは人形での不祥事がなくシーローン王国にいた可能性が高い)を構築していなかったであろう傍若無人な七星静香のために魔大陸へ行き、神出鬼没のキシリカの元へ探しに行くほどのお人よしな誰かが決意しない限り、七星静香は死亡し、ここでも無限ループに再度突入し、リリアの願いは打ち砕かれた。またペルギウスは、時間のスケアコートで七星静香の病状を進行させないようにして治癒を図るが、ドライン病の特効薬であるソーカス草の生息地にはアトーフェラトーフェがおり、ペルギウスとアトーフェが犬猿の仲であること、ペルギウスと七星静香は相互利益の関係でアトーフェに借りを作ってまで最大限助ける義理はないだろうことから、同様の結果となったと考える。
③転移装置の研究のとき
七星静香は、元の世界に戻るため魔法大学で転移に関する研究をしていた。一度目の異世界転移の実験で失敗し、絶望のあまり意気消沈してしまった。このとき、狂龍王カオスがつくったものと思われる自律人形をルーデウスたちが発見しており、その多面的な魔法陣の構成から着想を得て実験は成功した。結果、しばらくの年月を経て元の世界へ戻るための転移装置を完成させた。
場合によってはルーデウスがいなくとも、いずれ七星静香が何らかの拍子に閃く可能性もありルーデウスがいなければならなかったとまではいえない。転移装置の完成自体は、前記の点を除くとルーデウスの魔力の提供であるが、シルフィエット曰く一つの実験でも上級魔術相当の魔力を消費し、高価な魔石で代用したり比較的魔力量の多い人物との契約となるが、ルーデウスがいたときより時間をかければ可能であったと思われる。しかし②のドライン病により時間をかければかけるほど罹患の可能性が高く、また転移装置が完成し、転移が不発したときの感情の落差、ドライン病の罹患への焦りなどが、時間と比例して大きくなるであろう。老デウス世界での七星静香は、転移装置を完成させ元の世界に戻れると思ったら戻ることができず一気に失意のどん底となり自殺したと思われる。ここでもリリアの願いは絶たれるが、魔法陣を平面から多面に描くことで研究を進展させたこと、老デウスの日記があったことで七星静香自身が冷静に状況整理できていたことから、七星静香の生存に繋がっている。
二人という偶然の産物が物語を変えた
全くの偶然の産物であるとみられる七星静香と前世の男であるが、決定的な違いとして七星静香は、同じ偶然の産物である前世の男の活動無しには六面世界に自力で降り立つことすら叶わなかった。ルーデウスが存在しなかった場合、ナナホシは時空の狭間から降り立つことはなく、また降り立って以降も精神疾患やドライン病に罹り、運命を自分が切り拓こうとする意志まではなかった。
と書くと語弊があるので付け加えると、七星静香は、現代の高校生で自活の経験がない中、突然異世界に飛ばされ言語を始め倫理観の異なる社会秩序への適合と自立を強要され、生存・研究のための収入の確立など、青年実業家のような成果を上げただけでもなかなかに真似できるものではない。それすらも元の世界に戻るための地盤固めであり、そのうえ出来るかもわからない手探りの中で、何としても戻りたいという思いであるので、心的負荷の許容がすでに限界突破していたものを押し止めていたともみえる。
七星静香は本編でどのような描かれ方をするのか
七星静香は篠原秋人が出現するまで甲龍王ペルギウスの庇護下にある。また三大魔術の一つである召喚のくくりの中の転移の専門知識に関しては、異世界との転移装置を完成させるなど、こと転移の知識については神級の域にあるペルギウスに迫るほどと思われる。筆者は、甲龍暦500年の中央大陸戦争、その後に第二次ラプラス戦役が発生すると考え、転移魔法陣の存在が重要なものの一つとなると考えている。転移の研究者の七星静香は、自分のためだけでなく篠原秋人のため、また前世の男やオルステッドへの恩義のためにも転移の知識をオルステッド陣営のために使うのではないかと考える。
七星静香が物語本編でどうなるか断片がないのでわからない。これまでの物語では運命力といわれるものは少なくともあまり強い方ではないと思われる。260話「最後の夢」でも8人ほどの主要人物の中に、篠原秋人らしき人物、黒木誠司かもしれない人物もいたが、七星静香がいなかった。七星静香は六面世界では不老のようでルーデウスが認識できる人物であるのに、存在を確認できなかった。この意味は、エピローグプロローグ・ゼロ「その存在(七星静香)は、少年(篠原秋人)と共に生きたいという少女の魂と酷似していた。」、「彼女(リリア)が最後まで生き延びるかどうかは、まだ、誰にも分からない。」とあわせどう展開されていくか本編が待たれる。
七星静香の研究分野の転移であるが、ジョブレスオブリージュ最終話、中央大陸北方にある鬼神帝国の隠し砦が中央大陸紛争地帯にあることから転移魔法陣を敷いていると、筆者は考えている。中央大陸は赤竜山脈が尾根を連ね、中央大陸南部と西部を通る赤竜の下顎と中央大陸西部と北部を通る赤竜の上顎と呼ばれる2か所の峠道以外は、七代列強の上位でなければ通行できず、まして軍や隊ともなれば進行不可である。兵站の観点から砦、それも秘密裡のものが単体で孤立して存在できるわけがなく、補給路が必ず存在する。ほかに物語の中で語られている可能性としては、書籍版7巻、アニメ2期にもでていたガルガウ遺跡の成り立ちになぞらえ、土神級魔術の使い手が北部から洞穴を掘り、隠し砦まで通じているいうもの。しかし土神級または洞穴を完成させるほどの手練れが存在しかつ鬼神帝国に所属しているという可能性は現在のところ薄く、これまでの物語でルーデウスが各拠点に設置していた転移魔法陣のように、砦に敷設されている可能性が高いと考える。アスラ王国ではアリエルのもと転移魔法陣の研究を再開させたり、恐らくミリシオンの教圏の評価と思われる「禁忌を破り転移魔法を世に蘇らせ、その利便性を利用して世界征服を企んでいた大罪人」と記す文献(アスラ王国人物録)の存在、一般人にも転移魔法陣の使用が常態化されているなど全国的にその存在が知れ渡っている。
転移魔法陣の競争という観点から、異世界への転移装置をも編み出した七星静香の存在は、転移分野においてペルギウスと同格の存在価値である。また目的が魔神ラプラスの打倒であるため全面協力とまで言い難いペルギウスと違い、オルステッドへの恩義と本編唯一となる現代人の篠原秋人との関係性からオルステッド陣営に尽力する技術面を支える研究者となると考える。
ちなみに、無職転生の物語の冒頭、前世の男、篠原秋人、七星静香を転移させた召喚術であるが、力点に魔法陣等がない状態で使役した魔法陣に召喚させている。何気ないが、この技術は驚異的であり別世界線のアイシャが魔法陣を描いていた。この技術は本編で解読・利用されることはあるのだろうか。
七星静香は、無職転生編ではルーデウスが主役であったこともあり、か細い存在のように一見見受けられたかもしれません。しかし本編で篠原秋人と再会することができ、また篠原秋人が六面世界の変革を成し遂げようと決意したのなら、以後は篠原秋人のためにその頭脳を使うかもしれません。
以上が「ナナホシについて」の考察です。
最後まで御覧いただきありがとうございました。