22.05.05 カセットテープ
欲しかった戸川純のカセットが届いた。五年に一度市場に出るかどうかくらいのレアアイテムだ。フリマアプリでは珍しいものは出品されて数分で売れてしまうので、とにかくスピードが命。出品されるとアラートの通知が来るようにしており、大慌てで購入手続きを済ませる。出品されてから購入までにかかった時間はたぶん1分程度。「業者か!」とツッコミたくなる。
ただ、同じ出品者のリストを見ていたら、その日にまた別の、十年に一度市場に出るかどうかくらいのレアなカセットが出品されていたことに気付いた。が、時すでに遅しでこちらはとっくに売り切れていた。こんな風に買い逃したものがあるからこそ、いつまでも収集を趣味として続けられるのだと自分に言い聞かせる。
今音楽メディアにおけるCDの価値が暴落している。そしてこれに反比例するようにレコードとカセットの価値が上がってきているのを感じる。いつでもどこでもすぐにスマートフォンで音楽が再生できる時代だからこそ、わざわざ専用の再生装置を用意して、実物をお店で購入して、アルバムの1曲目から曲順通りに聴いていくというアナログな体験に、新たな意味が生まれたのだと思う。そのためには出来るだけその体験を意識できる方、つまり不便な方が好まれるから、CDよりもレコードやカセットなのだ。そしてサブスクで音楽を聴いている時は「借りている」感覚だが、レコードやカセットといった実態があるとその音楽を「所有している」感覚があって、それも気もちがいい。
今までに集めたテープをズラッと置いている棚に、今日届いたものも並べる。こうして集めることに何の意味があるのか結局のところよく分かっていない。ただ人間の本能的な何らかの欲求が満たされ、結果として気分が良くなるなら、それでいいじゃないか。
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