23.07.08- 君たちはどう生きるか
2023.07.08
iPhoneを紛失した。しかも電車の座席に置き忘れるという間抜けな方法で。でも、正直なところあまり反省していない。なるようになった結果だから仕方ないと、どこかで思っている節がある。
iPhoneがどうやら稲田堤のアパートの一室にあるらしいと分かった時はさすがに少し怖かったが、それでも盗んだ人を恨んだり、忘れた瞬間を思い出して悔やんだりすることもなく、淡々と盗難補償やSIMカードの再発行の手続きを進めている自分がいた。わざわざリスクを犯して盗んだのに、住んでいる場所を特定された上に、二度と使用できない端末だけを掴まされた盗人が少し気の毒になったくらいだ。
酔って電車にiPhoneを忘れる自分の肉体的な衰えと、それに思いの外動じない精神的な成長を同時に感じる出来事だったのだけれど、それとは別に、iPhoneがもはや身体の一部になっているということを再認識する機会にもなった。コロナで鼻が効かなくなった時のようなもどかしさを折々で感じる。
一番不便に思ったのはLINEが使えないことだ。僕の生活は、いつでも、誰とでも、取ろうと思えば連絡が取れるという安心感の上に成り立っていたのだと痛感した。普段自分から連絡を送ることなんてほとんど無いくせに。とりあえず直近で連絡を交わすであろう人に、LINEが使えない旨のメッセージを送ってから、やっと安心して眠りについた。
2023.07.14
高校の友達と酒を飲む。どれだけ不謹慎な発言をしてもなんとも思われない安心感があるからこそ、思ってもいない言葉がどんどん出てくる。
最近、自分が何らかの特性が備わった容れ物であるという感覚が強くなってきた。酒を飲んだ時の言葉は決して自分の本性などではなく、絶えず生成される煩悩が、そのまま口から出てきてしまっている状態なのだと思う。自分は酒を飲んだ時に言葉の制御が効かなくなる性質がある。だから、煩悩に打ち勝ち、その状態を維持するために、できる限り酒を飲むのを控えていかなくてはならない。
つまみに頼んだししゃもが届く。焼かれた3匹のししゃもを見て「このししゃもも兄弟だったんですかね?」と友達が言うと、もう一人の友達が真ん中のししゃもを取って「じゃあ俺次男頂きます」と言う。兄弟なわけないし、万一そうだったとしても年上から順番に並べないだろう。ただ、酒が入っているのも相まって、その馬鹿馬鹿しさが、なんだかとても愛おしかった。
2023.07.16
『君たちはどう生きるか』を観た。Twitterでの前評判があまり芳しくなく、そこまで期待せずに観たのだけど、個人的にすごく面白かった。以下、感想なのでネタバレ注意。
まず、作中での世界の捉え方が本当に素敵だった。宮崎駿の思い描く世界の本質が、美しいアニメーションで体現されていた。そこに並行世界や輪廻転生といった要素が含まれていて、多くの人が映画を通してその価値観に触れることへの期待が膨らんだ。もう一つは母と子の愛というテーマ。自分が早逝することがわかっていながら、子を産んで育てる未来が楽しくて仕方ないという主人公の母親の愛にグッときた。でも一番良かったのは、単純に鑑賞中ずっとドキドキワクワクして、思わずニヤけてしまうくらい楽しかったことだ。初めて映画館で千と千尋やハウルを観た小学生の頃の興奮が思い出された。この感覚が味わえるのは、やっぱりジブリ映画ならではだと思った。
この作品が宮崎駿と、彼の作った作品についてのメタファーだというのは鑑賞中には全く気づかなかったが、自分が絶対的に信じていたものの崩壊が呆気なく訪れたその先に、どんな不幸な未来が待ち受けているのかと思えば、ただ平和でいつも通りの日常が続いていくという描写に、彼の諦めと希望が見える気がした。