23.01.01 夜が明ける
2023.01.01
年末はYouTubeで前世記憶や量子論に関する動画を見漁っていた。そういえば、昔からこの時期はビートたけしの超常現象に関する特番を観るのが好きだったな。
意識は量子の活動によって生まれ、片割れの量子は宇宙にある。人は死ぬと宇宙側の意識に戻っていく。こんなトンデモ学説のような話も、あり得るのではと思ってしまうのは、自分も似た体験をしたことがあるからだ。
体験といっても、細かいことは何も覚えていない。ただ、その日ベッドで目が覚めた瞬間、ほんの一秒前まで意識が別の場所にあり、この世の全てを悟った感覚が残っていた。その時は深い喜びに包まれていた覚えがある。あの朝、目覚める直前まで宇宙の意識体に接続していたのかも知れない、となんとなく思う。
西加奈子の『夜が明ける』を読む。主人公と友人アキとの関係に、いじめ問題で話題になった小山田圭吾と障害を持った同級生との話を思い出した。いじめを美化するつもりは毛頭ないのだが、彼等の間には、実はこの小説に近いような友情があったのでは、と思っている。それを、正義の面をして、原文も読まずに、意図的に切り出されたブログの内容だけを見て、リンチのように叩いて、弁解の隙を与えず、再起不能状態まで追い込んだ人たちがいた。障害者差別は許されないが、障害者を差別したというレッテルを貼られた人は、いくら叩いてもいいなんてことは絶対にない。
人は誰かを攻撃する時、自分に正義があると信じて疑わない。でも、そんなに分かりやすい悪などこの世にはそう存在しない。それぞれに言い分があり、正義がある。正義を振りかざして人を叩く時、本当は叩くことに快感を見出しているのに、その正義を言い訳にしていないだろうか。議論を分かり合うための手段として用いず、相手を言い負かすことだけを考えていないだろうか。自分の発信が、例え意図したものでなくとも誰かを傷つけている可能性を考慮できているだろうか。この小説を読んで、そんなことを改めて考えた。
「戦うのは戦うんだけど、なんていうんだろう、勝敗じゃないんです。勝敗が決まったら、その戦いがそこで終わっちゃうじゃないですか?負かしちゃったら、終わってしまうから。」
登場人物の台詞の一部。本当はもっと長く、もっと色んな示唆が、救いが含まれていた。あの台詞は何度も繰り返して読みたいし、実際繰り返し読むことになるだろう。
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