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夜が嫌い。

あの寒い冬の日、私は何故だったか兄に家を追い出され、靴下で雪の上を走っていた。待って待ってと目の前を走り去る車を追いかけて。
足が冷たかった。母の乗った車は、直ぐに見えなくなってしまった。
自転車小屋で雪をしのいで、サドルの上で濡れた靴下を脱いだ。
母の帰りをそこでずっと待っていた。

この記憶をただ思い出す夜がある。誰も助けてはくれないと、孤独と憎しみと悲しみに呑まれていく夜がある。
本気で死のうと考える夜に出会ったのは、いつだっただろうか。
星空の大きさに嫌気がさす。嘲笑っているのかと。自分の小ささに、心を閉ざしてしまう浅はかさに。

わかってるんだ。信じられる人はいると。寄り添ってくれる人はいると。たとえ、それがあったことの無い誰かでも。それでも、愛されなかった悲しみを、その誰かにぶつけてしまったら、きっと離れていくから。だから私は誰も信じたくは無い。

傷つけられたからと言って、誰かを傷つけてしまっては、きっと後悔するから。
助けての言えない私に気づいてくれる人はまだ居ない。
所詮、助けを自分から求められない、待つことしか出来ない浅はかな人間なのだ。
嫌いだ。私を蝕む記憶が。

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