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「カタルシス」で考えるホワイトアルバム2の面白さ


こんにちは。
突然ですが、皆さんはホワイトアルバム2という魂が震える名作ゲームをご存知でしょうか。

知らない方は今すぐこの記事を閉じてWHITE ALBUM2 EXTENDED EDITIONを購入して最後までクリアしてください。(※成人向けです)

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成人向けリンク張ると記事を消されたりするらしいので各自でどうぞ


以下、ゲームのネタバレを大いに含みます



















本題


ホワイトアルバム2(以下、WA2)をクリアした方はご存知の通り、このゲームはハチャメチャに面白かったことかと思います。

みんな大好きストラスブール

そしてこのゲームの「面白さ」の言語化については既に多くのユーザーが取り組んできたところであり、筆者も考察を何本も読んできました。


軽く取り上げるだけでも例えば、

・キャラクターが魅力的である
→誰か一人を選ぶことが難しく、三角関係のジレンマを肌で感じられる

・言い回しの妙
→別れや再会など要所要所の場面で強烈な印象を植え付けられる

・破滅的なほどの情景の美しさ
→かずさ浮気√に代表されるように(と筆者は思っている)感情を直接揺さぶられるシーンの数々

・音楽、グラフィック
→この辺りは当然すぎてもはや触れるまでもないですね。

等は多くのユーザーの語り草となっているところでしょう。
筆者は今回、この部分については取り上げません。

では何の観点を語るのか。今回のテーマはカタルシスです。


カタルシスとは


話を進める前に、カタルシスという言葉の意味を確認しておきましょう。

※カタルシスとは
舞台の上の出来事(特に悲劇)を見ることによってひきおこされる情緒の経験が、日ごろ心の中に鬱積(うっせき)している同種の情緒を解放し、それにより快感を得ること。浄化。

Oxford Languagesより

ここから転じて、一般的に苦難を超えて何かを達成した時に得られる圧倒的な喜びなども指すようになりました。要するにここでいうカタルシスとは強烈な解放感のことです。

この記事では筆者がWA2を通じて感じたカタルシスをどうにか言語化し、面白さの正体を少しでも解き明かそうとする試みを行います。

一般創作論においての「面白さ」を考えるとか、評価されている名作を改めて批評しようとか、ましてやそれで共感を得ようとか、そういった取り組みには似ても似つかぬ記事であることをご理解ください。(予防線おわり)



WA2のカタルシス


WA2の主人公は春希、ここは多くの人が納得してくれることかと思います。では本当に「春希のための」物語か?という疑問を考えたことのある方はどの程度いらっしゃるでしょうか。解答は切り口によって、また人によって変わるでしょうしその多様さを否定するつもりも全くありません。

しかし、この記事の観点からはあえて明確に「小木曽雪菜のための物語である」と断言したいと思います。



本作の雪菜のポジションを考えていただきたいのですが、雪菜は「極めて高いステータスを持ちながらも、極めて不遇」ではなかったでしょうか。

圧倒的な美貌と性格とコミュニケーション能力を併せ持つ超人スペックにもかかわらず、春希の心を真の意味で捕らえらるまで実に5年を要しています。しかもその道中も(雪菜の視点からは)散々なものでした。


最初に春希に告白したのに途中でかずさに寝取られるわ勝手に爆発して外国に逃げられるわ、大学では春希と疎遠になるわその間に女が3人生えてきてまた横取りされそうになるわ、大学生活の最後でようやく結ばれたと思ったら勝手にストラスブールでかずさと再会して一瞬でヨリを戻されそうになるわ、その他数多すぎるほどの地獄を全部乗り越えて最後の最後で最高の幸福を掴み取るわけです。

スターダストクルセイダースご一行も戦慄するほどの苦難に満ちた戦いであったことは想像に難くなく、グランドエンディングで雪菜の歌う時の魔法を聞いて自然と涙した人も多いと考えられます。


かの荒木飛呂彦氏は全ての物語は悪役vs主人公の型に当てはめられると言っていましたが、WA2はある意味で強大な悪役(恋路を邪魔するすべての障害)と、主人公(今回の意味では雪菜)が壮絶な戦いを繰り広げた軌跡であるとも言えそうです。

以上の視点を繋げたとき、WA2は「小木曽雪菜のための物語である」と説明できると考えています。

そして悪役が強ければ強いほど、つまりここでは困難が長く多く辛く苦しいほど、プレイヤーは雪菜に感情移入することになります。その結果として雪菜の苦労が報われたときのプレイヤーのカタルシスも大きくなったのではないでしょうか。


また、グランドルートの雪菜本人は知りえないことですが、プレイヤーはclosing chapterで各ヒロインのルートに進んだ世界線の雪菜がどれほど苦しんでいたか、codaでかずさを選んだ時に真正面からフラれた雪菜がどれほど追い詰められていたかを知っています。

だからこそ、かずさ派のプレイヤーですら度し難いほどのストレスを抱えて辿り着いた旅路の最後、雪降る中で雪菜が叫んだ、

「手に届くものを掴んだら、本当に大切なものを手放してしまいそうだった。だから、だから…すごく我慢したんだよ!」
「わたしが一番頑張ったんだよ!とっても辛い思いをしたんだよ!だからいいよね?幸せになってもいいよねぇっ!?」

WHITE ALBUM2  codaより引用     

これがどれほどの重みをもつか、プレイヤーは雪菜以上に感じているともいえるのです。


雪菜が結婚に至るまでの過程では、(春希に99.999%非があるとはいえ)雪菜の動き方次第で回避できた苦痛もあったかもしれません。あるいはもっとアグレッシブに立ち回って春希を徹底的に詰めていれば浮気の余地すらなかったかも…などと考えれば枚挙に暇はないでしょう。


しかし、それはもはや小木曽雪菜という心優しい女性ではありませんし、何よりそんなタラレバに意味はないのです。ただただ理不尽な運命に翻弄され続けた雪菜が報われてくれて嬉しい、心からおめでとうと言いたい。

そんな感情の発露こそが、WA2を「面白かった」と評する数多の声の正体なのではないでしょうか。少なくとも筆者が感じた面白さの芯はここにあると考えています。



終わりに


既にお気づきの方も多いかと思いますが、今回の記事はカタルシスを主題としているため、雪菜のみに焦点を絞り「雪菜√ vs それ以外の√全て」という極端な構図を取っています。

その結果、冒頭に示した通りWA2が持つ複合的な面白さの一端のみしか説明できていません。例えばcodaかずさ√の持つ面白さはセカイ系に類似する部分に芯があると筆者は思っているのですが、今回は一切触れていません。

もしこの記事に続きがあれば、いつかその言語化に取り組みたいと思います。

それでは。



追伸:大アクアプラス祭で時の魔法を歌ってくれてありがとう





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