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【TF2】体力6000倍の最強デブと攻撃力36000倍の超最強ナイフ【バグ】
皆さんはTeamFortress2(以下TF2)というFPSをご存じだろうか?
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銃器を担いだ軍人達が2チームに分かれて、陣地なり情報なりを奪い合うというシンプルかつ奥深い昔ながらの対戦FPSである。
よく比較されるゲームとしてはOverwatchがあるが、TF2は対戦人数が12人vs12人と多いことや、スポーツ系というよりはお祭りゲー寄りという点で違いがあると言えるだろう。
このTF2はリリース日が2007年10月と発売から15年以上経過しているにもかかわらず、今なお数万人がプレイし続けている大人気FPSである。
そして、その長い歴史の中で発見されたバグの中には、ゲームを致命的に崩壊させる物がいくつか含まれていた。この記事では、その中でも特に印象深い「体力無限増強ヘビー」バグについて解説したい。
前提知識
TF2のクラス
本題に入る前に軽く知識の説明をしておく。このゲームには9種類のクラス(キャラクター)が存在している。
彼らには攻撃/防衛/サポートの役割がそれぞれ割り当てられており、得意不得意はそれぞれ異なるよう調整されている。チームメイトと欠点を補い合い、攻撃と防衛のクラスが前線を押し上げ、サポートがそれを援護するといった具合である。
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ヘビーとは
今回はその9つのクラスの中でも特に致命的なバグを引き起こした、ヘビーというクラスに注目する。
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ヘビーは体力と攻撃力が全クラス中最大レベルというメリットを持つが、一方で超が付くほどの鈍足というデメリットを持つ固定砲台のようなキャラである。
そこそこ対戦FPSの経験がある人がイメージする、典型的なタンクキャラといえるだろう。
ヘビーの使用武器
彼の使用武器はメインにミニガン系、サブに護身用ショットガン系、近接武器は拳系というイカれた戦闘狂である。
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なお、サブ武器は回復系のアイテムに変えられ、近接武器は攻撃寄りのグローブも割り当てることができる。ただ、これらはいずれも戦闘補助である事にはかわりない。
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直球に言ってしまえば火力バカの脳筋デブなのだが、タンク系キャラの宿命として大勢に囲まれたら呆気なく散る程度には脆く調節されていた。
回復系アイテムも自分で使用するより味方にプレゼントした方が効果が高くなる仕様であり、どういう武器選択をするにせよ、仲間と連携して戦うのが最も強いスタイルであった。あの時までは。
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問題となった武器
問題武器1つ目
ヘビーが使用できるサブ武器の一つにDalokohs Bar(以下チョコバー)という物がある。これは武器というより回復アイテムに近く、食べるとごく短時間の間、最大体力が50増加する効果がある。
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![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73068961/picture_pc_e6ab54361c3710442dcc88cf95ead90f.png?width=1200)
チョコバーは一度食べるとクールタイムに入るため連続摂取でドーピングすることはできない。そのため、恩恵がかなり微妙であることや、ほぼ上位互換となるアイテムが他に存在していることも重なって、基本的には見向きもされていなかった。しかし、これが後に豹変することになる。
問題武器2つ目
ヘビーは近接武器としてGloves of running urgently(以下GRU)というグローブを使用できる。これは武器でありながら、戦闘で使用することは少ないというかなり珍しい武器であった。
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![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73069313/picture_pc_0829a692fd6767244bff9c0d76049a8b.png)
というのも、この武器は装備している間はヘビーの体力を少しずつ減少させる代わりに、彼の弱点である移動速度を上昇させるという効果を持っていたからである。
そして、装備解除時には装備していた間減少したHPが少しずつ回復するという仕様であった。この体力値が増減する機能が後に悲劇を産むことになるのだが。
鈍足のヘビーはとにかく前線に復帰する速度が重要なため、プレイヤーの好みにもよるがこの武器が使用される機会はチョコバーより多かったと思われる。
(補足)
ここで、チョコバー食ってからGRU付けたら体力の減少デメリットを打ち消せるのではないか?と考えた方もいるかもしれない。だが、実際にはGRUの体力減少が激しすぎるためあまり足しにならず、長い間チョコバーはネタ武器として扱われていた。あの時までは。
終末戦争の始まり
普段通りの平和な戦場は、ある日を境に崩壊した。2017年10月22日、とある海外ユーザーによって先ほど挙げた2つのアイテムを組み合わせたとんでもないグリッチについて解説した動画が発表された。それは、
チョコバーを食べて体力を増やし、爆速で武器を切り替え続けると体力値が無限にオーバーフローする
というものだった。
言葉では伝わりにくいため、実際に見ていただく方が早いだろう。
動画の25秒ごろから説明が入っている。
ヘビーの最大体力は本来300であり、チョコレートの摂取によって増強できる体力は50、つまりヘビーの最大体力は350が限界のはずだった。
しかし、チョコバーのクールタイムを待つ間にメイン武器とGRUを爆速で持ち替え続け、またチョコバーを食べるという動作を繰り返すと体力が限界を超えて上昇し、短時間の間に体力180000とかのバケモノが誕生することが判明してしまったのである。
(このバグは先ほど説明したGRUとチョコバーの設定に何らかの不具合があった事が原因だと思われるが、断言はできないため有識者の方は筆者のTwitterに教えていただければ有難い。)
このグリッチが発見されてからは瞬く間にコミュニティ内に拡散され、同時に地獄が始まった。
ヘビーというキャラクターの最大の強みはその火力であり、弱みは囲まれたときの脆さ、逃げ足の遅さであることは先ほど述べた通りである。
しかし、体力がウン万とかウン十万ある怪物になれば、敵に囲まれての集中砲火など蚊に刺された程度に等しい。そもそも、死ぬことがないなら仲間の手助けも逃げ足も不要である。むしろ近寄ってきた敵集団は彼の火力にとっての餌にしかならず、正真正銘の自走式固定砲台が誕生することは明らかだった。
結果として、カジュアルマッチは怪物と化したヘビーに蹂躙され、闇堕ちすることなく果敢に挑んだ善良なプレイヤー達は、アクシズに挑んだジェガンの如く砕け散っていった。
また、プレイヤーの中には怪物に対抗するため、自らもまた怪物となり、数十万の体力を弾薬の続く限り削り合うという大怪獣バトルのような光景を繰り広げる者まで現れる始末であった。
しかし、悪に立ち向かうために自らも悪になったのでは負の連鎖を助長するだけである。かといって、まともな武器を使用しても全く歯が立たない。それでは、善良なプレイヤーたちは泣き寝入りするしかなかったのだろうか?
答えは否、である。怪物を仕留める武器は確かに存在していた。
それは、スパイが使用するバタフライナイフである。
力にはパワーを、パワーにはフォースを
TF2の中でも高難易度のクラスに分類されるスパイは、全クラス中最低レベルの体力しかなく、銃器も護身用程度のリボルバーしか持ち合わせていない。どちらかと言えば戦闘ではなく妨害をメインの役割としているサポート特化キャラである。
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![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73080174/picture_pc_1c645d6c111aae6aa6ffb78de7cb72f8.png)
しかし、彼の近接武器であるバタフライナイフこそが、怪物にお灸を据える力を秘めていた。というのも、ナイフを構えて正面から殴っても大したダメージにならないが、背中から刺すと大ダメージを与える(バックスタブ)という能力を持っていたためだ。
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この大ダメージというのは固定値ではなく変動的に決定されるというのが重要であった。具体的に言えば、敵の残りヘルス×6倍のダメージを一度に与えるという仕組みである。
つまり、どれだけ時間をかけて体力を増強したヘビーが現れても、一度だけ、一瞬だけ背後を突き刺すことができれば問答無用で即死させられる。体力10000のヘビーにはダメージ60000を、体力180000のヘビーにはダメージ1080000を与えられるのである。
こうした目には四肢を、歯には五臓六腑をと言わんばかりのオーバーキルを狙うことで、プレイヤーたちは一矢報いてやろうと抵抗を続けていたのである。
また、限定的な状況では他の対処法も存在していた。パイロのエアブラストは敵を吹き飛ばすことが可能であるため、これを利用して崖際にいるヘビーを奇襲し、奈落に不法投棄することで処理するといった方法も可能だった。
(ちなみに、TF2に触れたことのある方はスナイパーでヘッドショットすれば一撃で倒せるのでは、とお考えになったかもしれない。残念ながらスナイパーライフルは残りヘルスを参照せず、固定値で約450ダメージを与える仕様であるためヘビーに対抗できなかった。)
戦いの結末
まともな戦いを否定するグリッチの発見によって荒れに荒れた戦場だったが、平穏を取り戻すのも一瞬であった。
そもそも、こうしたゲーム性を破壊するグリッチの存在がいつまでも見逃されるはずはない。2017年10月23日に配信されたパッチにより体力バグは修正、チョコバーはネタ武器の座に送り返され、ヘビーの三日天下は幕を下ろすことになった。二度と帰ってくるな。
終わりに
細かい部分で間違いなどあるかもしれないが、大体はこのような騒動だった。当時は怒りに近い感情も覚えたが、5年後の今になって思い返せば、グリッチが発見されたのはゲームが生きていた証かもしれないと考えるようになった。最近は大規模なアップデートが減ってしまったが、いつか来た時には例え新たなバグが生まれたとしても、寛大な精神で笑い飛ばしたいものである。
2022年4月1日追記
なんと体力無限バグが帰ってきた!
なんでやねん。