僕は、もう犬を絶対に飼わないと決めた
口数の少ない僕に、お母さんは気にしていた。
「何かあった?」
「別に」
学校でイジメにあってるんじゃないかと思っているのか、何回もしつこく聞いてくる。
でも、やっぱり昨日のジローとの再会は言えずにいた。
結局、ジローは、黒い犬の元へ1度も振り返ることなく行ってしまったことに僕の何がいけなかったのかと何度も何度も考えていたからだ。
もう、お前にしか分からないし、教えてももらえない。
ジロー、僕は、お前を不幸にしていたとは、どうしても思えないんだ。
でも、お前は行ってしまった。
「もう、犬は一生飼わない」
「え?いきなり何?」
「だから、犬は飼わないんだって」
「ジローのこと?」
「別に」
「ジローは、多分、好奇心が旺盛で見たことない世界に憧れたんじゃないかと思うけどね」
「なにそれ」
僕は、不貞腐れた。
「コロは、人間の愛情を幸せと感じていたかもしれないけど、ジローは、首輪で繋がれるより自由を幸せと思ったのかもしれないね」
また、涙が出てきたけど、お母さんは気づかない振りをした。
僕は、涙をこらえて
「ジローって何で付けたんだっけ?」
「そういえば・・何でだったっけ?」
「コロは貰ってきた時から付いてて、メスなのにって大笑いしたよなぁ~」
「うん、うん、そうだったねぇ」
二人で考えてた。
「あ、確か、みんなで色んな名前呼んで振り返ったのがジローだったんじゃない?」
「そうだ、何個か呼んで確かジローって呼んだ時に振り返ったっけ」
お前は、きっとこの先もジローなんだよな。
だって、お前が決めた名前だし。
「でも、やっぱり犬はもう飼わない」
「うん」
ジロー
お前みたいな変わり者の犬に出会えただけで満足だよな。
それに、こんな悲しい思いは、もう二度と絶対したくないから。
僕は、庭にある誰もいないジローと書かれた小屋を見つめていた。
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