
協力隊起業は公益性の壁を超えられるか。協力隊起業の3つのシナリオ
はい、はじまりました!第二弾!
前回は協力隊の指標について評価評価!とカタい話を展開したので、今回はもうちょっと実務的なそして未来の話をしていこうと思います。
テーマは「協力隊起業」。
ここ10年で協力隊が起業する流れがどんどん増えてきたわけですが、こんな疑問が浮かんできます。
「協力隊が起業することで地域にとってどんな意味があるの?」
「協力隊起業の内容はなんでもいいの?活動時間内で得た収益どうする?」
「4月から制度改正で公益性が求められるけど時間内の起業って大丈夫?」
自治体職員も協力隊員も、気になるこのテーマ。
今回は「協力隊起業」を掘り下げていきます!
1、協力隊起業ってどんな種類があるの?
10数年前の協力隊といえば、過疎地に行って地元のおじさんに「それでメシ食えるのか?」と詰められるのが定番でした(自分も詰められた笑、まだ前例がない時代でした)でも最近はだいぶ変わりました!

今の協力隊は地域内外、公と民を横断しながら働く柔軟なスタイルで定着を図ってきました。現在の協力隊の定住率は約6割、そのうち起業する人は4〜5割と、かなりの割合で起業を始めています。その姿は都市の若者の憧れとなり田園回帰の流れを牽引しました。
「地方で起業したいけど、いきなりリスク取るのは怖い…」「地方に移住して豊かな暮らしを実現する働き方をしたい」という人にとって、協力隊を入口に起業する選択肢が増えてきました。
では、具体的にどんな起業があるのか?
岡山県内の協力隊起業の例
✅ 塾経営
✅ 福祉事業(これ藤井)
✅ ビール工場
✅ デザイン事務所
✅ ゲストハウス
✅ ジビエ加工
✅ 特産品販売
✅ まちづくり支援
✅ アウトドアキャンプ場
✅ 薬草生産
✅ チョコレート製造
✅ サウナ
…などなど、バラエティ豊か!
昨年、特産品つくって起業している経験者と隊員が集まる会(特産品サミット)中国地方で自主的にひらきましたが起業の中の特産品だけみても皆さん元気に、そして本当に魅力的なものをつくっているなとおもいました。

2、この記事を書こうと思った理由
これらの協力隊起業した人たちに思いを致すと、協力隊は、誰も知らない土地に行き、地域資源を活用し、地理的条件では厳しい地域で、住民と地道に関係性をつくり、答えがない活動にわからないなりに折り合いをつけ行動し起業してきました。
隊員と会うと自分の人生と地域に現場で正面から日々向かい合っている姿がある。それだけでも協力隊は本当にすごい人たちであると私はおもいます(全員ではないけど大半が)。
私は、某企業がとってつけたように地域課題をかたり地域から「うばう」ビジネスモデルには不誠実で怒りを覚えるのですが、協力隊であれば、住んでいる「地域の当事者」として地域に何かを残すように事業をつくる。堂々と胸を張って起業をやってほしい。
だからこそ、協力隊の出口の半分を占める起業というものをしっかりとここで整理し、前に進んでいける環境を作らねばというおもいが自分の中にあります。
すぐ熱くなるのでこれくらいにします笑
3、「協力隊の起業=民間起業」ではない!自治体が抱えるジレンマ
協力隊起業はいい事例がたくさんある。
一方で、「協力隊だけ起業で公金つかってずるい!」そんな声もあります。
経験者の私からすると「じゃあやってみたら!」と言いたいところですが、
では、協力隊の起業は民間起業と何が違うのか、を整理します。
よくこんな会話が自治体と隊員の間であります。
ある日、協力隊が担当職員に言いました。
💡 「定住活動として、カフェをつくりたい!」
担当職員は思いました。
👤 「定住してくれるなら応援したい!」
でも、次の瞬間、こんな疑問が浮かんできます…。
😨 「公金が入っている時間内に営利活動ってやっていいの?」
😨 「もし収益が出たらどう処理するの?」
😨 「地域内に既存のカフェがあったら民業圧迫にならない?」
職員はパニックです。
そして、こんな感じで返ってくることがあります。
💬 「それは活動時間内ではできないので、時間外でやってね」
「もしくはそれは認められないのでやらないでね」
「応援したいのにできない…愛したいのに愛せない…」そんな状況が生まれてしまうのです。
では、どうすれば「愛せる」ようになるのか?
自治体と協力隊が混乱しないために、協力隊起業と民間起業の違いを整理しましょう。公金を使う協力隊起業がとれるポジションというものがみえてきます。起業型の協力隊をいれている自治体の中には、協力隊起業を戦略的に位置付け、このあたりをきちっと整理しているところもあります(起業型協力隊の焼きまし安易な地域は整理できてなくて隊員が大変そう)。

協力隊起業と一般的な民間起業の違いこれを踏まえない隊員向けの起業研修やアドバイスのおおいことに個人的にはかなり違和感をもっております。
来年春から協力隊活動に「公益性」を強くもとめられるようになるので、ここはよく整理しておかねばとおもます。
協力隊の原典といっていい「推進要項の改定」が4月に変わります。https://www.soumu.go.jp/main_content/000975738.pdf
4、協力隊起業の環境づくりのポイント
要項改定を見据えて、協力隊起業の環境づくりについて書きます。ポイントは二つ!
✅ ポイント①地域にとってプラスになる起業か?(公益性の確保)
・自治体主導の事業であるか?(地域商社などは)
・民業圧迫にならないか?(既存事業との競合を避ける)
・地域の産業を補完し、新しい価値を生むか?
・住民の理解が得られる内容か?
・地域課題の解決につながるか?
もちろんこれに隊員の定住につながるかどうかということがはいってきます(つまり持続性)
「そんなことまで考えなきゃならないなんて聞いてない!」
「先にいってよ!」」という隊員の声が聞こえてきそうです。
でもここを踏まえないとうまくいかないことがあるのも事実です。
ただ、本来協力隊起業の「公益性」というものは、各地域ごとで状況がちがうのでそれに合わせて納得感が得られる形で各地域で決められるものだとおもいます!
✅ ポイント②収益の扱いを明確にする(専門的なので難しいとおもったら次の章へ)
活動時間内に得た収益の取り扱い方については、整理している自治体の事例が複数あります。協力隊の任用形態ごと(3つあります)に考え方がちがうのでそれぞれ分けて書きます。

▶ 会計年度職員(公務員型)
フルタイム → 営利活動は原則NG(時間外副業も首長の許可が必要)
パートタイム → 副業OKだが、時間内活動での収益受け取りはNG
▶ 個人委託型(業務委託)
「私、個人事業主なんで収益とっても大丈夫だと思ってる!」という隊員さんがいますが、契約書に「活動時間」がある場合は注意が必要。
月報を提出する形なら「時間内と時間外」の概念が発生し、倫理的な問題になります。
▶ 団体委託型(NPO等に所属)
団体が非営利であれば、収益は「地域のために再投資」されるべきだと思います。そのために役場は、委託する目的と業務範囲をしっかり決めておかないといけません。
目的を達成するために非営利活動の収益事業で得た収益を目的達成のための非営利活動に再投資!
これにつきます(これは公益セクターのわかる人じゃないとわからない呪文のような話)
これらのポイントを踏まえると、隊員の方も自身ができる範囲で協力隊起業の際に気をつけた方がいいことがみえてくるのはないでしょうか。
5. 100年後、協力隊起業はどう評価される?未来のシナリオ3つ
未来のことはわかりませんが、協力隊起業として蒔かれた種を育てるのか育てないのか。長期的に見て、協力隊起業の行末を未来から振り返ったときの3つのシナリオを考えてみました。
① そのまま衰退シナリオ
人口減少が進み、協力隊のスモールビジネスは残るが、病院・学校・商店などのインフラが消滅。結果、地域自体が維持できなくなり、地域資源を活かしたビジネスも成り立たなくなる。これは地域の人口減少が実際にすすんでいてそれをもとに想定しました。10年前400人いた集落が今では200人以下になっているが隊員経験者はそこで起業し頑張っている。広い土地に薄く人が住める生活のインフラづくりが進まなかったらこうなる。
② 100年後に評価されるシナリオ
過疎化は進むが、協力隊の起業により文化や風景が残り、地縁ではない縁で人をつなでいくことで新たな次世代のコミュニティが生まれ、地域にある価値をつなぐことができ、「あの時、協力隊が残ってくれたおかげで…」と語られる。実例としては結構ありそうな気がしていて、数百年続いてきた伝統の柿、棚田、伝統的な血統をもつ牛、音楽、踊り、地域で大事にされてきた老舗のお店など地域で大事にされてきたものを最後一人の隊員がひろっている、隊員経験者を中心しとたグループが維持を担っているという事例は多くあります。
③ 地域ぐるみの協力隊起業戦略シナリオ
協力隊起業を「個人毎の事業」ではなく「地域戦略」として各地域が展開。
これは実例としては、ベンチャーの生態系をつくった西粟倉村のローカルベンチャー、多くの料理人を育成し地元さんの食材をつかった飲食店コンプレックスをつくった邑南町の「耕すシェフ」育成など、協力隊起業を戦略的に位置付け各地域で特徴的な地域が花開く未来。
①はやだな。神様、②か③でおねがいします!
6. まとめ
協力隊起業の要諦は「地域にとってプラスになる起業かどうか」
協力隊起業を長期的なものとして成功させるためには、地域の課題を解決し、長期的な視座にたって形をつくることが必要。
以上!
次回もおたのしみに(かけたらね笑 …