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カービングスキーの論文(第4回)
スキーの基本動作とカービングターンに必要な運動要領の提案(Version 1.1, December 2024)
前回からの続きで、4. 『角付け』の基本動作 と 5. 『ひねり』の基本動作 となります。今回と次回(第5回)が本稿の核心部分ですので、じっくり吟味していただきたいと思います。まずはその前半をお楽しみください。
4. 『角付け』の基本動作
定義: 『角付け』とは下肢を横方向に傾けることにより左右いずれかにスキーのエッジを立てる動作のこと。
スキーの基本姿勢を取り、センターポジションを維持したまま下肢を使って両足を同時に同じ方向・同じ角度で傾ける。この時重要なのは、骨盤および上半身も膝と同方向にスライド(水平移動)し、バランス軸を鉛直(重力の方向)に保つことである。正面から見ると上半身から上腿までがほぼ鉛直に立っていて、膝下が傾く(やや変形した“くの字”の)姿勢、となる(実際には膝関節は外反・内反しないのであくまで下肢が傾く“くの字”となるはずが、見た目は上述した“変形くの字”となる)。基本的にこの『角付け』をすると足圧中心は傾けた方向に足の側部辺りまで移動し、同時にバランス軸も同じ量、同じ方向に移動する。例えばFig. 5のように、左に傾ける場合、左足(内足に相当)の外側側部、右(外)足の内側側部に足圧中心がそれぞれ移動するので、鉛直に保たれたバランス軸も同じく左方向に移動し、内足により多くの体重が乗ることになる。『角付け』の角度を深めれば、内足にかかる荷重はより大きくなるが、バランス軸が内足外側側部を超えて更に左側に移動すると倒れてしまうので、静止状態での『角付け』の角度はバランス軸が内足外側側部に位置した場合が最大とみなせる。後述する静止状態で『角付け』と『ひねり』のコンビネーション運動を行うのに適した『角付け』は、Fig. 5に示したように、左足に右(外)足よりも凡そ2倍の体重が乗り、バランス軸が足圧中心を通る線分上で2:1の割合で内足寄りの場所(真上から見て凡そ傾けた内足の内側側部辺り)まで移動した姿勢である。
『角付け』の角度を変えなければ、スキーの基本姿勢の高さを上下に変化させてもバランス軸位置、両足の荷重割合共に変化しない。
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『角付け』始動のきっかけは内足の足関節の内返し(足底が内方向を向く動き)の動作である。内足の足趾を屈曲させると土踏まずが浮くような動きをして内返しがし易く、結果、内膝が自然にターンの方向に傾こうとするので容易に『角付け』出来る(この動作を内足アーチと呼称)。外足の足趾は逆に伸展させ足関節を外返しする。センターポジションを維持し母指球から踵に至る側部全体で床(雪面)を捉えるように、内足の動きに同調するよう傾けると良い。
身体の重心位置を左右に移動させずに『角付け』しようとすると、両足の荷重割合は変化せず、バランス軸が傾く。すると両足の傾きの角度がバラバラになり外足をより大きく傾け外膝が内側に大きく入った、いわゆるX脚が現れる。バランス軸を鉛直に保ち両足を同時に同じ角度で傾けることが両足を平行に維持するために重要である。
5. 『ひねり』の基本動作
定義: 『ひねり』とは両足を同時に使って、バランス軸を中心に下半身を左右に回旋すること。
下半身を捻る動作は、直立姿勢あるいはスキーの基本姿勢でFig. 6のように両足(裏)を固定して両膝頭を結ぶ線と骨盤を左右どちらかに同じ量・同じ方向に向けるように動かすことである。この時両足には互い違いに前後方向に押し引きする力をかける。これはバランス軸を中心とし両足の足圧中心を通る円を外挿するとそれぞれの足圧中心位置において円の接線方向に力をかけることになるのでバランス軸(あるいは支持基底面の重心)を中心としたモーメントを生じさせられるからである。これがスキーに捻りの力を伝達する上で最も重要となる。
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間違えないで欲しいのは、両足をそれぞれ個別に(足圧中心位置で)回旋するのではないということである(Fig. 7)。これだと角付けした状態ではエッジが噛んでしまいスキーを回旋できない。対して『ひねり』動作では次章にて解説する通り、エッジを立てた状態で容易に回旋できる上、膝関節に捻る力がかからず怪我のリスクもない、極めて合理的な動作である。
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