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自分の心のしずかな革命(未完成)006
《第6場》
根っこの問題
(アタリナチュラ)
カゲに言われるまでもなく、大人たちはみんな世の中がおかしくなっていることに気がついていると思う。
(ヒョウキンファニイ)
気づいているのに気づかないふりをしている?
(オダヤカーム)
だれかがなんとかすると思い込んで安心しているのかしら。
(アタリナチュラ)
世の中がおかしいことを立ち止まってよくよく考えてみれば、みんなが根っこの問題に行き着く。
それは深い深いところにあるけれどもはっきりとらえることができればぼくたち一人ひとりで解決できる単純でやさしい問題なんだ。
目に映る問題に対応するのもいいのだけど根っこの問題に取り組まない限りどの問題も結局は解決しない。
根っこの奥深く行き着く先の大きな問題は2つ。
大人たちはこの2つの問題にうすうす気づいているのだけど問題にしようとはしない。
(カゲ)
ひとつは「お金のしくみ」。
さらに奥へ進んでいくと自分の中にある「心」の問題に行き当たる。
(オダヤカーム)
「お金のしくみ」をつくってきたのはヒトだから「お金のしくみ」を正すにはヒトの「心」を進化させなければならないということ?
(アタリナチュラ)
「お金のしくみ」は巨人化しているので一筋縄ではどうにもならず、正し方をよくよく考えないといけない。
ここで、まずは目に映る問題をつきつめてみよう。
ほとんどの問題は「お金のしくみ」と「心」の問題に行き着く。
最初は「開発」の問題。
持続可能な開発を行うには「お金のしくみ」を変えるか、「お金のしくみ」からはなれないと開発すればするほど問題が大きくなる。
(カゲ)
エネルギーや食料をはじめさまざまな分野で「ヒトのために」「未来のために」とうたった開発がすさまじい。
それでもヒトのため未来のための開発は「さらにもっと早く」が求められている。
開発に力を入れること自体は何もわるいことではないだろう。
ただ自然の流れを逸脱する速度で開発が繰り返されると、どんなに優秀なモノを開発してもヒトのため未来のための地球環境はよくならない。
優秀な商品を開発しても十分に使われる前に次なる優秀な商品を開発するような具合で開発のサイクルがどんどん短くなっていくと、開発や生産や廃棄や再利用にかかる負荷が大きく膨れあがっていく。
これには例外はない。
そうして優秀な商品から得られるはずだった恩恵はむなしくなっていく。
(アタリナチュラ)
考えれば商品が普及して利益を十分に出す前に次の商品を開発することができるのは奇妙な現象なのだけど、「お金のしくみ」がこれを可能にしている。
(オダヤカーム)
モノとモノを交換するためのお金は自然だけど、混乱を招くお金?
(カゲ)
実際に利益を出さなくても利益を出す期待があればお金を創造できる「お金のしくみ」もある。
お金には交換機能のほかにいろいろなしくみが加えられていて、お金を右から左に動かすだけで手元のお金が増えたりすることもある。
(アタリナチュラ)
一生のあいだに働いて得たお金と、働かずに一瞬のうちに得たお金が、どちらも同じ価値になっている。
(ヒョウキンファニイ)
手間をかけたり汗をかいたりすると損をしてしまうヒトもいるの?
(アタリナチュラ)
損をしているかもしれないけれど、手間をかけ汗をかく暮らしに幸せを感じるヒトもいる。
(カゲ)
ヒトは生きものも開発の対象にしている。
牛や鶏や野菜やさまざまな生きものを自然から切りはなし異常なスピードで育てている。
そしてヒトがモノを消費するスピードと量も増えるばかりでとどまることがない。
(アタリナチュラ)
地球の1日の流れ1年の流れは変わらず、水や空気が地球の中を旅する流れも変わらず、あらゆる生きものたちも変わらない流れに沿って生きている。
(オダヤカーム)
ヒトはこの流れを無視している・・。
(アタリナチュラ)
幸せを遠ざけていることがわかっていて、ますます幸せから遠ざかる「お金のしくみ」を育てている。
幸せから遠ざかることがわかっているのに、幸せのためにもっと多くもっと急げと大合唱だ。
(ヒョウキンファニイ)
お金は幸せをゆがませることもできるの?
(アタリナチュラ)
ヒトを豊かにするはずだった経済もお金の支配によっておかしくなっていった。
次は「経済」の問題。
社会に貢献してみんなの利益になることをするから自身も利益を得られ経済がまわる。
もちろん地球環境を損ねないようにするのがみんなの利益になる。
そうすると環境と経済は両立するしかなく問題になることはないはずだ。
(カゲ)
だけど環境と経済は両立できないまま。
そのころシンを守っているロボットたちはコンピュータをつくっていた。
カミゴッド博士はあらかじめシンのためのコンピュータを3台つくって世界各地のはなれたところにロボットとともに配置していた。
コンピュータは1台でシンを実現する能力を備えていたが3台を連携させていた。
そしてもし、そのうちの1台か2台のコンピュータに何らかの問題が発生しても、残りのコンピュータを動かしながら新たに1台をロボットがつくることになっていた。
しかしいまは3台とも問題なく動いている。
実は3台が置かれている場所についてロボットたちが未来の災害を予測した結果、3台同時に大災害に見舞われる可能性を導き出していた。
もちろん、コンピュータとともにロボットも新たにつくっている。
カゲと3人の話し合いはつづいていた。
(アタリナチュラ)
環境と経済が両立できないことを象徴しているのは、いつからか経済は成長し続けないと成り立たないように思われてしまっていることじゃないかな。
(オダヤカーム)
だけど地球は成長しない!
(アタリナチュラ)
少なくともヒトが生きてきた時代においては地球は大きくなったり増えたりすることもなくずっと変わりがない。
変わりがない地球の恵みを使う経済を成長させ続けようとするのはむりがある。
(カゲ)
成長しない地球にいながらすべてのヒトが経済の成長を享受することはできない。
にもかかわらず、お金を動かして儲けを出すしくみは経済が成長し続けることが前提になっている。
(アタリナチュラ)
経済が成長しないと幸せになれない、という物差しをみんなが持たされていて、高齢者にも子どもにもお金を動かす生活を覚えさせ、さらに奨励し、いよいよ際限なく成長を続ける列車から降りることができなくなってきた。
でも、みんながこのレールを走る列車に乗ることはできない。
経済を成長させる裏で割を食う者をつくらないと列車は脱線してしまう。
働きたくても働けないヒトや働いても食べられないヒトをつくるしかない。
(ヒョウキンファニイ)
成長や進歩はいけないことなの?
(アタリナチュラ)
そんなことは少しもなくて、科学技術が成長することや、ヒトとして成長したり進歩するのに制限はない。
(オダヤカーム)
助け合いとか思いやりのような心は大いに成長してほしいわ。
(アタリナチュラ)
おすそわけけとか、おたがいさまのような、お金を使わない経済活動は小さくなっている。
(カゲ)
お金が経済を支配してしまい、自然に依存して生きているヒトがいまや自然よりもお金に強く依存するようになっている。
(アタリナチュラ)
自然に依存して生きていくために必要だったのが共同体。
自然に依存しながら一人では生きていけないヒトは共同体に依存してきた。
(カゲ)
少し前までは家を建てたり田植えや稲刈りなどは共同体の仕事だった。
いまでは借金しないと農業ができない。
借金しないと家が建たない。
(ヒョウキンファニイ)
みんなのために働いてきたのに振り返ってみたら借金を返すために働いていたようなもんだ、と農家のヒトが言ってた。
(オダヤカーム)
そして借金がなくなる前に新しい機械を次々と借金で買わないと競争に勝てない、と言ってたね。
(カゲ)
借金しないでは暮らしていけない、借金しないでは競争に勝てない。
借金をして勝つようになるとひとり勝ちに向かってしまう。
みんなの利益になる経済活動ができなくなってしまう。
(アタリナチュラ)
多くの生業がスピードで価格で負けないために、借金でも競争している。
(ヒョウキンファニイ)
そんなことをしていたらレールの上を走っているのか走らされているのかわからなくなる。
(オダヤカーム)
途中下車はできないのね。
(アタリナチュラ)
立ち止まって考えることもできない。
休んでもやめても変えても問題ない生業のことも考えてみたい。
地域の自然を含めた共同体があればお金がなくても成立する暮らしも考えてみる。
成立していなくても近づく努力をしていれば、お金を使う生業を休んでもやめても食べていけるようになる。
安心して立ち止まれる暮らし。
経済を成長させない豊かな暮らし。
(オダヤカーム)
お金との付き合い方の問題なのかしら。
(アタリナチュラ)
つきつめれば何かの問題ではなくだれかの問題でもなく、自分自身の問題。
「心」の問題だ。
つづく。