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謎の文豪「山岬 乾次郎」と『さらさら雪』(第4話の小ネタを大いに考える)

皆さんは『さらさら雪』という作品をご存知でしょうか?『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』第4話で、一瞬だけ映っていた作家「山岬乾次郎」の代表作です。
この一瞬だけの小ネタが、第4話の内容に大きく関係していたのではないか、その根拠をこれから述べて行きたいと思います。


1.「山岬 乾次郎」と『さらさら雪』とは?

そもそも「山岬 乾次郎」とは何者か?『さらさら雪』とは何なのか?まずはこちらをご覧ください。

さらさら雪  山岬 乾次郎

大衆小説*¹においてその才能を発揮したが、純文学²の手法を用いた作品も数多く執筆。

代表作「さらさら雪」「印影散々」
「さらさら雪」は東京の下町に住む四人の従姉妹たちの四季を通した悲喜こもごもをユーモアたっぷりに描いており
しばしば近代文学の代表作に挙げられる。

*¹:「大衆小説」に赤い丸がついており、その端に「千佐井加水との共著『短編集 すき焼き』」の記述がある。
*²:「純文学」に波線が引いてある。

『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』第4話
1年A組の黒板が映し出されたシーン より

作家や著書についての情報は、他にありません。
結論から言うと「山岬乾次郎」や『さらさら雪』は、明治末期から昭和中期まで活躍した文豪 谷崎潤一郎を元ネタにした、架空の文豪及び作品と考えられます。
その根拠は以下の通りです。

  • 「山岬乾次郎」という名前が「谷崎潤一郎」と対応している。

  • 山岬の作品『さらさら雪』と谷崎の代表作『細雪(ささめゆき)』の語感が似ている。あらすじにも類似点がある。

  • 山岬の作品『印影散々』(いんえいさんざん?)と谷崎の随筆『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』の語感が似ている。

  • 「千佐井加水」(ちさいかすい?)は、おそらく永井荷風が元ネタ。永井の日記作品『断腸亭日乗』で、谷崎とすき焼きを食べる場面があり、これが『短編集 すき焼き』の元ネタと思われる。

ではなぜ、この小ネタが「第4話の内容と関係していた」と判断できるのか、次の項目で説明します。

2.第4話と『細雪』

『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』第4話を楽しみながらも、私は少しもどかしくなりました。話があまり前に進んでいなかったからです。
4人は集まったけれど、新しいバンドとしての形はまとまらないまま、時間だけが過ぎていきます。

4人集まった!しかし話は進まず…

楽器の担当決め、バンド名決めもありましたが、議論らしい議論が行われないまま終わってしまいます。

立希ちゃんの顔が絶妙ですね。
燈ちゃん、いつタンバリン仕込んでたんでしょう。

メンバーが集まっても、その仲はなかなか進展しません。進んでいたとしても、牛歩の歩みです。
ついでに言えば、この頃の愛音ちゃんのギターの腕前も…

Cコード!(ドヤァ)


その一方で、第4話ではちょっとした会話のやり取りや細かな表情の変化による、キャラクターの掘り下げがかなり丁寧に行われていたため、話が進まないことへのもどかしさを感じつつも、第4話単体でちゃんと楽しめる作品になっていました。

第4話冒頭。CRYCHIC解散に対する燈ちゃんとそよちゃんの捉え方の違いがわかるシーンです。
そよちゃんの名前を出す愛音ちゃん。少し言い淀んでます。
そして祥子ちゃん。複雑そうです。
第4話で海鈴ちゃん本格登場。会話シーンで立希ちゃんとの関係性が明らかになりました。


この第4話の特徴は『さらさら雪』の元ネタ(と思われる)『細雪』の内容や描写の仕方とよく似ています。次の引用をご覧下さい。

と、その翌日の午後であった、雪子がひとり二階で習字をしているところへお春が上って来て、
「お電話でございます」
と云った。
「誰に」
「雪子娘さんに出ていただきたいとおっしゃっていらっしゃいます」
「誰から」
「橋寺さんでございます」
そう聞くと雪子は慌てた。筆を擱いて立ち上ったものの、すぐ電話に出ようとはせず、顔を赧くしながら階段の下り口でウロウロした。

谷崎潤一郎『細雪 下』より
※『細雪』は長編小説で上・中・下に分かれています。

『細雪』は、主要人物の縁談が話の中心になるのですが、この縁談がなかなか話が進みません。
一方で、人物像の掘り下げを徹底していたり、些細な出来事も丁寧に描いているため、話が進まずとも、作品を楽しむことができます。

この内容や描写の仕方が共通していることから、「山岬乾次郎」や『さらさら雪』の小ネタは、実は「話はなかなか進まないが、キャラクターをより深く知ることができる」という第4話の内容と関係していた、と言えるのです。

先程挙げたこのシーン、会話で愛音ちゃんとの距離感が三者三様であることがわかります。

3.まとめ

今回は、「山岬 乾次郎」とその代表作『さらさら雪』が、『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』第4話の内容と関係について述べていきました。
『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』には、何回でも観たくなる工夫が凝らされています。こうした遊び心満点の小ネタを探すのも、楽しみ方の一つだと思います。
鋭意製作中の『BanG Dream! Ave Mujica』にもどんな小ネタがあるのか期待してしまいますが、今は『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』を改めてじっくり楽しみたいと思います。
拙い文をここまで読んでくださり、ありがとうございました。

それにしても、山岬乾次郎著『さらさら雪』。一度読んでみたいものです。

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