油脂の調理性(折りパイの油脂)
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(ジュ マペル ネネト)
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1)折りパイの油脂
フランス風で層になった折りパイ(フィユタージュfeuilletage)は、その製法が難しいとされている。
薄い層を多く作ろうと思っても、目的どおりにはならない。
よいパイを作るには、材料の役割と、油脂の性質、作業温度、操作に注意する必要がある。
☆パイの材料
パイは折りこんで層を作っていくため、各材料の性質が複雑に入りくんでくる。
折りパイのおもな材料配量は、下図のようである。
①バター
包まれる材料としては、バターだけを用いるものと、小麦粉とバターを使うものがある。
バターには水分が含まれているため(日本16~17%、外国15%)、これに小麦粉を入れると小麦粉はバター中の水分を吸収し、バターの伸展性を助ける働きをする。
バターがかたすぎると、生地を伸ばしたときに切れる恐れがあるので、バターに小麦粉を練り込んで使うのもよい。
Dの配量では小麦粉が多い。
これは、普通とは逆の製法で、バターでドウを包むため、とくに切れないことが要求されるからである。
②小麦粉
バターを包む材料は小麦粉である。
小麦粉は、強力粉と薄力粉を混合して用いる場合が多い。
両者のそれぞれの欠点としては、小麦粉は浮きが悪く、強力粉は①口あたりがかたい、②弾力があり、よくねかさないとのびが悪い、③収縮が大きく作業性が悪い、④焼き上げ後は変形が大きい、などがあげられるが、強力粉と薄力粉を混合すれば、これらの欠点がいくらか解消され、作業性はよくなる。
③塩
塩の添加は、粉のグルテンに力を与え、よく伸ばす効果を出す。
加塩バターを使ってもこの効果はなく、塩は直接粉に加えなければならない。
バターを小麦粉中に少量練り込むのは、グルテンと結合させてグルテンの力を弱めるためである。
このバターの力で、生地の伸展がよくなり、収縮が少なくなる。
④卵黄とバターミルク
Bの卵黄は、焼き上げた製品の色つきをよくし、卵黄の球状たんぱくが固まって、口どけをよくする。
Cはバターミルクを使用している。
バターミルクは、たんぱく質その他の成分が含まれているので栄養上もよく、製品の色つきをよくする効果もある。
☆油脂の性質
油脂の性質を知り、どのような操作を行えばよい製品になるかを知っておかねばならない。
くちどけがよくなるには、融点が低いことが必要であり、折りたたみや伸ばす作業がうまくできるためには、可塑性のあるかたさが必要である。
低い融点で、その上かたさ(稠度)を持たせるには、油脂の結晶を細かく、たくさん作り、固体部分を多くしてかたくする。
このようにして、高度な技術で作られたパイ用油脂もある。
パイ用油脂は、一度やわらかくしてしまうと、冷やしただけでは元のかたさに戻らない。
つまり、元のように小さな結晶を多く作れなくなるからである。
☆油脂と作業温度
作業温度はドウ中の油脂に影響を与え、薄く伸びないドウを作ることもある。
ドウをうまく作るには、温度を以下のように調節したらよいであろう。
バターの融点は低いので、作業室が15~20℃であればよい。
18℃くらいに室温を保っている菓子工場もあるが、普通はそうはいかない。
暖かい部屋で行えば油脂が溶け、ドウからにじみ出ることもある。
それで、冷蔵庫にしばらく入れて冷やしながら作業を行うことが、重要なポイントになるわけである。
折るたびに冷やすか、冷やす時間をどれくらいにするかなどの点は、油脂の融点、室内の温度、生地の厚さなどによって決めるべきである。
要は、作業によって上昇する生地の温度で、油脂が溶けないようにすればよい。
とくに、午前と、午後3~4時ごろは、温度差が大きくなるので、注意する。
生地中の油脂が溶けて液体になると、表面張力で球形になって薄く伸びない。
伸びないと層の形成が悪く、ドウが付着する。
すると、焼き上げ後も目がつぶれて薄い層は形成されない。
逆にドウがかたすぎるのを無理に伸ばすと、油は崩れて小塊になり、これもうまく焼き上がらない。
要するに、やわらかすぎてもかたすぎてもよいパイにはならない。
油脂の温度管理と作業中の温度には細心の注意を払うべきである。
☆作業中の生地温度
作業中には生地温度が次第に高くなる。
原因として、①作業中の手からの伝導熱、②操作中の摩擦熱、③小麦粉が脂肪や水に吸着する際に生ずる吸着熱、などが考えられる。
伝導熱と摩擦熱は、作業するときに注意すればある程度抑えられるが、吸着熱が最も大きい原因といえよう。
これには、吸着熱を1部分に片寄らせない作業が必要である。
例えば、パイを折りたたんで伸ばすときのめん棒は、樫などの材質の重いものが適する。
これは、めん棒を同じ速度でころがすと、ドウ全体が同じ重さになり、ドウが同じ厚さに伸展し、吸着熱も全体が同じになる。
軽いめん棒であれば、手で押えながらころがすので、同じ厚さに伸展させるには、かなりの熟練を要する。
☆折り方と成形時の厚さ
パイの折り方にもいろいろあるが、一般にフランスでは「3つ折り6回」、日本では「3つ折り2回、4つ折り2回」といわれる。
これらの方法で折ったときの層の数は、折り方にその回数を掛ければ求められる。
次に、作るものによって、ドウの形を整えて厚さを決める。
ボンテ氏のテキストによれば、ポワッソン・フーユテでは1.5cm、タルト・ポワッソンでは4~5mm、ボローバンでは7~8mmとなっている。
つまり、小麦粉のでんぷんの大きさは、20~30ミクロン、油脂の結晶は大きいものでも20~30ミクロンであるため、伸ばしたバターの厚さが20~30ミクロンあれば、よい浮きになるのではなかろうか。
折り数があまり少なくて焼く時の生地が厚くなると、浮きすぎて層が離れてしまうし、逆に折り数が多くなると、バッターの層は薄くなり、ドウはくっついて、やはり浮きが悪くなる。
しかし、折り数だけ同じにしても、パイがうまくできるとはかぎらない。
パイのできは、油脂や小麦粉の質、室温、焼き温度、技術者の熟練度などにも、大きく左右されるからである。
室温が高いとき(20℃以上)は、折り数を少なくし、低いとき(15° ℃以下)は、折り数を多くして調節する方法もあるようである。
フランス風パイの3つ折り6回(折り数729)のパイ皮を作り、焼く前の整形の厚さを2.5mm、5.0mm、7.5mmの3種に伸ばし、4 ✕7cmの長方形に切って焙焼した。
最も薄い2.5mmのものは、目がつぶれて切り口の層が少なかったが、7.5mmのものは厚く浮き、層もできていた。
さようなら(*´˘`*)ノ゛Au revoir!(オルヴォワール)
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