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【Flesh and Blood】プランニングの技術とその実践(あるいはMidrange Florianプレイングガイド)

お久しぶりです。lighdarです。
ProQuestシーズンはZenで1勝、Midrange Florianで1勝と満足できる結果だったものの、世界選手権ではZenを使用して5-3初日抜けから7-6dropでした。得意のドラフトで2-4と負け越したのは不甲斐ない限りです。

近況報告はこれくらいで、今回は「プランニング」という技術について語りたいと思います。

カードゲームでプランニングが重要というのは耳にしたことのある方も多いでしょう。
しかし、具体的にどのように実践するのか。プランがあれば表現価値をどのくらい無視して良いのか。そこまで踏み込んだ記事は見ないように思います。

そこで、最近お気に入りのMidrange Florianの手札を例に、プランの実践例を紹介します。同時にMidrange Florianのプレイングも身につく二度おいしい記事になっている……かもしれません。

プランとは何か

さて、Flesh and Bloodを始めた人がまず学ぶべきことに、「表現価値」というものがあります。
詳しくはGo Again Mediaさんの記事を参照(いつもありがとうございます)。

表現価値自体は初心者から上級者までとても大事な考え方ですが、ステップアップしていくと表現価値を考えるだけでは不十分であることに気が付くはずです。
記事でも触れられていますが、たとえば表現価値理論は以下を捨象しています。

・自分のライフを3点守るのと相手のライフを3点攻めるのは等価ではない
・「ヒットした時」能力を評価できない
・デッキがfatigue(ファティーグ)していくと、手札あたりの表現価値よりもデッキ内総打点の方が重要になってくる

リミテッドで腕の出るカード。攻撃に使っても防御に使っても3点。
攻撃に使った方が良いのか防御に使った方が良いのか、表現価値論は教えてくれない。

表現価値論からはプレイが決まらない/決めるべきでないときに、より上のレイヤーで指針を決めてくれるもの、それがプランです。オタクが好きがちな表現を借りれば表現価値は「戦術」、プランは「戦略」ですね。

プランについてはGo Again Mediaさんでも以下の通り紹介されています。

相手(特定のヒーロー/デッキ)にどうやって勝つかの具体的なプレイ指針がプランであり、プランを決めることをプランニングと呼んでいます。

プランの実践例


それでは実際にどのくらいプランがプレイに影響するかを見てみましょう。

あなたはCCフォーマットでミッドレンジフローリアンを使用しています。
(デッキリストは以下を参考にしてください。)
https://fabrary.net/decks/01JCRCWJX2FHQX8BH8BWGMJYCX?matchupId=01JCRCWMX1H314PPS6WA1P5SCV

序盤に《秋の知らせ》青、《征服の命令》、《王位の切り倒し》、《轟く暗黒のヴェール》をドローしました。
簡略化のため、自分の墓地は0枚、アーセナルはなしとします。関係する装備品は《命刈りの刃》と《アークナイトの掌握》の2枚です。

自分の墓地は0枚、アーセナルはなし(クリックで拡大)
定番の装備品

どのようにブロックし、どのように攻撃するのが良いでしょうか。








はい、相手のヒーローと状況によりますね。
では、実際にどのくらいの数の分岐が考えられるでしょうか。
プランをしっかり持っていれば、10通り近くのパターンを考えることができます。

①対Dash I/O

表現価値12点(攻撃0点、防御12点、格納庫0点)

Dash I/Oにはフルファティーグプランを取ります。
守っていれば相手のデッキが高速で減りライフを削る手段がなくなるため、こちらから攻撃をする必要性は薄いです。

相手の攻撃が弱く自分の手札が残る際には、妨害効果のある攻撃アクションや《戦争屋の外交術》を撃てるよう意識するといいでしょう。

②対Zen

表現価値12点(攻撃0点、防御9点、格納庫3点)

Zenは武器が強力でデッキの減りも緩やかなため、Dashと違ってフルファティーグプランは成立しません
手札のほとんどを防御に回しつつも、ハイバリューな攻撃3種ー《王位の切り倒し》と《すき込み》とFlorian能力達成後の装備品(ルーン印2個+3点)でのみ攻撃するプランを取ります。

《Art of War》があった時と違い今のZenは乗算アグロではなく足し算アグロ※なので、《征服の命令》による妨害は効果が薄く、撃てば撃つほど負けが近づきます。
ゲーム終盤に引く《王位の切り倒し》をライフ水準の都合で防御に回さざるを得ないようなシチュエーションを防ぐために、序盤は防御に徹してライフを高く保ちましょう

追放の「大地」カードが0枚の状態で《王位》を格納庫に置くのはリスクですが、前述のプランから攻撃する機会が少ないので許容できます。《絡み根の外殻》(DR)で一度目の腐解を達成してから撃ちたいですが、2枚目の《王位》を先に引いたらしぶしぶ4点で撃ちましょう。

※乗算アグロと足し算アグロ
打点が手札の枚数に応じて雪だるま式に増えていくアグロデッキを乗算アグロ、常に手札の枚数*3~4程度の打点を出すデッキを足し算アグロと呼んでいる。コンボっぽい動きをするのが乗算アグロ、しないのが足し算アグロ。造語。

③対Aurora

表現価値13点(攻撃4点、防御9点、格納庫0点)

Aurora相手に守りを重視しすぎると《Arc Lightning》と《Flicker Wisp》のコンボを揃えられて痛い目を見るので、Zenよりは気持ち殴ってダメージレースをする姿勢を見せた方が良いです。
基本的には防御を重視しつつ、表現価値的に損をしないプレイをするのがプランになります。
Auroraは前述のコンボを除いては足し算アグロであり、《征服の命令》を撃っても《電磁回転》2枚回収で防御されて大損するリスクもあります。
ここは表現価値的に最大となる腕起動+武器で攻撃するのが無難でしょう。

④対Viserai

表現価値12点(攻撃6点、防御6点、格納庫0点)

Viseraiは乗算アグロなので、相手の手札枚数を削ることが重要です。また適宜「しゃがんで」※くるので、ひたすら守るというプランは成立しません
なるべく妨害効果のある攻撃アクションを撃ちながらダメージレースするのがプランとなります。
この手札であれば、《征服の命令》でブロックを強要して相手の手札を削りましょう。

なお相手がしゃがんできて防御に1枚しか出せない場合は、《轟く暗黒のヴェール》を格納庫に残すのが良いです。追放0枚の段階で《王位》を置くのは塩漬けになるリスクが大きすぎます。

※しゃがむ
相手へ攻撃をほとんど行わず、次ターンに向けた準備をすること。相手が防御で使いたいカードを使わせず、非効率な動きを強いることができる。Viseraiはオーラやルーン印生成カードが多く、非常にしゃがみやすいヒーロー。

⑤対Florian、Nuu(相手の攻撃が6点以上のとき)

表現価値12点(攻撃3点、防御6点、格納庫3点)

対Florianと対Nuuは、デッキリソースの温存がテーマとなります。
お互い防御が固くなかなかライフが減らないので、最終的な決着は《発芽》を大きく撃って大量にルーン印を生成し、次ターンに《王位》を撃つことでfatigue前にライフを削り切る形が多いです。

《発芽》から《王位》の最終形を目指して、序盤の《王位》はデッキに戻して2週目に備えましょう。
また、表現価値よりもカード1枚あたりのバリューが大事になってくるので、格納庫にカードを残すなら3点の《轟く暗黒のヴェール》よりは6点の《征服の命令》の方が良いです。

なおこの手札には直接関係ありませんが、2週目が視野に入るマッチアップでは《発芽》は防御に出さずピッチに回すようにしましょう。青4枚のスタッキングもできると理想です。

デッキ2週目で強すぎるカード

⑥対Florian、Nuu(相手の攻撃が6点未満のとき)

表現価値10点(攻撃7点、防御3点、格納庫0点)

対FlorianやNuuでは、相手の攻撃が激しくないターンも多いでしょう。1枚しか防御に出せないシチュエーションも考えられます。
そのような場合でも考え方は同じで、2週目に備えて《王位》をデッキに戻しながら1枚あたり6点の《征服の命令》を撃ちこみましょう。

表現価値的には《王位》を防御や格納庫に回した方が得ですが、プランを考えるとこの損は受け入れるべきです。

⑦対Enigma(強力な結界オーラを置かれた時)

表現価値10点(攻撃10点、防御0点、格納庫0点)

対Enigmaは、相手のオーラを対処し続けて高水準のライフを維持したままFlorianの能力達成まで粘るのがプランとなります。序盤はどうしても不利な展開になりますが、Florianの能力達成までたどり着けば、トークン2倍の出力でオーラの対処に苦労しなくなり、バリュー差で逆転していくことができます。

オーラを置かれたターンはきっちり対処しないと差が広がる一方なので、表現価値的には損でも手札で出せる最大打点を出力しましょう。

なお《霊気の盾》1枚や続行の無い《欠ける復讐》程度であれば、無理して対処しなくて良いです。《満ちる悪霊》くらい強いオーラには対処した方が良いです。

⑧対Enigma(強力な結界オーラを置かれていない時)

表現価値13点(攻撃4点、防御6点、格納庫3点)

オーラを置かれていなければ攻める必要がないので、表現価値的に最大になるプレイをしつつ、Florianの能力達成まで耐えられるよう防御的に振舞いましょう。
格納庫には、「続行」を持つ《轟く暗黒のヴェール》を伏せておきます。のちのオーラを割るのに役立ちます。

どうやってプランを持つのか


以上のようにマッチアップごとにプランを持っておけば、選択肢の多い手札をもらっても自信をもってプレイすることができます。

とはいえ、最初から正しいプランを持つことはできません。極論を言えば、対人ゲームなので「正解」のプランは存在すらしません。記事で書いたFlorianのプランも、正しいとは限りません。

ですが、「どのくらい正しいかわからないプラン」なら、だれでも持つことができます。
なんらかのプランを持って対戦し、間違っていたと感じた点を適宜修正していけば良いのです。
仮に全く見当がつかない場合でも、たとえば「攻撃を優先するか防御を優先するか、デッキのfatigueを気にするか気にしないか」程度で良いので、とりあえずプランを決めてからプレイしましょう。

プランは正しさよりも、持っておくことが大事

プランは考えるだけなら頭一つでできます。忙しい社会人プレイヤーの多いFlesh and Bloodですが、昼休みや移動時間などを活用してプランを考えておくのがオススメです。実際のプレイは仮説検証の場として使うイメージです。

応用編として、相手のプランと対話してゲーム中にプランをアジャストしていくということがあります。
古くはDromai vs ガーディアン戦で顕著で、
Dromai側がファティーグに備えてプレイしていると、
 ガーディアン側がファティーグプランでくればDromaiが勝ち、
 ライフレースプランでくればガーディアンが勝ちました。
逆にDromai側がライフレース優先でプレイしていると、
 ガーディアン側がファティーグプランでくればガーディアンが勝ち、
 ライフレースプランでくればDromaiが勝つといった具合でした。
お互いのプランの噛み合い次第で勝敗が変わるので、相手の動きに応じてゲーム中に何度もプランを変えてアジャストしてくのが重要なマッチアップでした。
当初プランでは勝てないと悟ったなら、切り替えていくことも時には必要です。


おわりに

ちょっと異色の記事でしたが、いかがでしたでしょうか。
書いている途中で当たり前のことを言ってるだけかもしれないと不安になってきましたが、それでも文章として残すことが誰かの役に立てば嬉しいです。
ちなみにFlorianのことを詳しく知りたい場合は、最初に参考で載せたデッキリストが自分の最新版のリストで、サイドインアウトも付けているので、見てみてください。

最後に宣伝です。BH東京と世界選手権でスポンサードいただいたFableさんの実店舗が秋葉原に本日(11/16)正式オープンします。立地が良くプレイスペースも広いのに、値段も安くてすごいです。

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よろしくお願いします。

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