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事業再生のこと−24

企業の倒産件数が再び増加に転じている。
もう少し我慢すればきっと景気が良くなる、と考えた企業経営者を裏切り、
2023年の景気の先行きは怪しい。

●マーケットが変わる、マーケットを変える

これまで事業を拡張できたのは以前のマーケットから別のマーケットに変更したからだった。おそらく同じマーケットにしがみついたままだったら事業は失敗し、私たちは路頭に迷っただろう。
今はあの頃とは様相が違う。
あの頃はBtoCの業態からBtoBの業態に変えることでマーケットそのものを大きくして広範囲の商圏から収入を得られる体質に変えた。
しかし、今回はマーケットの変容に戸惑っているのは私たちよりも、マーケットを持っている私たちが契約している相手方の企業の方である。
マーケットがこれほど短期間に何度も状況が変わることをほとんどの企業は経験していない。大きな企業であればあるほど組織やマーケットのシステムを簡単には変えることはできない。

最初短期戦であると思われた社会情勢の変化は途中から長期戦であることが分かり、さらに別の異変を含んでこれもまた長期戦となった。
一つはこれまで放置していても顧客の方が用意したマーケットに来てくれていたのが、こちらから顧客のもとへ出てゆかなければならなくなった。顧客は居場所から外へと出てゆかなくなった。顧客が出歩く場所はごく限定された場所だけになっている。

そしてもう一つはこれまで充分に利益を得ることができた商材の原価率が跳ね上がり、そのままでは利益を得ることが難しくなった。原価率を変えることが出来ないのなら利益を得るためには販売価格を上げるしかない。

これまでマーケットだと思って出店していた場所はもはやマーケットではなくなりつつある。顧客にとって必要なのは
「出来る限り無駄な出費を抑え、効率よく動くこと」
私たちは顧客の要望を満たす新たなマーケットを見つけなくてはならない。

●新しいマーケットの創出

顧客が「出来る限り無駄な出費を抑え、効率よく動くこと」の出来るマーケットはどこなのだろうか?
これまでもそれに近い顧客の要求はあった。
ただし、その時は顧客の目的は「時間の短縮」であった。
つまり、夫婦で朝から晩まで働いていて主婦が料理をする時間や家事をする時間を短縮する必要があった。
そして生まれた新しいマーケットが「コンビニエンス・ストア」であり「インスタント食品」などだった。ファストフードのマクドナルドミスタードーナッツが急速に成長し、あらゆる市街地に出現した。
しかし、これらの存在には虚しさもついてまわった。
美味しくない料理、安らぎのない無味乾燥な食卓。
そこでサードプレイスという家庭と仕事場の中間にある安らぎの場所を提供したのがスターバックスだった。
インスタント食品は冷凍食品に姿を変え、公設市場はショッピングモールになり、そしてコストコやイケアのような倉庫型店舗に姿を変えた。
果たして次に出現するマーケットはどんな姿をしているのだろう。

●次のマーケットを予測する

資本主義である限りはマーケットは存在する。
次に現れるマーケットの条件を考えてみる。
「目的購買物が集約されている」
「顧客の滞留時間は比較的短い」
「わざわざ、マーケットに移動する労力を必要としない」
「マーケットで購買物を選んで楽しむ時間を節約し、あらかじめ選んでおいてから購買する」
「安全であることを条件に滞留し、購買時間にかける楽しみを付加価値を吟味することに置き換える」
「短時間に贅沢さを味わえる」
「味気ない生活には戻りたくない」
「生活拠点は郊外に移り、でも一部の生活習慣は都市型のまま残る」
「家庭での時間的な余裕が戻り、調理する時間と欲求も戻る」
「家の中で家族で楽しむ時間が増える」
「技術に関係なく簡単な調理で美味しく出来ることを望む」

様々な状況が考えられるが、今更以前のようなコンビニエンスな生活に戻ることを望まず、家族で有意義な生活を取り戻すことを望むのではないだろうか?
ただし、経済的に贅沢をする余裕はないので「贅沢な時間」というのはお金をかけずに「充実感のある時間」ということになるだろう。
ただし、本格的に技術を磨かなくても家族誰もが楽しめる方法を提供する必要がある。
そしてもう一つのポイントはこれまで長い労働時間や偏食の生活を強いられてきた人たちは「健康志向」がこれまで以上に強くなっているだろう。
これらの中に次のマーケットのヒントが隠されているに違いない。

●マーケットの可能性を探り、顧客とともに自ら開拓する

いくつかの条件を考えながら次のマーケットに相応しい場所、商品、販売方法、サービスの仕方を考える。
まずは、次のマーケットイメージを顧客に認識してもらう必要がある。
そして、そのために必要なのが「体験」になる。
顧客に提供する「マーケットに相応しい商品の良さ」をどうやって知っていただくかには「体験」が最も最適な方法だと考える。

また顧客の「体験」に対して満足度を得ていることを実感することで、私たちもマーケットの方向性が間違っていないことを確信することが出来るだろう。
数多くの側面から顧客満足度を上げる体験コンテンツを用意する必要がある。
これからは自然発生的なマーケットを探したり、マーケットの場を作るのではなく、顧客とともにマーケットを作り上げてゆく時代になったのだと考える。

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