花は咲く Flowers bloom in your garden.ⅩⅥ
自分の能力なんて信じちゃいなかった。
でも相手を威圧するような大きな声で「これで良いんだよ」って言うと
誰も反対する者はいなかった。
私はこの小さな村の頂上から見下ろしながら有頂天だった。
●砂の城
自分の意見は間違っちゃいない。
もしも間違っているとしたら、それは周りにいるみんなの方だ。
私の力と才能があれば失敗なんかしないと信じていた。
3年が経ち、それでも何かにしがみつくように自分の意見を押し通した。
引き返せない。
意地と虚構が私を包んでいた。
バカな自分を認められない愚かな時間が過ぎてゆく。
助けて、と、その一言が言い出せないで一人膝を抱えて泣いた。
自分の物差ししか持たない私には人の優しさを見分ける力さえなかった。
私の周りの人たちはいつの間にかいなくなった。
私が築き上げたはずの城はただの幻だった。
足元しか見ないうちに波に襲われて崩れていった。
自分にはなんの力もない。
そのことに気づくのが遅過ぎた。
遠くから近づいてくる人影があった。
かつて一緒に戦っていた仲間。
私は怯えた顔をしていたに違いない。
彼のことを見下してバカにしていた。
私のことを憎んでいるに違いない。今はきっとこの醜態を見て嘲笑っている。
彼が何度も忠告するのを無視し、軽蔑していた。
私が間違っているなんてありえない。
それでも彼は私に声をかけ続けた。
「ほら、まだ何もしていないじゃないか」
何を言ってるんだろう?
毎日こんなに忙しくて、動き回っているのに。
あれが自分に対する言い訳だったことを彼は見透かしていた。
何もしていないことを忘れるために「している」と言い放った。
動き回っているはずの私の手足はただ空を切っているだけだった。
「何もしていないのなら、すればいい」
膝を抱えてメソメソしている私に彼は声をかけ続けた。
動けなくなっている私に彼は手を差し伸べた。
「何もしていないのなら、出来ることはいくらでもある」
彼も沢山のことを失敗してきたことを知っている。
「私だったら失敗なんてしないのに」
心の中で馬鹿にしていた。
でも彼はその失敗を自分の糧にして前に進み続けていた。
彼が私の肩に手をかけてくれた時に泣きながら聞いた。
「私に何か出来るのかな?」
「ここから先は君だけの道だね。明日の自分を信じるのなら踏み出すしかない」
あれから私は暗闇を歩き始めた。
最初の一歩は重くて苦しくて辛かった。
暗闇に手を伸ばすと指先に触れるものがあった。
死に物狂いでそれにしがみつくと、それは私の腕を掴んで引っ張ってゆく。
暗闇に光が灯り、ひとりぼっちで歩いていたその道に誰かの影が見えた。
私の腕を掴んでいた影は彼の姿になって共に歩き始めた。
周りにいくつもの顔があった。
いつの間にか私は一人ではなかった。
お互いの物差しで語り合い、分かち合える仲間となった。
膝を抱えて泣いていた私は
今は鮮やかな花の雫のように涙が溢れて空を見上げている。