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次の一手-8

人が成長するときのように、企業も成長するときに「成長痛」を経験する。
どのように成長するかによって痛みの出方は違うが、
確かに企業にも成長痛は存在する。

●仕入れの焦げつき

多くの企業は製品を生み出し、それを販売することによって利益を確保している。
「黒字倒産」という言葉を聞いたことがないだろうか?
事業自体は「黒字」なのに倒産してしまう。
例えば毎年売り上げが30%ずつ伸びている企業があるとする。
1年目は100万円の売上。
2年目は130万円の売上。
3年目は169万円。
4年目は220万円。
5年目は286万円。
5年で最初の1年目の売上の約三倍の売上になる。
一見とても良いことのように見えるけれど、
5年で仕入額は三倍に増えている事になる。
さらに以前の三倍の売上にするためには人員は当然増えているはず。
もしも人員も三倍に増えているとすると人件費も三倍。
もちろん光熱費などのランニングコストも増えているはず。

その5年間で経費が三倍に増えることを想定していたなら、計画的に融資を受けて仕入金が焦げ付かないようにすることは出来るが、
実際の仕入れ後、支払日が近づいて慌てて融資の話をしても支払いには間に合わない。返済も滞り工場は差し押さえられ、実情は成長していて黒字にも関わらず倒産に追い込まれる。
常に数字の推移に目を光らせていつ頃に焦付きを起こすかをあらかじめ予測をして事前に金融機関との交渉をしておくべきだろう。
小さな事業者は自分で身を守る方法を知っておかなくては何度も危機に陥る。
特に財務に関しては面倒臭くて、苦手だから税理士任せの人も多いかも知れないが少しずつでも勉強をして竿墓所表の見方ぐらいは覚えておくべきだろう。

●利益を厚くする工夫

利益を圧迫する要因は「仕入れの増大」「無駄な在庫」「生産能力の低下」「人件費の増大」など。
まずは、「利益が確実に上がる適正な生産量」を算出しなければならない。
損益分岐点がわかればどのぐらいの売り上げが上がれば利益が出るのかは分かる。次の仕入れ、人件費、ランニングコストなどを差し引いても利益が残り、かつ、ストックに回せるだけの売上を確保することが必要で、その月に仕入れた材料を使い切り、それを加工するのに必要な最低限の人件費を算出することが出来れば、利益を上げる体質に変わってゆく。
例えば「生産性」について考えるなら、単純に人数を増やすことで生産力は上がる。しかし、その量を生産するのに必要な人数が10人なのか5人なのかで生産性はずいぶん違う。
もちろん同じ量を半分の人件費で作れた方が生産性は高いと言える。
少ない人数で高い生産力を維持するためには何が必要なのだろうか?

一つは人に代わって機械化を進める方法。機械の方が同質のものを短時間で大量に製造できる。ただし、オートメーション化には大きな費用がかかる。
機械を設置する場所の確保、機械の価格、メンテナンスの価格、電力などのランニングコスト。それでも同じ量を手仕事で生産するには多くの人件費がかかる。

二つ目は生産担当者の熟練度の問題。
長く働いて熟練した加工員は慣れない加工員よりも加工の速度も精度も高くなる。少ない人数で手仕事によって生産性を上げるには各加工員の熟練度を上げて短時間で以前と同じ生産性を確保すること。

これら二つの方法のどちらを取るかはその事業体の規模や資金調達の方法による。

生産工場を設置できる場所の確保と機械を導入できる企業体力があるのに越したことはないが、そうでない場合は二つ目の方法を使うことになるだろう。

●人材育成と企業の成長

人材の確保は多くの企業で難しい問題だろう。
現在は多くの求人アプリが出ているが、各アプリ(サイト)によって応募する人材の傾向がある。
最初から熟練している人材というのは給与などの待遇で就業先を選んでいることが多く幾つもの職場を渡り歩きながらさらに熟練度を上げていく。こういう人材は派遣登録している場合も多い。
学生アルバイトは修練度が低く、最初から手取り足取り教えてゆかなくてはならない。個人差が大きく短期間で覚えられる人、覚えるのに時間がかかる人様々であるが、ベテランの従業員がついて教えなくてはならず、一時的に生産性は下がることを覚悟しなくてはならない。
そして学生アルバイトは仕事を覚えた頃には卒業したり、環境が変わることで離職することも多い。

社会人での求人に反応する人は未経験であっても周囲との協調性に優れている人が多いが、これもどういう経歴で就業してきたかによる。
周囲に目配せでき、熟練度の高い従業員は貴重で、正しく評価をし、待遇に関しても評価にあった待遇で接しなくてはならない。
学生にしろ社会人にしろ3ヶ月の試用期間をきっちりと決めて、その間に正しい評価をするべきだろう。評価があまりに情に流されないことも大事だ。ただし協調性は小さな職場では大切だと言える。
あとは新卒採用の正社員雇用でいわゆる生え抜きで育てること。
最終的にはどんな企業でもこれは大切であり、そのための新人教育の体制やトレーニングのシステム、メンタル面でのフォローは小さな事業体の時から作り上げてゆくべきだろう。
正社員雇用は小さな事業体では大きな投資であると言える。
まずは事業体としての体力を作るための期間。
続いて全体のシステムを作ってゆく期間。
大きく拡大する体制を作る期間。

これらを経て企業を成長させることが大切だろう。

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