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革のおはなし-14
革を接着する方法は幾つかある。
現在ではサイビノールやゴムのりなど様々な接着剤が市販されている。
基本的には酢酸ビニル樹脂を主成分としたいわゆる「木工用ボンド系」のものと、天然ゴムにベンゼン、トルエン、アセトンなどの揮発性成分を含んだ「ゴムのり系」に分かれます。
「木工用ボンド系」とは乱暴な区分けですが、以前の職人さんたちは実際に木工用ボンドを水で薄めて使っていたこともあるようです。
酢酸ビニル樹脂は乾くと堅牢でほぼ半永久的に接着することが出来ます。欠点は乾くまでに時間が必要であるということ。ノリの中の水分が蒸発してノリが固まるので、水分が蒸発する時間を要します。乾き切っていない状態の酢酸ビニル樹脂は接着力が弱く容易に剥がれることがあります。
ゴムのり系の接着剤は揮発性の高いベンゼン、トルエン、アセトンを使っているため乾燥するのが早く、乾燥してからも粘性が高いので接着することが出来ます。ただし、ノリの劣化が起こりやすく、特にノリを溶融させるオイル系の液体を浸潤させた革などに使うと短期間でノリが溶けて剥がれてしまうことがあります。
これらの特性から酢酸ビニル樹脂のノリは耐久性が必要な長期間接着を保持する部分に多く使われ、ゴムのり系の接着剤は短時間で加工が必要で「仮止め剤」として使われることが多いようです。
ゴムのり系の接着剤を使った場合はノリだけでは形状を保持できないので、縫製加工やカシメなどによる接続が必要になります。
革は木材や布との接着が相性が良く、併用して接着することが可能になります。例えば家具の一部に革を張り込んだり、衣類の一部に革を張り込んだ作品なども見られます。
いずれにせよ、革と革を接合する最も有効な方法は「縫製」ではないかと考えます。
縫製には手縫いとミシン縫がありますが、一般的には手縫いの方が頑強に仕上がると言われています。
その理由としては「手縫い」の場合は上糸(革の表面に見えている糸)と下糸(革の裏側に見えている糸)が交互に入れ替わることで糸と糸が絡み合い強度を増すことから言われることが多いようです。事実、手縫いの縫製では糸が途中で切断されてもその周囲のみが解けるだけで、縫製全体が簡単に解けることはありません。
それに比べ「ミシン縫製」の場合は上糸と下糸が別個の糸で、糸同士が支え合ったような構造のため、どちらかの糸が切断されると縫製部分が一気に解けてしまうことがあります。
手縫いは縫製をする人の技術で美しさが左右されます。
手縫いの場合は縫製する革に穴を開けてそこに針を通すのですが、この「穴」と言っている部分は実は斜めに開いた「切り込み」になっています。
手縫い縫製の穴を開ける時に一般的には「菱目打ち」という櫛状の刃物を使いますが、この菱目打ちの刃先が菱形の両刃になっているため「菱目」と呼んでいます。
それぞれの刃が同じ方向の斜めに向いているため、革に等間隔で一定方向に傾いた切り込みが入るわけです。
この斜めの切り込みに上糸と下糸を入れるときに片方は上側に片方を下側に入れることで常に同じ傾きの縫い目を作ることができると同時に、切り込みの中で上糸と下糸がクロスして繊維が絡まり合うことで強度を増すことが出来ます。
実に論理的で合理性の高い縫製方法を先人たちは生み出していたわけです。
縫い方はこの理論に沿っていればどのような方法でも構わないと考えます。
ですから職人や作者によって技法は違いますが、たまに理論を理解せずに縫っている場合は強度に差が出てしまうのではないかと考えます。