革のおはなし-11
日本の革文化は諸外国ほど深くはない。
日本人が豚肉や牛肉を食べはじめたのは明治維新の頃。もちろん獣肉を食べはじめたのはもっと昔からだが、日本はどちらかというと魚食文化で稲作文化の国。
主食は穀物が多く、魚が手に入りにくい山間部でのみ鹿や猪などの獣肉を食べていた。家畜文化は元々羊や山羊を家畜にしていたモンゴルなどのアジアや野生馬が豊富にいたヨーロッパやアメリカ大陸の狩猟民族の文化で、東アジアで豊富な穀物を育てていた地方ではモンゴルなどの遊牧民をのぞいて家畜の文化はそれほど深くは育たなかった。
金具の文化は少し違って、多くの場合朝鮮半島などから様々な技術を持った職人たちを時の権力者が招聘して、その技術を学び取った。
元々、豊富な水資源と森に覆われていた日本では多く使われていたのは木工で、それを行うための道具や材木を加工するときの寸法を合理的に行うために導入された。世界的にみて大きさを表す単位は3進法が多く使われているが、日本の場合は尺寸法が基本となっている。また部材の名称を呼ぶのにも「木材」を呼ぶのに使っていた言葉が流用されていることが多い。
例えば寸法で言えば、一間は180cm、一尺は30cm、一寸は3cm。全て3の倍数が使われている。また革も木材も切った面を「コグチ」とか「コバと」呼び、裏面のことを「トコ」と呼ぶのは日本の部材名称や寸法単位を踏襲している。
元々海外から入ってきた技術を日本に定着させるために、職人同士の共通言語である単位や名称をそのまま使ったのではないかと考えられる。
金具の内寸や太さも同じく3の倍数を使うのも同じ理由だと思われる。
世界中で見られる進法は主に2進法、3進法、10進法、12進法などが有名だが、12新方も3進法の一種なので、ほぼ2進法と3進法でほとんどの法則は置き換えることができるのではないだろうか?
家を建てるときも、金具を作るときも、革製品を作るときも、日本ではほとんど3新法が当てはまる。例えば異質な材料を組み合わせたり、既存の材料を使って組み立てる時も同じ法則で作られた部材であれば組み合わせやすいと言える。
どうも世界中の職人のほとんどは3進法が好きらしい。
もしも7進法なんかで作られると、どうにも材料を組み合わせにくい。
家庭にあるものをどれでも良いから片っぱしから測ってみると「ああ、そうだったのか!」と気づくに違いない。
さあ、型紙が完成して、金具に合わせたパーツが揃ったら、いよいよ革の切り出しに入る。
ここで一般の方があまり目にしない道具「革包丁」の登場となる。
次はこのあまり見かけない道具のルーツについて推測してみることにしよう。