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革のおはなし-13

この「革のおはなし」を書き始めた時、別に技術論を書くつもりではなかった。

「革」の世界は本当に様々な物語が含まれている。

人の差別、職人の気持ち、成功秘話、敗北の歴史、地域のこと、技術の歴史etc.

楽しい話だけではなく、辛い話や、悲しい話、悔しい気持ち、嬉しい気持ち…。

それを感情を込めてお話しするのはちょっと違う気がする。

そういうことを全然知らずに生きてきたわけじゃなく、どこかで感じながら生きてきたからそう思うのかもしれない。

私の父は「職人」だった。きっと環境は恵まれていたと思う。

でも父と仲の良かった遠戚のおじさんも職人だったけど、環境は決して恵まれてはいなかった。

彼の名前は「捨吉」。この名前の意味を知る人が何人いるだろうか?

彼がいた村には同じ名前の他人が三人いた。

彼も僕の父ももう他界していないけれど、コックを経て内装屋になった父と大工だったおじさん、そして同じ村の出身だった祖母と実家のあるあたりがまだ「村」と呼ばれていた時代に私たちの家族が辿った人生と運命を思うと簡単には話ができない。

子供の頃から職人たちに囲まれて育った。

楽しい思い出しかないけれど、その中で厳しさや辛さも感じ取っていた。

それはもう終わった話ではなくて、今も続いている話。

「職人」が「職人のまま」でいられる時代ではなくなった。

技術の上にさらに知恵や考える力が必要になる。

たくさんの様々な職人の技術を伝えるだけではなく、これからもそれを残し、次の時代に伝えて、人に優しい新しい時代を作らなきゃならない。

なんか、そんなことを考えさせる出来事が次から次に起こり始めている。

自分にどんなことが出来るのだろう?

毎日考え続けよう。

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