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【健康への1歩】水の重要性 -論文で見る水のメリット-

【はじめに】

 私たちの体が約60~70%が水分で構成されており、生きていくうえで水分の補給は欠かせません。特に、毎日適切な量の水分を摂取することは健康維持にとって極めて重要です。今回は、水分摂取の意義や健康への影響について、いくつかの研究を参考にしながら、もう少し詳しくお伝えしたいと思います。


【成人の体と水分摂取】

 成人の体内の約60~70%を水分が占めており、脳、血液は約80%、骨は約20%が血液で構成されています。この割合を知ると、水分不足により脱水や健康トラブルを引き起こすことがよく分かりますね。脱水状態になると、倦怠感や頭痛、集中力の低下などの不調が起こりやすくなります。数字で見ると、水を5%失うと脱水症状や熱中症、10%失うと筋肉の痙攣や循環不全、20%失うと死に至ると言われています。普段より喉が渇くと感じるときには、すでに軽度の脱水状態に陥っている可能性があるといわれています。そのため、「喉が渇く前に飲む」意識が大切です。

【体内の水のはたらき】

 体内での水のはたらきは主に以下のものがあります。

  • 細胞の構成:先ほども述べたように体の多くは水でできているため、水はすべての細胞の基本的な構成要素です。細胞内外の環境を適切に保ち、細胞の形状や機能の維持に欠かせません。

  • 栄養素等の運搬:血液の大部分は水でできており、栄養素、酸素、ホルモンなどの重要な物質を体中に運ぶ役割を担っています。これにより、各組織や臓器が正常に機能するためのエネルギーと資源が供給されます。

  • 体温調節:水は体温調節にも不可欠です。汗をかくことで水が蒸発し、体から熱を奪うことにより、体温を下げる効果があります。この機能は特に暑い環境や運動時に重要です。

  • 老廃物の排出:腎臓は水を利用して血液中の老廃物を濾過し、尿として体外へ排出します。これにより、体内の有害物質や余分なミネラルが効率よく除去され、体内環境が維持されます。

  • 潤滑作用と衝撃吸収:関節内の滑液や眼球の中の液体など、体内の各種潤滑剤は水が主成分となっています。これにより、関節の摩擦が減少し、動きがスムーズになったり、外部からの衝撃を和らげたりする効果があります。

【1日の摂取目安量はどのくらい?】

 よく「1日あたりコップ8杯(約1.5〜2リットル)」といわれますが、これはあくまで一般的な目安で、体格や年齢、活動量、生活習慣などによって必要量は異なります。運動をした日や汗をかきやすい夏場はより多くの水分が必要になりますし、逆に寒い季節や運動をあまりしない日には少し少なめでも大丈夫な場合もあります。日本人の栄養摂取基準や医療機関のガイドラインなどでは、体重1kgあたり30〜40ml程度を目安にする方法も紹介されています。食べ物からの摂取量を除いて、このくらいの水分を摂取できると良いでしょう。

【こまめな補給の重要性】

 一気にたくさん飲むのではなく、こまめに補給することが大切です。朝起きたときにコップ1杯、食事の前後にコップ1杯、そして就寝前にコップ1杯など、ライフスタイルに合わせて少しずつ摂るようにしてみましょう。運動時や入浴前後、夏場の暑い環境下では特に注意が必要です。あらかじめ定期的に水を口に含むように意識すると、脱水状態を防ぎやすくなります。

【子供の水分不足】

 子供は大人よりも水分に対して敏感ですが、日常的に十分な摂取量を満たせていないケースも少なくありません。世界32の観察研究をまとめた報告では、60%以上の子供が推奨水分摂取量を満たしておらず、脱水状態にある可能性が指摘されています(1)。子供の健康や成長を守るためにも、小まめな水分補給の習慣を身につけさせることが大切です。

【水分と心血管疾患のリスク】

 適切な水分摂取は、心血管疾患リスクの低減にもつながる可能性があります。あるメタアナリシスでは、適切な量の水分摂取が心血管疾患による死亡リスク低減と関連があると示唆されています(2)。また、水分摂取が心拍数、血圧、末梢血管抵抗に与える影響を評価したメタアナリシスもあり、水分摂取により心拍数が低下し、自律神経機能が改善する可能性が示唆されています(3)。
 日頃から意識して水分を補うことで、体内の循環をスムーズに保ち、健康管理に役立つ可能性があります。

【水分摂取がもたらす意外なメリット】

 水分摂取といえば、脱水の防止や体調管理といった面が注目されがちですが、ほかにも思わぬメリットがあります。たとえば、若い成人を対象とした研究で、水分摂取量を増やすことで気分や認知機能が改善する可能性が示されました(4)
 また、血圧をはじめとした循環器系の指標に好ましい変化がみられたという報告もあります(5)。さらに、腎機能や炎症マーカーへの良い影響を示唆する研究結果もあるなど(水分摂取量を増やすこと自体が顕著に腎機能を改善するわけではありませんが(6))、多角的な健康効果が期待されています。

【まとめ】

 水分は体の大部分を占めており、健康維持や予防医学の観点からも欠かせない存在です。1日1.5〜2リットルを目安にこまめに摂ることを意識しながら、季節や体調、運動量に合わせて調整すると良いでしょう。大人だけでなく、子供や高齢者、また持病がある方でも、適度に水分を摂ることが推奨されています。ただし、一気に大量の水分を摂取することや、過剰に制限しすぎることはかえって健康を損なうおそれもあるため注意が必要です。日々の生活のなかで上手に水分を補給し、毎日をより快適に、健康的に過ごすためのヒントにしてみてください。

【参考文献】

(1)子供の水分摂取量と水分補給状態 - コンセンサス
(2)総水量と飲料水摂取量、および全死因および心血管死亡のリスク:前向きコホート研究の系統的レビューと用量反応メタアナリシス-PubMed
(3)WATER INTAKE EFFECT ON AUTONOMIC NERVOUS SYSTEM: A SYSTEMATIC REVIEW AND META-ANALYSIS - Consensus
(4)https://consensus.app/papers/the-influence-of-fluid-intake-behavior-on-cognition-and-he-zhang/0588dd042d2a5a8e9138dc81e9a2656b/ 
(5)https://consensus.app/papers/effect-of-increased-daily-water-intake-and-hydration-on-nakamura-watanabe/8219c4a92fd857458db8653d424a6fee/ 
(6)https://consensus.app/papers/effect-of-coaching-to-increase-water-intake-on-kidney-clark-sontrop/27199875cde4534686ff650267347ad1/ 


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