リケジョを育てるも家庭、潰すも家庭 〜リケジョな子育て Vol.4〜
noteマガジン『東工大飛び級ママの「リケジョな子育て」』/第4号です。
このnoteマガジンでは、発行人・福所しのぶが日経xwoman Terraceブログに投稿したオピニオンのうち、「子育て・教育」テーマのものをピックアップしてお届けしています。
今回は2022年7月25日の同名タイトルの投稿から、一部再編集してお届けします。
元の投稿は、日経xwomanに掲載された『IT界の男女差 根っこには「女子は数学が苦手」の偏見』という記事(下記リンク)を受けて、感じたことや気づきをシェアさせていただいたものです。https://woman.nikkei.com/atcl/column/21/060800084/071300006/?n_cid=nbpnxw_sied_pblog_sansyo
※以下の本文中、「参照記事」とあるのは上記リンクの記事を指します。
「女性は理系に向かない?!」という言葉にぴくっと反応して、筆をとっております。
”高校で理転して博士号までとりましたが、なにか?”(なーんてね…笑)
さて、今回の参照記事は、IT業界での女性エンジニア不足について。
IT関連のサービスやプロダクツを作る場合、つくり手側にジェンダーの偏りがあると、意図したわけでなくても性差別が生まれてしまう恐れがある。そのリスク回避のためには、ダイバーシティーを確保することが肝心ということなのですが…。
実際には女性エンジニアが不足していて、ダイバーシティの確保の段階からして壁が生じているというのです。
そして、ここでいう女性エンジニア不足は、管理職登用のように「今まで活用してこなかった」女性人材を活用しようという話では必ずしもないようです。
なんと、そもそも理系の女性が少ないのがネックだ、というのです。
OECD(経済協力開発機構)の2021年のデータでは、大学等の学生のうち理系の女性の割合が調査されており、自然科学・数学・統計学の分野で加盟国平均52%のところ日本は27%、工学・製造・建築の分野で加盟国平均26%のところ日本は16%だそうです。
では日本人女性は理系科目が苦手かというと、数学的リテラシーはOECD加盟国で2位、科学的リテラシーは3位と、苦手どころか理数系の能力は世界的にみても高いのです。これはけっこう驚き。
これらのデータから、日本は理数系の能力は高いにもかかわらず、理系を選択する女性が少ない国、ということが見えてきます。
参照記事では、IT業界に女性が少ない理由のひとつとして挙げられていたのが、「女性は理系に向かないというアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」。親や社会のバイアスから、女子生徒が理系への苦手意識を持ってしまうことがあるのではないか、ということなのです。
これはなるほど、と思いました。というのは、私自身が理系の道に突き進めた裏には、進路選択の際に社会や親からそういったバイアスを感じたことがなかったことに思い当たったからです。
まず、父が研究者だったことなど、小さい頃から自然科学に親しむ環境が整っていたことも要因の一つかもしれません。ただ、必ずしも理系科目に興味を持つ環境を提供すれば足りる、ということでもないように思います。
というのは、中学時代までになりたかった職業は、英語を使う仕事、学校の先生、薬剤師など理系・文系ミックスでした。理系に親しむ環境は、子供の興味を引き出す機会を提供するというアクションの一つにすぎない、という気がしています。
おそらく、もっと大事なのは、むしろ子供が進路を決めようとするとき、それを後押しできるか、ということなのだろうと思います。
例えば、大学の教授に博士課程まで進学したいことを伝えたときは「ご両親は何と言っているの?」ということをとても気にされていたことを思い出します。本人は進学を希望していて教授も能力を見込んで後押ししたところ、その学生の親が「先生!大学院なんて進学したら、就職や結婚も、いろいろ難しくなるんじゃないですか?!」と怒鳴り込んできたこともあるから、というのです。
私の場合は、「研究者を目指すなら博士号をとった方がいい」と、むしろ父が先に背中を押してくれていたので、これには教授もびっくりされていました。
そして、もう一つ思うのは、理系というのは若い頃の学びどきを逃すと、その素養を身につけるのが難しい傾向にある、ということです。
法律やマネジメント系の事柄であれば、仕事の経験があることで学びが深まっていく部分もあり、学び直し、リカレント教育にも向いているように思います。(実際、社会人向けの大学院にはビジネス系・マネジメント系が人気の印象です)
一方で、理系科目というのは、小学校の算数に始まって脈々と積み上げていくものですし、さらには実験などの研究的要素が入ってくると、仕事のかたわら夜学で学ぼうというのは限界があるのも事実です。
実際、大学院時代の生活がどんなだったかというと、ときには徹夜もいとわず1日の大半を研究室で実験したり、論文で情報収集したり…という生活。それを5年間。
つまり、理系→文系の順にスキルを獲得する道の場合は比較的門戸が開かれている一方、文系→理系の順にスキルを獲得する道は、時間的、体力的、経済的に高い壁を乗り越える必要があるわけです。
理系の学びに関していえば、高校での進路選択で興味をもったならば、そこが一番の学びどき。そのタイミングで「リケジョの芽」を摘まないことが肝要ではないかと。
紹介記事のように産業界からも女性エンジニアを求める声も上がっているとなれば、あとは親の関わり方次第、といえるかもしれません。親の価値観もアップデートしていくときかもしれませんね。
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