「もっともっと」も苦しいけれど、シフトダウンも楽じゃない
ひさびさのnote投稿です。
今回は最近読んで印象に残っている『静かな働き方 〜 「ほどよい」仕事で自分時間を取り戻す』(シモーヌ・ストルゾフ・著、日経BP刊)をご紹介したいと思い、筆をとりました。
どんな方にお勧めしたいかというと…
意識的にせよ無意識的にせよステータスや他者の評価を求めてバリバリと仕事をしてきたものの、なぜか幸福感や充実感が感じられなくなってきたり、体力的・精神的に限界を感じていたり、どこからか「このままでいいのか?」という思いが湧き上がっている方。
(拙著・『小さなルーティン』(https://amzn.asia/d/1gzkSDn)の診断でのタイプでいえば、メタ認知力は高いが、それに対して自己肯定感が低くアンバランスとなっている「仕事でモヤモヤタイプ」の方に特におすすめ)
こちらの本はNYタイムズベストセラーにもなっているそう。仕事中心で自分らしさを見失ってしまうことへの警鐘を鳴らすとともに、シフトダウンしたときに待ち構える葛藤とその対処にも目を向けさせてくれる一冊です。
というわけで、ご紹介と感想、いってみましょう!
仕事が生きがいとなって、長時間精力的に働くことや経済的に大きな成果を上げるハードワークがよしとされる今の社会。その中にあって、「ほどよい」仕事にシフトダウンするのは楽な選択と思われがちです。
でも、本書に登場する、仕事中心主義から「ほどよい」仕事を手に入れた人々は、その過程である葛藤を乗り越えていることに気付かされます。
それは、仕事中心でやってきた人はアイデンティティの大半が「仕事をしている自分」にあり、仕事から離れてみると「仕事をしていない自分」に価値を見いだせなかったり罪悪感を感じたりするというのです。
つまり、仕事中心の生活から「ほどよい」仕事へのシフトダウンにはアイデンティティ・クライシスを伴う、ということです。
そんなアイデンティティ・クライシスを乗り越えるためには、仕事以外の自分の側面に目を向けたり自分にとっての足るを知ることで、新たなアイデンティティを築いているという点が共通しているようです。
実は私も、かつてはバリバリと多くを稼ぐことを是として仕事をしてきた一人。私の場合は、自己免疫疾患の発症により以前のモーレツな働き方を維持するのが難しくなったのが転機となり、自分が持てるリソースの中で社会に貢献できる活動を求めて現在に至っています。
ハードな仕事をやめて「ほどよい」にシフトする。
確かに体力的には楽になりますが、乗り越えるのが一番大変だったのは、本書に登場する人々と同様、以前ほど生産的ではない(特に経済的に)自分と向き合うことでした。
自分で「これでよい」と思っていても、より多くより高い生産性を上げることを是とする社会も垣間見える中では、ふとしたときに無力感や罪悪感めいたものがむくっと顔を出したりするのです。
だから、「これでよい」を貫くことは、「もっともっと」と無意識的に高みを目指すことよりも自分を律する力が必要だと感じます。
本書はそんな葛藤を受け止めてくれるとともに、もしかしたら「ほどよい」を選ぶことは仕事中心に走ること以上に、自分と丁寧に向き合うことでもあるという確信を与えてくれた気がしてきました。
自分と向き合ったからこそ手に入る納得感と幸福感、そういったものを大切にする時間を少し、とってみませんか?