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<”センスメイキング” 対談シリーズVol2>センスメイキングの活用事例

この対談は、コンサルタントと大学教授の二足のわらじでご活躍されている手塚先生をお迎えし、LifeStocksの狩野と共にセンスメイキングについてお伝えしていく全4回のシリーズでの2回目です。

センスメイキングの活用場面

インタビュアー:センスメイキングというのは、組織や個人が不確実な状況で意味を見出し、行動の指針を作るプロセスだと理解しましたが、どのような場面で活用されるのでしょうか。

手塚:そうですね、ビジネスや組織運営では、予測が難しい状況も多く、何が「正解」なのかは後になって分かることもありますよね。そういった、私たちが日々直面する複雑な状況や不確実な未来に対して、状況を理解し、そこに意味を見出そうとする場面で活用しますね。

狩野:何が正しいか分からない状況の中でも、その場その場で意味を見出して動くことが重要なんですよね。例えば有名な話として、ハンガリー軍の遭難の事例があります。アルプス山脈で遭難した部隊が偶然見つけた地図を頼りに脱出を試みて成功したという話です。後で分かったところによると、その地図は実はアルプス山脈ではなく、全然別の場所であるピレネー山脈のものだったのです。それにも関わらず、彼らはその地図を信じて行動し、結果的に脱出に成功したんです。

インタビュアー:その話はすごく面白いですね。正しい情報がなかったとしても、行動することで成功に繋がるというのは興味深いです。

手塚:究極の状況では、情報の正確さよりも、全員が一つの方向に向かって行動することの方が大切なんです。正しいかどうかが問題ではなく、行動を起こすために皆のベクトルが一致することが、結果的には成功を生むことがあるんですね。

狩野:まさにその通りですね。先ほどの雪山遭難の話では、もしその地図がなかったら、彼らは行動を起こすことができず、救出されなかったかもしれません。センスメイキングの重要な点は、完璧な情報がない中でも、何らかの判断をして行動することです。

インタビュアー:ビジネスの世界でも同じような事例があるのでしょうか?

狩野:そうですね、例えばホンダのアメリカ進出の話がよく出てきます。ホンダが最初にアメリカ市場に参入した時、バイクの販売に苦労したんですが、その後小型バイク市場に適応して成功しました。この成功は、事前に計画を立ててその通りに進めたのではなく、現場の状況を見ながら柔軟に対応していった結果という話です。

手塚:このホンダの例は「創発的戦略」と呼ばれていて、最初から決めた戦略に固執するのではなく、その場その場で状況を見ながらしていくことが成功に繋がったんです。これ、ビジネススクールでもよく紹介されている事例ですね。

狩野:事前にすべてを予測するのは無理なので、現実に直面して、その時々で現実を捉え、意味を見出して動くことが大切ということですよね。

センスメイキングを組織や個人で活用する

インタビュアー:実際に組織や個人では、どのようにセンスメイキングを活用するとよいでしょうか?

狩野:センスメイキングは未来に向かってポジティブに進むために活用できます。例えば、現状を打破したいと考えているとき、事業方針や運営の見直しを行いたいとき、次世代リーダーの育成をしたいときなど、「新しい未来を創りたい」という思いがあるときに有用だと思います。
同時に、例えばM&Aや構造改革など、多くの関係者にとっては意図せずに変化が及ぼされる場面でもセンスメイキングの考え方は取り入れられると良いかと思います。突然巻き込まれることになる社員が、どのようにその変化を捉えるかはその後の展開にとても大きな影響を与えます。なので、丁寧に起こっていることを扱いながら、今の自分たちの立ち位置を捉え直し、それを元に未来をどう作るかを考え、意味づけし、腹落ちさせていくというセンスメイキングのプロセスが必要なのです。

手塚:そうですね。例えば、東日本大震災の後、多くの企業が大きな決断を迫られました。その際に過去の経験を元に「これは私たちの使命だ」と感じて行動を起こした企業も多かったんです。
日本中が津波や原発事故で大混乱している中、ある会社の社長が「3月は無理だけど、4月からは大丈夫だ」と社員に言ったことがすごく印象的でした。社員がその言葉に安心し、前に進む力を得たんです。

インタビュアー:そのリーダーシップの役割も、センスメイキングにおいて大切なんですね。

狩野:リーダーがどう解釈し、チームに方向性を示すかは、不確実な状況になるほどに重要ですよね。正しい答えがなくても、皆が納得し、動き出せるような意味を与えることが求められるのだと感じます。

インタビュアー:日常生活や個人では、センスメイキングをどう活かすと良いかについても教えてください。

手塚:実は、私たちは日常生活の中でも無意識にセンスメイキングを行っています。たとえばキャリア選択の場面では、多くの人が完全にロジカルな判断だけでなく、直感やその時の状況を元に決断していますよね。

狩野:そうですよね。私のキャリア選択を振り返っても常にそうです笑

手塚:ですから、センスメイキングはビジネスの場だけでなく、日常生活でも役立つツールなんです。無意識にやっていることを少し意識的に取り組むだけで、意味づけがもっとクリアになるはずです。

インタビュアー:ありがとうございました!今日はセンスメイキングの活用場面についてお話を伺いました。次回は具体的にどのようなプロセスで進めるのかさらに詳しくお聞かせください。


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