ライフリンク・メディア報道・故山本孝史さんの思い出④
自殺対策基本法の成立に命をかけて取り組み、実現した元参院議員の山本孝史さん。山本さんの功績を報道から振り替えるシリーズの最終4回目です。
山本さんの妻ゆきさんは、山本孝史さんの仕事を記録に残し、未来へとつなげる活動を続けています。各地で、山本孝史さんの仕事や人柄を伝える講演をする一方、2008年12月には、山本孝史さんの誕生から大学卒業までの生い立ち、交通遺児育英会時代、学生時代から、衆議院議員時代、参議院議員時代の国会質問をはじめとする活動の記録を網羅した約800ページから成る「山本孝史の記録」(発行・アド電通大阪)、2010年12月には「兄のランドセル いのちの政治家 山本孝史物語」(朝日新聞出版)を刊行しました。2011年12月には、山本孝史さんを主人公にした朗読劇をつくりました。
2022年7月には、ホームページ「いのちの政治家 山本孝史 国会議員として『いのちの政策』の取り組み続けた14年間の活動の記録」をリニューアルオープンしました。自殺対策をはじめ山本孝史さんが取り組んだ「がん対策」「薬害エイズ」「年金改革」など10以上の政策分野での活動や国会質問、山本孝史さんが執筆したブログやメールマガジン、各界からの山本孝史さんへのメッセージが掲載されています。
山本孝史さんをしのび、ゆきさんの取り組みを伝える報道は続いています。
ゆきさんは悲しみの中、夫が親しかった政治家や官僚、NPO法人関係者らと交流を重ねた。国会議員としての発言や活動すべてを調べ、「彼の信念を伝えねば」と11年、「兄のランドセル」(朝日新聞出版)を出版。その後、ラジオで朗読したいとの提案を受け、「ならば朗読劇に」とゆきさんが脚本を担当し、同年12月の大阪で初上演した。
以降、秋田や岩手でも上演されて今回で6回目。山本さん役は初回から演じる田中健さん、ゆきさん役は市毛良枝さん。出演者はプロ・アマの俳優陣のほか、過去の上演地で協力した人々で、総勢200人ほどが登場する。
ゆきさんは会場確保や出演者募集、協賛金集めに奔走し、がん患者支援のNPO活動などにも力を注いでいる。「上演するたびに気づかなかった山本に触れ、彼に近づく気がする。見終わった人に、彼のバトンを引き継いだと感じてもらえたらうれしい」(2017年5月16日 朝日新聞)
職場の机の上に一冊の本を置いている。「兄のランドセル」(朝日新聞出版)。民主党の参院議員だった故・山本孝史さんの物語。妻のゆきさんが書いた。
5年前、国会で自らのがんを告白し、がん対策基本法と自殺対策基本法の成立を超党派で実現させた。「命を守るのが政治家の仕事だと思ってきました。がんも自殺も、ともに救える命がいっぱいあるのに次々と失われているのは、政治や行政、社会の対応が遅れているからです」。58歳で亡くなって3年半が過ぎたが、本会議場で訴えた姿が忘れられない。(2011年7月9日 毎日新聞)
かつて、「いのちの政治家」と呼ばれた国会議員がいた。衆参両院で活動した山本孝史さんのことだ
◆コロナ禍に翻弄(ほんろう)された1年も終わろうとしている。収束はなお見通せない◆「いのちをかけて、いのちを守る」。医療現場では、生前の山本さんの言葉通りの努力が続く。国や自治体の支援は足りているだろうか。遺著に今に通じる一節がある。<「『いのち』の切り捨て」はあってはならないことです…『いのち』を守るのが政治家の仕事です>
(2021 年12月21日 読売新聞・編集手帳)
07年7月の参院選に、末期がんの体で出馬すると聞き、いじわるな質問をしたことがあります。
「任期6年を全うできますか? できないなら、有権者に無責任では?」
山本さんは少し考え、答えてくれたのですが、その言葉に私は胸をつかれ、自分の浅はかさを恥じました。
今回の朗読劇では、山本さん役の俳優、田中健さんがその頃の心境を独白する場面があり、10年前、私に返ってきた言葉とも重なっていました。抜粋ですが、最後に記します。
〈一日一生、一日一善、一日一仕事。そう自分に言い聞かせて、新しい一日、一日を重ねています。長く生きたいとも思うけれど、今は、どのように生きるかを考えるようになりました。いのちを見つめ、いのちを大切にする。これが僕の生き方です。最後まで自分の人生を生き抜きたいと思っています〉
山本さんは07年参院選で再選を果たし、同年12月、現役の国会議員のまま、58年の生涯を終えました。(2017年6月18日 読売新聞)
本は読み継がれ、朗読劇は公演され、ホームページには多くの人が訪れ、メディアによる報道も絶えることなく続いています。
写真は、宮城県・松島の藤田喬平ガラス美術館にて。
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