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きょう心にしみた言葉・2024年10月23日

相談する人にとって、少なくとも通話中は話す相手がいる。応答し合う人がいる。電話を終えると、絶望と孤独が待つ元の世界に戻るのみである。それでも、相談する人は会話を終え、そのなかに戻る決断をする。相談を終えるとき、そこに戻る力をもっていることに毎回気づかされる。強い力を感じる。
この相談は「最後の砦」といわれることがある。相談する人は自力でたどり着き、自力でまた帰っていく。その強さに尊敬の念を抱き、謙虚に活動を続けていきたい。

村明子「電話相談の現場から」(「『死にたい』に現場で向き合う」(松本俊彦編 日本評論社)

著名な精神科医、松本俊彦さん著書「『死にたい』に現場で向き合う」から、電話相談について村明子さんの寄稿を紹介しました。村明子さんは、2021年2月発行のこの本では「NPO法人東京自殺防止センター」所属となっています。現在は東京自殺防止センターでボランティア活動(相談員等)をしながら、ライフリンクで電話相談のスーパバイザ―として相談の指導や助言を行っています。
「『死にたい』に現場で向き合う」は、自殺対策の最前線で活動する14人の寄稿を中心に構成されています。地域、児童養護施設、緩和ケア、生活困窮、犯罪被害者など様々な現場の声が集められています。

村明子さんはこんな文章も綴っています。

死を決意した深刻な相談の終わりに言われたことがある。「あなたは私が死ぬと決めたと話している間、死ぬことを否定もせず、死んでいいよと肯定もせず聴いてくれた。もしあなたがどちらかを言ったら、私はすぐ死のうと決めていた。実は目の前に準備をして電話した。今日は死ぬのをやめることにした」と。
何の解決もなく、気の利いた言葉もない相談であったが、自分の話を聴いている相手が動揺したり、二人の間に流れる気持ちの揺れなど互いの今起きている感情を共有したりすることだけが、死ぬしかないという気持ちを少し動かすのかも知れない。

松本俊彦さんは、自殺対策の最前線で活動する人たちに次のように語りかけています。

「死にたい」と告げられた援助者に伝えたいことがある。「死にたい」という告白には、「死にたいほどつらいが、もしもそのつらさが少しでもやわらぐならば、本当は生きたい」という意味がある。つまり、あなたには十分勝算があるのだ。

「あなたには十分勝算があるのだ」は、すべての人に届けたい言葉です。


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